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Moon phase  作者: 檸檬
次の名はスオウ
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phase-6 【最強の親友】

 ごふっ……!



 まるでトラックに撥ねられたかのように体が吹き飛ぶ

 強化魔術で底上げしているこの体なぞあいつにとっては無いも同然なのだろう。


 空中で半回転しながら魔術行使、体勢を整える。

 

 咄嗟に出した腕でダメージは軽減されてはいるが、所詮は焼け石に水、痛みで思考が纏まらず反撃が出来ない。


 地面を見ると既にそこには誰もいない。


 チリチリと首の後ろが焼け付くような感覚。

 咄嗟に頭を下げるとそこに風を巻き上げるどころか切り裂くような蹴りが通り抜けた。


「殺す気かこの野郎!」


 思わず怒鳴るが、正直喋ってる余裕なんて無い、目があった瞬間、視界からアルフが消えうせた。



「くっ!」





【Vent Rassemblez-vous JE Défense Formez-le】《風よ我が守りと成せ》






-------ドゴンッ






 ぎりぎりで間に合った風の鎧を纏うが、攻撃の威力で吹き飛ばされる。

 ダメージは無いがまるで飛ぶように景色が流れていく。


「まじかよっ」


 風の鎧が飛んでる途中で霧散する。一撃で許容量をオーバーしたようだ。さすがチート半端無い。

 一撃耐えられただけで良しとするか、って納得できるかこの野郎。






【Vent r……】《風よわが……》






-------ズンッ






 魔術行使の途中でわき腹に強烈な痛みを感じる。

 ぶっとばした相手に追いつくとかどんだけだよまじで……。遠のく意識でこの世の理不尽を呪った。













・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・













「ふっふっふ、これで俺の486戦480勝1負5分だな!」

 勝ち誇ったように笑うアルフをとりあえず不意打ちでもぶちのめしたいと思った俺は間違っては無いだろう。


「イテェ、少しは手加減してくれよほんと、強化魔術を使ってるとはいえ中身までは強化されて無いんだぞ。」

 齧り程度の回復魔術をかけながら文句を言う。ほんとこの為だけに回復魔術を本格的に覚えようか。


「そうは言っても手加減したら怒るだろお前」


「当たり前だ、バカルフの癖に手を抜くとかありえん」


「誰がバカだ誰が! しかし、お前も俺の親父に師事すればいいのに何でこんな回りくどい事やるんだ?たしかに俺はこの町で一番強い、手合わせするだけでかなりの鍛錬にはなるとは思うが、基礎や技術を教えてやれるもんじゃないし、前も言ったけど親父に話してやるぜ?お前なら十分どころかそこら辺の大人でも勝てないぐらいだろうし」


「いろいろ考えがあるんだよ、多少腕が立つ程度の認知で十分なんだよ俺は」

 つーか自分で一番強いとか、かなりの鍛錬になるとかどんだけ自意識過剰、まぁ7歳だし多少は調子に乗りたい年頃かね。


「ふーん、まぁお前が言うならそれなりに理由があるんだろうけど、それだけだと剣を極めるのは難しいぞ?」


「かまわんさ、剣はお前に任せた、俺は俺がなれる最強を目指すさ」


「おいおい、一生お前といろってか? 生憎男色じゃねぇぜ俺は」


「当たり前だ、気持ち悪い、俺は黒髪の女の子が好きなの、茶髪のひねくれヤンキーなんざ知ったことか」


「やんきー? なんか分からんがバカにしてるだろお前」


「ふっ、良く分かったじゃないか少し賢くなったな、褒めてやろう」


「てめぇ、ぶっとべ!」



ごふぁっ……!



あぁ、朝日が目と傷に染みるぜ……。




「せっかく治癒しかかった傷が開いたじゃねぇかよ……」

 治癒魔術を使いながら町に向かって歩く、朝日も昇り町の人が動き出す時間だ。


「自業自得だ、俺は悪くないぞ!」

 申し訳なさそうな顔をして言ってくるアルフ。


「まぁ、いいやそろそろ朝飯の時間だ、ちゃっちゃと帰らないとルナにぶっ飛ばされる。思ったより遅くなっちまったからあんまり無茶な速度で走れないし、悪いが先に行くぞ」

 足早に町に向かいながらアルフに向かって話す。時間的な余裕がまったく無いわけではないが食事前に汗も流したい。


「おうよ、俺はもうちっと素振りをしてから帰るわ、また明日な!」

 アルフの返事に手を振り返事とする。

 異常と思われない程度の加速魔術をかけ、家へと走り出した。













・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・













 今日は珍しく家族全員そろっての朝食だ、どうやら父上から重要な話があるらしい。

 仕事関係だろうか、塩田は滞りないだろうし、造船業に関しては父の十八番だ心配する必要すらない。

 となると新しい仕事の相談か?いや、父からそんな話が来るとは考えにくい……。


「さて、スオウ今日は大事な話がある」

 そうこう考えているうちに父上から話しかけられる。母上も真面目な顔をしてこちらを見てくる。


「はい、父上どういった件でしょうか」


「実はだな、なんとお前に弟か妹が出来ることになった! そしてお前は来年からスイル国のカルディナ魔法学院に通うことが決まった!」

…………は?


「ごめんなさいね、私は反対したんだけどこの人あの才能を眠らせるのは神が許しても俺が許さんって熱く語ってね、あの熱い思い若い頃を思い出しちゃって、ちょっと、ね」

 顔を赤くしてそっぽを向く母上、いや、あんた、おい、ちょっと……。


「ふふ、サラ何も心配はいらないさ私たちの息子なんだ、魔術学院ですら生ぬるい。いや、むしろ魔術学院が頭を垂れる姿が目に浮かぶぞ!」

 建物は頭を垂れんわ! というか母上どこの少女漫画ですか! 目をキラキラさせないでください!


「しかしだスオウ、お前は俺の後を継ぐのだ! 魔術の才能を埋もらせるわけにはいかん。しかしお前の商才もまた天才だ! 天才的な魔術師で天才的な商才、はっはっは! これでフォールズ家も安泰だ!」

 はっはっはっはと馬鹿笑いをする父上、いやもう父上じゃない馬鹿上だ、つーか子供、弟か妹が出来るという衝撃的な内容がどっかにぶっとんでしまった。

 ルナとか涙ぐんでるし、母上は感動してるし、なんだよこの家、馬鹿ばっかだよこの野郎。


「なぁに大丈夫だ、アルフ君も一緒に入れておいたからな、心配要らんぞ本人の許可なんぞとっとらん! グランの許可はちゃーんと取ったからな心配要らんぞ。あの男も戦士たるもの強化魔術を使いこなすのも大事だ! って言っていたからな。魔術学院に入れる必要もあるという事だ」

 あぁ、アルフ頑張れ、頑張れアルフ、お前は俺より酷かったよ。これ絶対先週のカナディル商業組合合同会議の後の飲み会で決まった気がする、いや間違い無い絶対。


 だがしかし冷静に考えてみれば好機でもある、魔術学院に入れるなら高等魔術を使う人間も多いはずだ、想像力の現実化に役立つだろうし、なにより今の俺の強さがどの程度か分かるだろう。

 が、しかしこんなノリで決められるのもどうなんだ、納得いかないと言うか。いや、いいんだ、俺まだ保護されてる立場ですし……。


 こうなったらアルフと二人で魔術学院に伝説を打ち立ててきてやろうか、いやいやまてまて落ち着け俺

 親のテンションに乗せられて今迄積み重ねた適度に強いキャラを崩すわけにはいかん。


 なによりアルフはともかく俺の力など下手したら底辺かもしれん。

 なんにせよ情報を集め、メリット、デメリットを良く検討したうえでの行動だな……。


「それで……、いつから学院に出向けば宜しいのでしょうか、それと弟と妹が出来るというのはなんでしょうか……」

 疲れきった顔で父上を見る、あぁ、まだ朝ご飯食べたばかりだぜ、一日まだ始まったばかりだぜ。


「うむ、入学は来年だ。各所の手続きと入学金は既に済んでいるのでな、あとは実技試験だけだがまぁお前なら問題ないだろう。実技試験は再来月末にあるからな、自分の得意な魔術を一つ見せるだけで良いそうだ。なんだったら度肝抜いて来い息子よ。そして弟か妹が出来るのは出来たからだ!」

 はっはっはと笑いながら言ってくる。来月か、まぁ多少期間はあるとしてあまり派手な魔法を使うわけにもいかんな。適度に強く、珍しい魔術でも覚えておくか。

 弟と妹の事はもういいや、なんかもういいや……。


「スオウ、此処まで言っておいてなんだけども、本当に嫌なら行かなくても良いのよ? 私達はあなたが幸せに生きていくのが一番なのだから」

 心配そうな目で此方を見てくる。本心ではあまり外へ出したくは無いのかもしれない。けど俺の将来に役立つと考えての事なのだろう。やり方はともかくとして……。


「ご心配には及びません、これもまた良い機会かと思います。ご期待に応えられるよう魔術学院にて知識を習得してきます」

 さて、アルフの野郎をどうやってからかってやるかな。さし当たって考えるのはそれだった。














・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・














 コンコンコン


 自室の扉がノックされる。

 失礼いたします、と入ってくるのはルナ。

 ある意味一番長い付き合いをしてきた女性だ。


「ルナがこんな時間に来るなんて珍しいね、どうかしたの?」

 すでに日が落ち、月も半刻が回り二つの月がほぼ合わさっている。

 時間で言えば12時少し前と言った所か。


「本日でなければいけないほど重要な用事でもないのですがお渡ししておきたい物がありまして。ご主人様よりお預かりしているものがあります。本来であれば学院に向かわれるときにお渡しするべきかと思いましたが、ある程度手に馴染んでいた方が良いかと思われまして今お持ち致しました」

 そう言って手に持っていた長方形の箱を渡してきた。

 大きさは幅20cm、縦80cmほどの長さでずしりと重い。深い紺の布で覆われており、中央に金の刺繍がされている。


「あれ、まさかこの刺繍……!」

 そう金の鷹の刺繍、カナディル連合国家最高峰の剣職人が作った証、その剣は折れず、曲がらず、魔力を帯びるといわれる。その分金額は眩暈が起きるような価格であり、安い家なら買えてしまうくらいである。


「ご主人様からの贈り物で御座います。カルディナ魔術学院に行くのにそのくらいの物は持って行けとの事です。」

 恭しく頭を下げ述べてくる。いやいや、こんなん持ってったら一気に注目の的じゃねぇか。


「いや、さすがにこれは受け取れないよ」

 箱に入れたまま返す、いくらなんでも俺にはまだ早い代物だ。


「申し訳御座いませんが、私の主人はスオウ様の父上で御座います。そのため、主人より指示頂いた内容をスオウ様のご依頼とはいえお受けできません、というか受け取れ、結構重たいの態々持ってきたんだから文句言うな」

 途中からめんどくさいなもう、といった目で見られる、いやいや、メイドがその態度っていいのかよ。


「あ、あれ? ちょっと、あれ? 俺一応雇い主の息子だよね? あれぇ……?」


「と、言うわけでおとなしく持って行ってください。あらかじめ使いこなせるようにしておいた方が良いかと思われますよ。それでは夜分失礼いたしました」

 反論も反対も苦情も泣き言も聞かずに颯爽と去って行き、パタン、とこんな状況でも静かに閉じられた扉を疲れきった目で見つめるのであった。



もう数話挟んだら学園編です。


戦闘描写って本当に難しいですね。またいろんな本読んで勉強してきます

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