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Moon phase  作者: 檸檬
カルディナ魔術学院
19/123

phase-16 【帰省の意味】

「ただいま帰りました」

 約1年ぶりに見る実家の門と扉、アルフとは既に別れている。

 予め手紙で連絡していたこともあり、母上とルナが出迎えてくれた。父上はどうやら造船業が忙しいようで夕飯までには戻ってくるそうだ。

 塩田で儲けたお金をかなりつぎ込んでいるようだが大丈夫だろうか。


 母上の腕の中には3ヶ月になる赤ん坊、俺の弟、名はロイド=フォールスきゃっきゃ、と手を振りながら笑いかけてくる。

 まだ油断は出来ないが今のところ普通の赤ん坊のようだ。


「かわいいですねスオウ、触っても宜しいですか?」

 横からスゥイが声をかけてくる。冬の間は図書館に入り浸ろうと思っていますと話していたスゥイ、なんなら実家で勉強を教えてやろうか?と言ったら即答で付いてきたスゥイ=エルメロイ。女性として葛藤とかないのか、いや8歳だから無いか……。

 

 お互いに自己紹介を済ませている母上とルナとスゥイ、手紙で事前に知らせていたとはいえ既に意気投合している。あれ、ちょっとまてよ、ルナとスゥイのコンビって俺の立場やばくない?


 此処にいたって自分の身の危険さに気づいた。













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「菓子部門もかなり売り上げが上がっていて別会社として設立する案も出ているわ、後うちで雇った職人がね、スオウが作ったアンコで面白いお菓子というか食べ物を作ったのよ。まだ販売まではいってないんだけど本店で取り扱うのは決定してるの。そろそろお昼だし荷物を片付けたらそれでお食事にしましょう。ルナ、スゥイさんをお部屋に案内してあげて」

 傍に控えていたルナに声をかける。餡子で作った菓子か、楽しみだな店に出すぐらいだから美味しいんだろう。


「部屋までお借りしてしまい大変申し訳御座いません。私でお手伝いできることがあれば言ってくださいお義母様」

 ちょっとまて、いつのまにそんな風に呼ぶようになった。


「いいのよ、スオウの数少ない友達だもの、なんなら本当にお嫁さんに来てくれても良いわよ」

 おほほほ、と笑う母上、友達が少ないって失礼な、それに嫁さんってまだ8歳だぞ俺ら。


「私なんかで宜しければ是非お願いします。足りない部分は補うよう努力いたしますので」

 なにを言っているんだお前は! とおもったらフッと鼻で笑われた。遊ばれてる、これ遊ばれてるぞ俺!


 ちくちくと精神的ダメージを受ける会話を颯爽と離脱し自室にはいる。

 持ってきた鞄からお土産のカルディナ魔術学院名物白髭白ワイン。院長お勧めっ! とか書いてあるワインだ。

 ネーミングセンスはともかく味は良いらしいので買ってきた。

 アルフは同じのを1本とつるっぱげお勧めっ! の赤ワインも買った様だ。つるっぱげ、って言った後の怒った学院長の顔色にかけてるそうだが全然かかってないと思うのは俺だけだろうか。


 酒はどうも年齢的な問題なのか味が分からない、前の俺のときはビールが好きだったがこちらでは微炭酸冷え具合が中途半端なエールという似た飲み物がある程度だ。やはりキンキンに冷えてないと駄目だろう。

 今度は冷蔵系の技術を検討、提案するかな、土産を片手に食堂に向かった。













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 昼ごはんに出たのはなんとどら焼きだった。フォールス焼きとして売り出す予定だったところを無理やりどら焼きに変えさせた。これがどら焼きという名前にならないなんてダメ絶対。ドラえもんが泣いてしまうよ!

 最後まで納得の言っていなかった母上だが、普段我侭を言わない俺のお願いだからととりあえずは納得してくれたようだ。

 最初の我侭らしい我侭がこんなことなんて……、と落ち込んでいたのは見なかったことにしておこう。




 夕飯後、実家にいた頃の日課である素振りを庭でする。


「実家に来ても鍛錬とは、予想通りですね」

 此方に歩きながら近づいてくるスゥイ、手には木剣が2本握られている。

 魔弓は学院の外には持っていけなかったため此処では剣を使う。


「先ほどは魔術理論や魔術原理の講義ありがとうございました。なにより学院の図書館程ではないですが此処まで資料が揃っているとは思っても見ませんでした。スオウの知識の原点は此処にあったのですね」

 まぁ、ここにあったのだけじゃないんだけどね、と思いつつスゥイを見る。


「父上の趣味が本の収集でね、生まれたときから本に囲まれてきたようなものさ」

 苦笑しながら答える。当の本人は集めるだけ集めるが、興味のある本以外大して読まないのだ。本が可哀想である。 


「ですが、それを独学で学ぶとは何と言って良いやら、此処にいたって再認識しました。スオウですから、で済ますことに間違いは無かったと。近くにアルフという加護持ちがいたせいでそこまで目立っていませんが、いえ、きっとそこも計算の上なのでしょうね貴方の事ですから」


「さぁ、どうだろうな」

 そう返しながら振っていた剣を近くの木に立てかけ、スゥイに向き直る。同時にスゥイから持っていた木剣を1本放り投げられ受け取る。


 正眼に構えた所でスゥイから声がかかる。


「では、戦闘においての魔術行使のご指導お願いいたします」

 ドンッ、と強化魔術を既に唱え済みだったのか8歳とは思えないスピードで此方に突っ込んでくる。


 同様に瞬時に強化魔術を唱え上げ、木剣をあわせる。アルフの速度に見慣れてしまった為かとても緩慢な動きだ。

 俺は剣術をきちんと学んだわけではない、また剣の才能も無いだろう。そもそも剣の鍛錬をするつもりは無い、お互い剣の才能がないのは分かっているのだ。となるとどのタイミングでどういった魔術を使うか、また実践経験を積ませる事がこの鍛錬では重要となる。


 適度に手加減をし、手本となる様にスゥイでも使える魔術を所々で行使しながらスゥイと共に剣で舞う。


 頭上に昇る月が半円を灯し始めた頃、剣の舞踏会も終焉を迎えた。













・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・













「では母上、来年の冬には此方に戻りますので宜しくお願い致します」

 20日程滞在した後、学院の授業がそろそろ始まる為実家を出る。横ではスゥイがルナとなにか話している。あの二人が話しているときは碌な事が起きない、この20日で一番最初に学んだことだ。


「別に無理はしなくてもいいのよ? 5年間で学ぶことなんだから、貴方なら本当にやりかねないけれども……」

 心配そうな目で此方を見てくる母上、本当にいつも要らぬ心配をかけて申し訳ないと思う。


「それもそうなんですがやりたい事もありますので」

 コンフェデルス連盟に行く旨も伝えてある。もちろん月に1度は戻るように言われたが父上からは、男たるもの冒険せねばならん! なんなら帝国にも行って来い! とか言っていた、おそらくグランさんの受け売りだろう、昨日も飲みに行ったみたいだし。4ヶ月に満たない赤ん坊がいるんだから家にいろよダメ親父……。


 そうこうしている内にアルフが来た、家の前の馬車に乗り込み手を振る、次は夏休みか試験発表後、だろう。俺としては試験は確実に通るだろうからアルフが帰るなら夏も、ってところか。


「しかしスゥイ、お前実家帰らなくてよかったのか?」

 馬車の中でアルフがスゥイに聞いている。20日間街の中を散策したり、鍛錬したり、勉強したりといろいろしたが結局ずっとスオウの実家に居たのだ。


「ええ、手紙でのやり取りもしていますし大丈夫です。なにより12歳で連盟に行くのでしょう? それからでも問題ありません」

 俺を見ながらそう言い切るスゥイ、元貴族の件は多少は聞いている、何らかの理由もあるのだろう。


 その辺を察したのかアルフもそれ以上は何も言わなかった。












・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・













 5日ほどの馬車の旅の後、学院に付いた。


「アル君! スゥちゃん! スオウ君!」

 満面の笑みで此方に走ってくる翼人の女の子、ライラ。

 ほほう、スゥイと俺より先にアルフを呼ぶとは、手が早いですなアルフ君。にやにやとアルフを見てやるが当の本人は何の事かさっぱりのようだ。まぁしかたがない、もう少し年齢を重ねたらからかってやろう。


 どうやら1日早くライラが学院についていたようだ、スゥイと実家の件で話しているようだ。

 ライラの祖母はスゥイの祖父が貴族だった頃の使用人だったそうだ。没落してから供にコンフェデルス連盟に亡命、当人同士は関係無しで幼馴染として付き合っているがスゥイの祖父は良い顔をしていない様だ。


 その辺も含めて帰りたくなかったのかもしれない、とりあえず荷物を自室に持って行きながら今春新発売予定のどら焼きをライラにも食べさせてあげないとな、と土産の袋を取り出した。


すみません少し短いです。


いろいろ設定が自分の中でもあれ?これ違った気がすると戻って書き直したり、設定集の資料を見比べたりで混乱気味。違和感あったら言っていただければ幸いです。


お土産のどら焼きですが袋に遅延魔術がかけられており、保存が利くようになってます。袋の中の時間が遅くなる仕組み。なので腐るのも遅い。

無機物にしか効かないとか言う設定もありますが、その辺は追々

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