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Moon phase  作者: 檸檬
コンフェデルス連盟
27/123

phase-24 【商談の部屋】

 ローズ家の門を潜り玄関に入るとすぐに金髪の美女が出迎えてくれた。

 隣はメイドと執事だろうか、数名控えるように立っている。


 金髪の女性は自分達と比べて少し上くらいの年齢だろうか、おそらく彼女が現ローズ家当主の妻ナンナ=アルナス=ローズだろう。

 腰までの金髪に、まさにボンキュッボンといったスタイル。別に巨乳に特別な性癖を持っていない上に、おそらく調べた内容から考えるに彼女はまだ15歳のはずだ。


 30歳のおっさんが中学生に欲情とかどんな変態だよ、ねーよ、まずねーよ。と思う。


 隣でスゥイが羨ましそうに見ていたかと思ったら、此方を見た後、これも駄目なのっ、じゃあ何で攻めれば……。と呟いてる、あまり深く考えないほうが良さそうだ。



「ようこそローズ家へ、長旅でお疲れでしょう、荷物はこちらでお預かりしますわ」

 にこやかな笑顔で語りかけてくるナンナ様、同時に控えていた執事とメイドが此方に荷物を受け取りに近づいてくる。


「ご親切に有難う御座います、ナンナ皇女様、お会いできて光栄です。私がフォールス家長男、スオウ=フォールス、隣にいますのが付き添いのスゥイ=エルメロイで御座います」

 恭しく礼をする。いくら他国に嫁いだとはいえ自国の元皇女だ礼を失するわけにもいかない、またローズ家はこの国のトップの一つだ、何かあったとき面倒に立たされるのは実家である、注意するに越したことはない。


「あらあら、私はもう皇女じゃないのですから、そこまで畏まる必要は無くてよ、六家の妻ではありますけれども、家業はほぼ夫に任せ切りですので正直私には大した力もないのですよ」

 ふふ、と笑いながら言ってくるがそんな事は無いのは事前の調査で分かっている。正確に調べたわけではないがローズ家の財産管理をしているのは彼女だ、支出と収入を調べ粗利益を出し、各部署事の利率を出している。この世界では広まっていない経済観念である。ローズ家を陰から支えているのは彼女の力が大きいだろう。


 執事の方に荷物を持たれ部屋に案内してもらう、滞在は半年~1年を検討、1ヶ月に1度は帰る事を考えるとさほど此方に居られる期間はさほど無いな。


 魔昌石もほぼ出来上がっている以上あとは刻印と銃本体の作成だ、銃本体は設計図が出来上がっているから職人に渡せば直ぐに出きると思われる。完成品が出来上がったら受け取りに向かえば良いだろう。

 問題は刻印だが見た限り優秀な職人が多そうだ、明日調べてきた人何名か当たってみよう。


 また、このままでは威力に問題がある可能性がある、やはりグリップの部分などで魔木を流用する必要があるな。スゥイも求めていたからそちらも進めるか。


 滞在時の行動を検討し部屋を出る。扉を開けるとそこにはスゥイが居た。




「どうしたスゥイ、唖然として」

 用があれば入ってくれば良いのに、と思ったが何か考えているようだ。


「驚いていたのです、さすがはローズ家、まさかこんな子供二人に部屋を一つずつ貸してくれるとは……。正直同じ部屋かと思っていたくらいですから」


「それは問題があるんじゃないか……?」

 12歳とはいえ男と女だ、さすがに分けるだろう、しかも曲がりなりにもお客様なんだし。

 いや、そうでもないか、普通は12歳なら親が付き添いで来ていてもなんら不思議ではない年齢だ、俺の感覚が何かずれてきている。


「そうですか? 私は気にしませんが」

 挑発気味に言ってくる、12歳になり出る所も出てきたスゥイ、覗き込むように言ってくるが生憎と子供が無理しているようにしか見えない、現に子供だし。


「主に俺が気にする……」

 とはいえ兄弟でも無い以上はさすがに気にする、でも精神年齢的なことを言えば20歳も違うんだよな、早く結婚してる人なら自分の子供並みに離れてるのか。


「そうですか、ナンナ様にも反応されなかったので女性に興味がないのかと思っていましたがそう言う訳でもないのですね」

 失礼なそんな事は無いぞ、がっつくつもりはないが女性は大好きだ。特に癒してくれる女性を絶賛募集中だ。


「む、いや、興味が無いというか、そういう対象に見れないというか……」


「結婚されているから、とかですか?」


「もちろんそれもあるんだが……、うーん」

 中学生に興奮する30代のおやじ、想像するだけで気持ち悪い……、自分がそうはなりたくない。

 どうやって説明するべきか悩んでいる所で先ほど案内してくれた執事さんから声を掛けられた。



「スオウ様、スゥイ様、ダールトン様よりお話は既にお聞きしております。魔術刻印の技術者と鉄加工の技術者を紹介して欲しいとかで、本日夕方に当家へ来て貰えるように既に手配済みです。時間になりましたらお呼びします。もし街の散策に出られるようでしたら私に予め申し付け下さい。」

 50過ぎの男性、薄い金髪の髪で、モノクルをかけており、できる男、といった感じだ。

 これは助かった、どうやら気を利かせてくれたようだ、なら部屋で待っていたほうが良いだろう。

 町の散策は後日で問題ないだろう、時間まで自室で待っている旨を伝え部屋に戻った。













・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・













 目の前には二人の女性と一人の男が座っている。正面には美しいエルフの女性が座っている。

 名はリーズ=ウィールズ、美しい濃い青の髪をショートカットにしており、煌く金の目は見る人を魅了する。主に魔術刻印を組み込んだアクセサリーを作るのを専門としている方だそうだ。


 右隣に座るのはブルム=ロンドバル、茶色の髪の毛に長い髭を蓄えたドワーフ族である。

 アウロラ家に属していないフリーの鍛冶職人で腕は確かとの事、その代わり自分が気に入った仕事しかしない、気に入った場合はとことんやる職人気質の性格だそうだ。


 最後に左隣に座るのはワーキャット、獣族である女性、名はネロ=パナウェルス、腰の下、お尻の上から黒い尻尾がひょこひょこと動いており、頭には黒い猫耳が生えている。たまにピクピク動いている事から本物だろう。手と足も同様に黒い毛で覆われておりふかふかして気持ちが良さそうだ。

 物流業を行っており、必要な材料を集めてくれるとの事。


 三人とも六家のローズ家から呼ばれたから来ただけであって、目の前の子供に依頼されるとは思ってもいなかったようで訝しげな目で此方を見てくる。フォールス家の長男だと伝えはしたが多少警戒が和らいだ程度で、良い所の坊ちゃんが何の様だ?とばかりに見てくる。


 まったく、多少事情を説明してくれても良いだろうに、と思ったが、おそらく此方の手の内、能力を測るのも兼ねているのだろう。後ろでは先ほどの執事さんが、横にはナンナ様が座っている。


 では、さっそく交渉と行きますかね。

「皆さんお忙しい所お時間頂きまして、大変申し訳御座いません。この度は私の都合でお集まり頂きましたが、ナンナ様よりこのコンフェデルスで一番の技術者とお聞きしている貴方様方とお話が出来る機会を設けて頂けた事、この場を借りて再度お礼申し上げます」

 一番の技術者と聞きまんざらでもない様子だ、職人は自分の技術に誇りを持っている、誇りを持って居ない技術者とは話す必要は無い、出来上がるものにも誇りがない2流品に過ぎないからだ。


「作って頂きましたお時間を無駄にするわけにもいきませんので、早速依頼内容をお話させて頂きます。私は今一つの物を作っておりまして、その物造りをするにあたってお手伝いして頂きたい事があるのです。当然見合っただけの報酬をお支払い致します。仕事を請ける請けないに関しましても見ていただいてから自分には出来ないと思いましたら断って頂いて結構で御座います」

 この言葉の後、顔を顰める彼女ら、言っている意味を理解したのだろう、断ったら自分に能力が無いと言っている様な事だと。

 作るものの概略を簡単に説明、そして各個人にお願いしたいことを伝える。


「まずネロ様にお願いしたい事は此方と同じ様な魔昌石を集めて頂きたいのです」

 そう言って懐から魔昌石を取り出す。見た目は漆黒であり加工する前の唯の丸い石、しかしその魔昌石は特殊であり回路が極端に少なく、しかし物凄い太さを持つ、そして他の魔昌石に比べると含有できるマナの量が桁違いなのだ。


 父上の集めまくった魔昌石に1個だけ紛れ込んでいた物である。


「こいつぁ、黒魔昌石じゃないかい、このサイズの物を揃えるとなるとそうそう集まらんと思うよ」

 驚いた顔で此方を見てくる、しかしその回答も予想済み、なんせ数百個の内たまたま1個あった程度なのだ。


「ええ、十分に理解しております、サイズに関してはこの3分の1で結構で御座います。問題は回路の本数と黒魔昌石である事が重要なのです」


「なるほどね、わかったそれなら何とかなるだろう、しかしそう大量には集めれないと思うよ、1個あたり幾らで買ってくれるんだい?」


「コンフェデレスの硬貨で金貨1枚、3分の1のサイズで1個につき、それだけお支払いいたします。個数は10個、10個ほど集めて頂ければ十分です。それ以外にも集めて頂きたいものがあります」


「なんだい? 黒魔昌石が出てきたんだ、そう滅多なことじゃ驚かないけど、なんか嫌な予感がするね」

 ヒュゥ~と口笛を吹き、聞いてくる。金貨1枚となるとかなり太っ腹な客だろう。


「そう畏まられても困るのですが、おそらくネロ様でなくては集めることが出来ない商品です。物は魔木、大きさは一つは最低でも幅20cm、長さは1m50cmはある物、もう一つはブロック状でも構いません30cm×30cmもあれば十分です」


「なっ……、そんな代物手に入るわけないだろう、馬鹿にしてんのかいっ! 魔木は国で管理してる物だ、コンフェデルスではレイズ家の許可がなけりゃ手に入る分けが無いっ!」

 伝えた途端驚愕して怒鳴ってくるワーキャットの女性。横に座っている二人は成り行きを見守っている。


「ええ、もちろん重々承知しております、その辺も抜かりはありませんので、しかし問題は私の年齢と立場でして、コンフェデルスで一番と言われる貴方の立場が必要になるのですよ」

 神妙な顔をして言う。こういう交渉は一人落としてしまえば後の二人は楽になる、もちろん3人同時に相手をすると厄介だが、種目ごとに分けて攻め込めば良い。

 金銭のやり取りをするのならば一人ずつが基本だ、人を見て金額を決める、それが取引の基本。しかし今回は依頼だ、こちらが客なのだ、あくまでも断るなら他に当たるという手もある。


「どういうこったい、金で買収するつもりかい?だとしたらとんでもない金が必要になるよ、フォールス家っていやぁ、最近よく聞く、金もある程度はあるかもしれんが、正直魔木にそこまで金をかける価値があるとは思えんね」


「はい、私が提供するのは技術、この本をレイズ家の当主に渡して頂きたいのです。私では会うことは難しいですし、ナンナさんにお願いすれば可能でしょうが、私としては貴方にお願いしたい」

 本を取り出した途端、一瞬全員が固まる、ナンナ様も本から目を放さない、まさかそう来るとは思っていなかったのだろう。五国内でも最大の商業国家、技術が確立されているといわれるコンフェデルス、その国に技術を売り込もうなどと……。


「へぇ、技術ねぇ、そんなもんで魔木を譲ってくれるとは思えんけどね、なによりそれを私にお願いしたいって事は、フォールス家として交流を望んでいるってことかい?」

 それにその本が碌なもんじゃなかった場合私の評価が下がる場合もあるんだけどねぇ? と、にやりと笑いかけて聞いてくる、その眼力は鋭い、さすがは女だてらに頭を張っていない。


「そう取って頂いても構いません。評価が下がった場合はそちらの望む対価をお支払いいたしましょう。しかしそういう風に言われるのでしたら評価が上がった場合どうして頂けますか?」

 そんな視線をどこ吹く風と受け流すスオウ、むしろ個人的にはスゥイの視線の方が辛いことが多い。


「ふふふ、なるほど、なるほど、最近になって急に頭角を現したフォールス家、理由は此処にあったかい、いやはや、12歳の子供とは思えないね、交渉における度胸、駆け引き、十分に及第点だ、ナンナさん、あんた面白い子供を紹介してくれたね」

 あっはっは、と笑うネロさん。どうやら上手く行った。


「いいだろう坊ちゃん、いやスオウ、石はなんとかしてやる、そして魔木、こいつが本当にこの本で取引できるんだったらこのネロ=パナウェルス、今後あんたに付いて行ってやるよ!」

 そう言って宣言するワーキャットの女性、予想以上の評価をしてくれている様だ。


「あらあら、ネロさんずいぶん肩入れしたものね、でも私もそれに乗って上げるわ、それで坊や、私は何をすれば良いのかしら?」

 しなを作って聞いてくるエルフの女性、リーズ=ウィールズ、どうやら此方も協力してくれるようだ。


「ふん、すこし顔がいいからって直ぐに女は騙されちまう、が、俺ものった、坊主その設計図を見せな、久しぶりに面白い餓鬼に会えたぜ、最高のブツを作ってやるよ」

 同様にふんっと鼻を鳴らし、言ってくるのはブルム=ロンドバル、これで下地は整った。レイズ家が先ほどの本を見てどう思うかに拠る所も大きいが、調べた限り無能な当主では無い、むしろ有能だ、あの技術の意味を理解してくれるだろう。

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