表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Moon phase  作者: 檸檬
カルディナ魔術学院
21/123

phase-18 【最初の試験】

 年に一度の試験、朝から本を片手にぶつぶつと呟いてる子、魔術行使を練習している子。

 高学年は同級生だろうか、お互い組み手をしながら魔術の練習をしている。


「一番最初の試験は9時開始だったな、さて、正念場だ無駄なく完璧に取りきってさっさと次の段階に移らないとな」

 スゥイは1年上の単位も含めて今回受けるようだ、アルフ、ライラはとりあえず年齢に沿って取っていく予定との事。ライラはともかく、アルフは妥当だろう。


 試験会場に入り、席に座る。周りからは異色の目で見られる。最初に受けるのは13歳で受けるはずの複合魔術に関する試験だ。馬鹿にしたような目、呆れた目、部屋を間違ったの?と心配して声をかけてきた先輩もいたがとりあえず受けてみたくて、と無難に返しておく。


 時間になりテスト用紙が配布される。思っていたよりは難しいがまったくといって良いほど問題が無い。

 スラスラと回答を記載、ものの15分で終了。このテスト内容も今後スゥイやライラ、アルフに役立つだろうと思い残り時間はテスト内容を覚えるのに費やした。


 最初の1週間はそれで終わる、予定していた内6割の試験が終了、次の週で残り4割、で3週目が実技試験系だ。アルフは実技系は高等部試験でも通りそうだがそこはライラと合わせるつもりとの事。仲が良くて何よりだ。






「ありがとうございますスオウ、これは大変役に立ちそうです」

 残り時間を使って覚えた試験内容を書き写した紙の束を持ち礼を言われる。


「多少抜けがあるが、ほぼ全部網羅しているはずだ、来週の試験も一応同様に覚えて纏めて渡すよ。来年までに理解出来る様にしておけばもしかしたら来年で必要単位が揃うかもしれないな」


「いえ、さすがにそれは無理でしょう、ですが予定より効率良く学習する事が出来そうです」


「スゥイなら出来そうな気がするけどな」

 前世の記憶という利点がある俺、小さい頃から本を読み予め勉強していたからこその知識だ、それを抜きにすればスゥイは俺より断然頭が良いだろう。9歳になってより美人に磨きがかかってきたが、毒舌にも磨きがかかってきた。


 問題はアルフだ……。

「もうだめだ、いっそ俺を殺してくれ……」

 どうやら基礎たる基礎のテストですら大変だったようだ。答え合わせをしたところなんとか合格ラインに入っているがこの調子では来年、再来年が危ない。スゥイもライラもその辺分かっているだろう。

 俺が出て行った後スパルタで鍛えておく、とかなり本気の目で語ってた。


 学院に戻るときはアルフの勉強も見てやる必要があるな……。

 まずは来週の試験内容のおさらいをさせるか。ライラと目配せをしアルフの特訓もといアルフにとっては拷問の時間が始まった。













・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・














 2週目の試験期間も終了、寮の自室で真っ白に燃え尽きているアルフをそのまま放置、スゥイとライラに来週から始まる実技試験の模擬試験の様な事をする。


 スゥイが受けるのは生活魔術一式と4元素の発動、簡易複合魔術の行使、そして得意魔術での中級魔術行使だ。本来であれば3年目あたりの生徒が受けるような内容であるが、取れるときに取れる可能性があるものは取っておく、との事。


 ライラは生活魔術一式と4元素の発動だけだ、こちらは問題ないだろう。アルフに関しては剣術、武術、格闘術系で必要単位をそろえるとのこと、強化魔術も一応受けるとは言っていた。


 スゥイが魔術言語を唱える。右手を上にあげ手は手刀の形。

 




【Eau Rassemblez-vous De moi La main droite】《我が親愛なる水のマナよ、集え、集え我が右手》



【Une marque Coupez-le】《的を切り裂け》




【Eau Une épée】《水の剣(ウォータスライサー)






 スゥイの右手に空気中の水分が集結し、魔術言語によって形を成す。

 半透明な水の剣が出来上がり、振りかぶると同時に発動。


 目の前にあった的の丸太を半分に切り裂いた。


「こと水だけで言えばもはや俺以上だな……」

 ここにもチートがいたか、昨年実家に帰ったとき母上と何か話していると思ったが魔術言語でも教えてもらっていたか?同じ水に適正があるみたいだし、ありえる……。


「いえ、そうでもありません。詠唱時間が長すぎます。学院内の試験であればこれで問題無いでしょうが実践向けではありませんね。改良の余地が多分にあります」


「いや、まぁそうかもしれんが……、あと回復魔術もつかえるんだったか?」


「はい、スオウのお義母様に教えて頂けましたから、大分改良も済みましたしこれだけであれば中等部に上がれるだけの実力はあるかと思います」

 まじかよ、やっぱり教わってたか……。まぁ、俺あんまり回復魔術覚えなかったし、それを結構不満に思ってたみたいだからなぁ、その辺もあってあそこまで仲良くなってたのか。


「うぅ~、スゥちゃんも、スオウ君もすごいよ。なんでそんなに使えるかなぁ……、私も頑張らないと!」

 ここで自信喪失して腐らない所がライラの良いところでもある、それにライラも優秀だ、俺やアルフの傍にいるから目立たないが、同年代で言えばおそらく上位だろう。

 また、火と水の相反する元素を得意としており、どちらを伸ばすべきか検討中のようだ。













・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・














 実技試験、初等部で受けれる試験内容で一番高いのは中級魔術の行使だ。これは中等部で取る人もいるくらいで試験会場は中等部の人もちらほら居る。

 どうやら9歳で受けるのは俺とスゥイだけの様だ。


 先週、先々週とテストを受けまくってる俺はいまさら、といった様な感じで、隣にいるスゥイの方に奇異な目を向けてくる人が多い。


「良くも悪くもこれで名前が広まる可能性が高いな」

 此方を見てくる生徒達を見ながら言う。座学のテストは直ぐに結果が出ないが実技は目に見えて結果が分かる。9歳の実力ではないのだ、確実に目立つこと間違いない。


「いらぬ名声は余計な問題を抱え込みますから無いに越したことはありません、しかし12歳で学院を出る以上此処で取っておいたほうが後々楽なのは確かですので」


「別に無理して付いてこなくても良いんだぞ」

 主に俺の精神的ダメージの軽減の方向で。


「何を言っているのですか、既に決定事項ですので変更は不可能です」

 本当になにいってるんだこいつとばかりに見てくる。


「まぁ、いいけどね……」

 人間諦めも肝心だ。



 そうこうしている間に順番が回ってくる。


「では次、スゥイ=エルメロイ前へ、得意魔術を述べた後魔術行使をして下さい」

 試験官がスゥイに向かって話す、水です。と答えたスゥイは中央に立ち魔術言語を詠唱する。



 右手を前に出す。

 指は水平、真っ直ぐと伸びている。


 あれ、と不思議に思う、昨日に復習した魔術と違うのを使うのか?不思議な顔をしてスゥイを見ると、にやり、と黒い笑みを浮かべた。







【Eau Rassemblez-vous De moi La main droite】《我が親愛なる水のマナよ、集え、集え我が右手》



【Je le fore Un ennemi Le monde La surface de l'eau Un éclat de lumière】《穿つは我が敵、我が世界、水面に走るは閃光也》




ちょっとまて、あいつまさか、おいおいおい、冗談じゃないぞ!




【Une marque Coupez-le】《的を切り裂け》



【Eau Trident】《三叉の水槍(ウォータトライデンツ)







 膨大なマナがスゥイの周囲に集まったかと思えば全てが右手に凝縮。三叉の槍を形成

 スゥイの前面に射出、地面を抉り轟音を撒き散らし、的を吹き飛ばし、後ろの壁を貫き、壁の後ろにあった林の木を数本なぎ倒した後
















――――――――ズドォォオオオォオオオオオン
















 豪快な音を立ててその水の槍は停止した。








 時が止まった。


 見ていた生徒も当然の事ながら、教師も含めて顎が外れんばかりにぽかん、と見ている。


 ものの見事に水の上級魔術を行使したスゥイは地面にぺたんと座り込んでいる。


 満面の笑顔で此方を向き






「すみませんスオウ、予想以上にマナを消費してしまい、動けません、後で構いませんので部屋まで連れて行っていただけると助かります」

 そうのたまった。

スゥイは自重を忘れました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ