phase-2 【旅立の異界】
小さい島国である日本
普通の工業大学の大学生だった。名は坂上 奏
普通、そういうと多少語弊があるかもしれない。いや、多少ではない絶対に
天才、そういわれる人種とは違うが努力にてたどり着ける境地にいる程度の秀才といわれる男が居た
友人も適度におり、容姿端麗と言う訳ではないが見た目もそこそこの男だ
そのまま生きていれば彼女を作り、恋愛をし、結婚をし、子供を作り死んで言ったであろう男
だがその男は少しだけ性格が歪んでいた、いや歪んでいたのではない、三回転半に捻りを加えて焼入れしたくらいだ
というかついて行ける彼女がいたのか? まともな恋愛をしたのか? そもそも結婚なんかしたら相手の胃に穴が開いたのではないか……。
出来たとしても子供が同様に捻くれないかとても心配だ。
まぁ、しかしとにもかくにも男が居た。
朝御飯を食べ、一人暮らしのアパートを出、講義を受け、帰宅の途中その男は意識を失った。
目が覚めたら知らない天井だった。
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(いや、ちょっとまて、よし、まてよ、まてまてまて)
(落ち着け俺、クールに、そうだクールに生きろ、いやでも死んだのか俺、いや現状は生きているが、死んでからの転生、いやまさか、そんなはずは……)
(これぞまさにテンプレとかそんな状況じゃねぇ、そう、ちゃちな状況じゃねぇ、なんで、なんで俺赤ん坊になってんだよ!)
(憑依か、いや、ならなぜ赤ん坊に? 意思があまりないから乗り移りやすかった? だめだ、情報が少ない、まずは情報の整理を……)
(ちぃっ、首がうごかねぇ、首が据わってないのか、ってことは生後3,4ヶ月以内か)
(生まれて直ぐなのか、俺の前の体はどうなった、記憶が転写されたのか、魂の存在? いやそんな非科学的なことが有りえる訳が)
(創造原理の『第二の法則』ってか、笑わせる、いつ俺が転生を祈ったって言うんだ。神? 八百万ならまだしも絶対神なんぞいるものか)
(とりあえず情報の収集と整理だ、現状赤ん坊であることに変わりは無い、この状態の俺が混乱しても死んでも前の体に戻れる保証も無い)
トラックに撥ねられたわけでもなく。
神様とご面会を果たしたわけでもなく。
ゲームの能力引き継いだわけでもなく。
普通に帰宅途中に転生を果たした男。
坂上 奏もといスオウ=フォールスがそこに居た。
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現状の確認
言語 不明、英語に近い言語と思われるが発音が違う、フランス語との中間といったところだろう。両方必修、選択科目で取った上個人的にも好きな教科だったから間違い無いだろう。
時代 中世ヨーロッパ風の建物しか目に映らない以上正確な年代は不明。時計があるので時間の概念、時計を作れるだけの技術はあるといったところか。だがしかしテレビやビデオ、電気的な機械の存在が見当たらない。
子供部屋だからか? いやしかし、電気、ライトも見当たらない。過去に戻った? となると300年近く前?
家庭 そこそこ裕福なようだ、先ほどから女性が世話をしてくれているがメイドらしい、他にもう1名いるようだ。最初はベビーシッターあたりかと思ったが違うようだ。
そして一番驚いたのが世話を焼いてくれるメイドの髪の毛、目の色……。
緑なのだ、それも鮮やかな緑、カラコンに染色とも思ったが違うだろう。
違和感が無いのだその色に。
そんな人種はアメリカにもヨーロッパにも南アフリカにも、もちろん日本にも居ない。
染めているだけだと、カラコン入れているだけだと考えてはいるが、もう一人の俺が信じられないような仮説を立てた。
まさか、いやまさかとは思うが。
異世界召喚、異世界憑依。
そんな単語が頭をよぎった。