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Moon phase  作者: 檸檬
カルディナ魔術学院中等部
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phase-39 【依頼の内容】

 書類を受付の女性に渡す。


「有難う御座います、では少々お待ち下さい」

 横にいた女性にその書類を渡す、5分ほど待っていると先ほどの女性が金属製のチェーンに金属製の板が付いているアクセサリー?らしき物を持ってきた。目の前で受付の女性がそれを受け取る。と、同時に説明が始まる。


「お待たせ致しました、此方が冒険者ギルドに所属している所属確認のタグとなります。2枚で一組となっておりますので首に掛けるなどして紛失しないようにしてください。


 2枚あるのは死亡時に遺族へ渡す分とギルドで保管する分となっております、記載内容は同じですので提示を求められた場合見せて頂くのはどちらでも構いません。


 先ほど頂きました書類と同様の技術が使われており、本人が握ると淡く光りますので本人認証にも使えます。


 中央に所持者の名前が、右上に記載されているのが貴方の現在のギルドランクとなっております。魔術学院の生徒さんでしたらあまり関係無いかと思われますが一応ご説明致します。


 ギルドランクはその冒険者の力量を示す一つの数値でもあります、尚これは商人ギルドや傭兵ギルドでも同じ様な形を取っております。


 右上の記号、Dと記載されているかと思われますが、それが現在のランクとなります。


 最高値としてSが御座いますが五国内でその資格を有している人は3人だけで御座います。


 3人とも有名な方なのでお調べ頂ければ直ぐに分かるかと思います。



 尚、順位としてはD,C,B,A,Sと並んでおります。稀にD+などと表記する場合がございますが、あくまで同ランクの方が多く指示系統が混乱をきたす可能性がある場合、統率能力の高い方に上位順位として特例で+を与えることが御座います。

 もちろん依頼内容が完了次第、元のランクに戻って頂きます。


 昇格に関しましては依頼内容の処理状況や対応速度等、上位案件にまわした方が良いとギルドで判断した場合昇格となります。


 尚、依頼主との揉め事に関しましては達成内容の差異以外は当方では受け付けません。当方で依頼内容が達成されていると確認した場合でも、依頼主が納得していない場合、報酬をお支払い出来ません。


 こちらは風評被害の問題もありますのでお気をつけ下さい、もちろん理不尽な内容等々であれば我々ギルドが全力を持ってお守り致しますのでご活用下さい」


「タグを紛失した場合はどうなるのですか?」


「その場合はどちらか一枚が残っている場合はそちらをお持ち下さい、銀貨3枚で作成いたします、2枚とも紛失した場合10枚頂きます、尚、後ほど見つけたとしても料金はお返しいたしません。タグを悪用される可能性もありますので十分にご注意下さい。人が作ったものである以上、抜け道がある可能性は十分にありますので」

 たしかに、ごもっともな話だ。


「では、タグを5人分お渡し致しますので、お名前をご確認の上、所持下さい」

 じゃらじゃらと金属製のタグを渡してくる、一つ一つに名前が記載されているのが見える。


「それと此方が今回の依頼内容です、ご確認下さい」

 スッと、そう言って紙切れを渡してくる。


「カルディナ魔術学院では例年中等部の方は簡易案件を5件か、中位案件を2件~3件処理すれば良いとされております。が、今回学院長様よりスオウ様のチームはその依頼一つで宜しいそうです。では依頼内容完了後のご訪問をお待ちしております」

 質問は御座いませんか?と言われた後、特に無いと答える。


 受付の彼女は礼をし、次の方、と後ろに並んでいた人に声を掛けた。



さて、1件だけで良いとはな、どんな依頼内容なんだか、そう思いながら渡された資料に目を通した。

 












・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・













「軽く3ヶ月はかかる仕事内容だ……」

 うんざりした声で皆に話す。


 すでにタグは配り終えており全員取り付け済みだ。


「どういう事ですかスオウ、そちらの書類を頂けますか?」

 内容を把握したいのだろうスゥイが声を掛けてくる。


「あぁ……」

 手に持っていた書類をスゥイに渡す、おそらく彼女も同意見になるだろう。


「ありがとうございます、ふむ……、なるほど、そう来ましたか、3ヶ月で終われば良い方ですね」


「まったくだ……」


「どういうこった? 二人で納得してないで教えてくれよ」


「そうだよー私にも見せてよスゥちゃん」


「面倒ごとかの? まさか本当に竜と戦うことにでもなったかの?」

 疑問顔全開のアルフ、スゥイの横から書類を覗き込むライラ、むしろそっちでお願いしますとばかりに聞いて来るリリス。


「いや、まぁ、面倒事である事には変わりは無い。仕事内容は調査だ、スイル国とカナディル連合国家の国境ともなっているベルフェルス山脈の魔獣の生態情報調査と必要以上に増えすぎている場合の駆除、だ。全域ではないが東の一部だそうだ。これなら竜1匹倒して終わり、の方が楽だったな……」

 もっとも竜の場合はアルフとリリスに丸投げするつもりではあるが。


「おいおい、そんなの俺達にやらせる仕事じゃないだろ、場合によっちゃ軍の人間が出てきてやる事だろ?」


「あぁ、まぁそうだ、何を考えているのやら、一応カナディル連合国家の国境警備隊の人間数名と、スイル国の首都スイルから数名手伝いとして人を寄越すそうだ。開始日は一応今から2週間後となってる。その間に準備を済ませて山脈に向かわなければならない」

 ベルフェルスまで学院から馬車で2日もかからない程度だから、10日は自由な時間があると考えても良いだろう。


「実際の所、寄越す人間が調査をし、俺達は彼らの護衛の意味合いが強いかもしれないな、しかしなぜこんな仕事を俺達に……」

 疑問は尽きない、確かに長期間拘束はされるがそれだけで良いのなら他にもいろいろな仕事があったはずだ。俺達は見た目だけで見れば14,5歳の子供にしか過ぎない、調査に来る人もこの様な子供たちに守られるのでは不安だろう。いくら学院の名前があるにしても、だ。


「帝国側での仕事ではない、という点は配慮かもしれませんが、たしかに疑問ですね。他にも仕事はあったはずですが」


「まぁ、考えても仕方が無い、とりあえず俺は学院に一度戻って活動期間の提出をしてくる、一応半年で書類を出すが、一月に1回は確認も含めて戻って来いといわれる可能性が高いだろう、お前らはどうする? 一緒に戻るか?」

 念のため他の4人を見渡し聞いて見る、ここでの用件はもう済んだことだし仕事が始まるまでの期間もある、各個人で準備もあるだろう。


「いや、どうせだから武器を見てくるわ、どうせ馬車で直ぐだし、なんなら走ってもいいしな」

 アルフがそう応える、たしかにお前なら強化魔術の重ねがけで速攻だろうな……。


「ふむ、なら私は魔具店を見に行こう、学院ほど充実はしていないだろうが掘り出し物があるかもしれんからな」

 顎に手を当て一瞬考えた後応えてくるリリス、この半年でずいぶん落ち着いた様な気もする、もともとの地かもしれないが第一印象が酷かったからな……。


「ではライラ、私はスオウと共に戻りますので、彼らのお()りをお願いします」


「えぇっ、ひどいよスゥちゃん! 自分だけ!」

 まさかの押し付けに驚愕して振り返るライラ、どうやらライラも一緒に帰るつもりだったようだ。


「応援してますライラ、諦めたらそこで終わりですよ」

 ぐっと握りこぶしを作り力説、するポーズだけは取るスゥイ、しかし顔はにやけている。


「体よく押し付けただけだよね! 絶対そうだよね!」

 うるるーと今にも泣き出しそうなライラを置いて、馬車に乗る。


「すまんなライラ、しかしお前ならなんかあったとき学院に直ぐ戻れるだろうし、飛べば馬車より早いだろ?」

 強化魔術をかけまくった本気のアルフとリリスの方が早いかもしれないが、この3人で言うなら彼女が一番適任でもある。


 まぁ、そうだけど、としょんぼりして返すライラを置いて学院に戻った。













・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・














「どういうつもりですかね、学院の勢力圏内を明らかに外れています。まぁ、完全に圏外と言うわけではないのでしょうが、それにしても少し離れすぎではないでしょうか」

 馬車の中、スゥイと二人で今回の依頼の件で話し合う。


「そうだな、馬車で言えば二日ほどの距離か、ワイバーンを使えば半日だろうが……」


「何を考えているのでしょうか、スイル国とカナディル連合国家に恩を売る? 等ですか」


「恩を売れるほどの凶悪な魔獣が発生したという話は聞いていない、まぁ情報規制がかかっている可能性は否めないが、もしかしたら帝国の関係かもしれないな」


「どういう事ですか?」


「おそらく加護持ちの実力を正確に把握したい帝国からの圧力があり、ベルフェルス山脈の魔獣と戦わせるからそれを見ろ、とかな」

 凶悪な魔獣がいないとしても、そこらの大人では対処できない様な魔獣が出てくる可能性も無いとは言えない。なによりベルフェルス山脈は深遠の森と繋がっている。あの混沌のマナが存在している森と繋がっている以上、予想も出来ない魔獣が出てきてもおかしくは無い。


 今回は東側での依頼なのでさすがにそこまで来るとは思えないが。


「カナディルの国境警備隊とスイル国の人間を同席させるのは何かあったときの保険ですかね」


「どうだろうな、そもそもスイル国の人間自体が帝国側の監視者かもしれん、カナディル側は学院の外に出すことに反応して人を寄越してくる、といった可能性は高いがな」

 考えられる可能性を述べる、しかしおそらくそれでも全てを網羅出来ている可能性は無いだろう。


「其方の方が可能性としては高そうですね」

 頷くスゥイ、丁度馬車が学院に到着した。

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