phase-14 【学友の選択】
大広間の一部、学院長からのありがたいお説教もとい、世間の厳しさを教えられている印章を持っていなかった、間に合わなかった同級生達。
まだ7歳やそこらでちょっと理不尽じゃないか、と思わないでもない。
試験のときの試験管だったダーナ先生とさきほど壇上で挨拶をしていたティファナス先生の元へ行く。
全員揃った所で自己紹介が始まった。
「初めまして、初めてじゃない人もいるかしら? 水の魔術を担当しているダーナ=マナスス、こちらが火の魔術そして剣術指南をしているガルフ=ティファナスよ。よろしくね。
担当教員の説明だけど私達はとくに個別に授業するというわけではないわ、授業は選択性で自分の好きな科目を受ければ良い、もちろん必修となる科目もいくつか存在してるわ、その必修の授業は受けてもらうけど選択授業は絶対受けなければならない訳じゃないの。試験は毎年9月に行われるのだけど、その試験にさえ通ってしまえば問題ないのよ。
でも必修科目だけでは3割も単位が取れないと思うけどね?」
ふふっと穏やかな笑みを浮かべる。
「試験は実技試験と筆記試験の二つで評価するわ、14歳のときに中等部に進級できるようになるのは知ってると思うんだけど、13歳の9月に中等部進級試験が最初に受けれるわ、頑張れば此処で受かるかもしれないけどまずは1回落ちると思ったほうが良いわ、ここはカルディナ魔術学院、甘くは無いわよ」
それ以外にもいくつかの注意事項の通達の後、解散となった。
要点として纏めると必修科目と選択科目があり、各科目は9月にテストがある。
合格すると単位が貰え、必要単位に達し、13歳の9月以降に進級テストが受けれるといった形だ。
必修科目だけでは必要単位の3割にしか行かず、他に選択科目を受ける必要が出てくるということだ。
必修は授業に出る必要があるが、選択科目に関しては試験にさえ受かれば単位がもらえるとのこと。
今から6年間で単位を集め、進級しろって事だ。
また、担当教員というのは何かあったときの相談役だ、また責任者でもある。
そういう意味ではこの曲者そうなおばぁちゃんである意味よかったかもしれないな、そう思いつつ、忘れてた懸念事項に目を向けることにした。
「おい! 貴様!」
グラン=ゼン=バーウィンと言ったか、赤髪の短い髪、服装と名前からしてこいつもたぶん貴族というやつだろう。なにかした記憶がないのだがなんなのか
「なんですか、貴方とは特に接点がなかったと思うのですが、そんなに怒られる理由が思い当たりません。」
めんどくさそうに答える、というか本当にめんどくさい。
「ふざけるな! 貴様ゼロール様になにかしただろうっ。貴様を見るたびに顔色を悪くするのだ、何をした貴様!」
あぁー舎弟かなんかなのかこいつ、めんどくさいな、どうしようか。というかゼロールって誰だよ。あ、ゲロ君か
「なにをしているの! 同じ班員で初日から揉める等、何を考えているのですがグラン君」
声を聞きつけてきたダーナ先生が嗜める、そりゃそうだ、さっきまで説明をしていたんだから、喧嘩吹っかけるなら別の場所かもっと離れてからやるべきだったな。
「しかし先生! この男はアルバートン伯爵になんらかの失礼を働いたに違いありません! なぜこのような男が学院にいるのですか!」
先生が駆けつけたことに一瞬驚いたようだが、大広間全域に聞こえるような声で怒鳴り散らす。それぞれグループが出来上がっていた子供たちから何があったといった目でこちらを見てくる。
「では、そのアルバートン君が何かされたと言っているのかね? なんなら私のほうで聞きに行こうか」
ティファナス先生が声をかける。むしろ俺もそこまで脅えられるのも心外なので聞きに行きたいところでもある。
「そ、それは……、特に何も言っていないのですが……」
急にしどろもどろになるグラン君。まぁそりゃ何があったか分かってないだろうしな。
「本人が何かされたとも言っていない、何かされた証拠もないでは唯の言いがかりに過ぎん。魔術学院の中では貴族であろうと魔術を学ぶ同等の存在だ、それ以上揉めるのであれば君になんらかの罰則を与えねばならん」
「くっ……、わかりました、失礼します」
不満たらたらで寮にもどっていくグラン君、なんかな、悪いことしたなぁという気分に、な……らないな。
「君もあまり不用意な行動はしないように」
こちらにも注意をしてくるティファナス先生。
「はい、ご注意有難う御座います、気をつけます」
とりあえず納得は行かないが返答し、待っていてくれたアルフとスゥイ、ライラと一緒に寮に戻った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
寮の自室、決めたいこともあるので、とアルフだけではなく、スゥイ、ライラも部屋にいる。
「災難だったなスオウ」
にやにやと笑いながら言ってくる。この野郎お前も少し面倒ごとを背負いやがれ。
「まさか彼と繋がりがあるとは思いませんでしたね、しかしこの学院は帝国の人間が多いですから気を付けた方が良いかと思われますよ」
そういうことは早く言って欲しかった、もーめんどくさくなったら全部ぶちのめすか、うん、それでいこう。
だんだん黒い方向に考えが寄っていく、だめだもっと癒しを! 俺に癒しを!
「とりあえず……、だ、俺は必修科目しかとらん、選択は全部試験で済ますつもりだ、そうすればあの馬鹿どもと関わることも無い、調べた所テストが同日でかぶってるのを抜いたとしても中等部にあがれるだけの単位は1年目でとれる。必修も実質1週間に8教科だ、とりあえずこの年で単位を必要なだけとって俺は中等部試験までちょいと作りたいものがあるので此処を出る」
待つこと10秒、おそらく脳内で意味を理解した二人が驚愕の顔に形作られ。
「はぁああああぁああああ?」
「えええええぇええええっぇええ!」
アルフとライラが騒ぎ出す、そりゃそうだろう常識で言えば無茶すぎる、が所詮は13歳で受ける試験だ、適当にやっても問題ない、念のため図書館で過去問を調べたが父上の書庫にあった本のほうが断然難しかった。
「おま、ちょ! 今まで散々わけわかんねぇことやってきたと思ったがここにきて何言いやがる!」
「なに、心配いらん、年に数回はもどってくるし、どうせなら全部の単位を取るのも面白そうだからな、9月のテスト期間にもどってくるよ、実技試験も学院内でやる内容だけだし、課外研修とかは中等部以上のようだしな」
ふははははは、俺は自重を忘れた! 忘れたのだ! もうどうとでもなれ! わけのわからん貴族には絡まれるし、可愛い女の子と思ったら毒舌で癒しは無いしもうやってられん。
癒しを求めに旅たつんだ、そう俺は旅立つんだ。
あぁ、でも親に心配をかけさせるわけにも行かないからな、そっちはちゃんとフォローしとくか。
「それで、どちらに行かれるのですか? 作りたいものがあるという事ですから必要な設備があるところでしょうか、ご実家に作られるのですか? フォールス家と言えば最近よく名前を聞きますのでお金はあるのでしょう?」
今まで沈黙を保っていたスゥイが口を開く、お前は本当にいつも冷静だな、俺も最初はそんなキャラを目指してたんだがな……。
「いや、コンフェデルス連盟に行く予定だ、さすがに8歳では動きにくいだろうからな、連盟にいくのは12歳の予定だ、一応それまでは実家でやることがある」
そうだ、俺はまだ8歳なのだ、忘れがちだが8歳なのだ。
「そうですか、わかりました。では私は12歳までに進級するに当たって必要な科目をすべて取ります」
此方を真っ直ぐに見つめながら言う、その目には決意が見える。
「む?なぜ?」
「つれないですねスオウ、私も付いてきます。ええ、大丈夫です12歳までは貴方がいなくても学院で上手くやりますのでアルフも居ますし、上手く使います」
「ちょっとまて、使うってなんだ使うって!」
あわてて突っ込むアルフ、おぉ、スゥイにかかると誰でもそんなポジションになれる様だ。
「そうか、まぁかまわんけど、あんま無理はするなよ、別にそんなすごいもの作るわけでもないからな。」
まぁ、この世界ではオーバーテクノロジーというかこの世界との合作になるかもしれんが、その辺は気にしないことにしよう。
「ふふ、付き合いは短いですが貴方が言ってもあまり説得力がありませんね」
失礼な、最近俺もそんな気がしてるがそんな事は無いはずだ。
「というか1年目で全て単位が取れるということになんで誰も疑問を挟まないの……」
疲れたように呟く、正しい、君が言っていることは正しいぞ!
「「スオウですから」だからな」
唯一の常識人ライラ、おそらくこのメンバーの中では常に苦労人の立場になるだろう。主に世間一般常識のとの呵責で。
この次の次からちょっと飛びます。
といっても1年程、はやく15,6歳くらいにしてどかどかばかばか魔法合戦やらせたい。
しかし下積み時代も大事。
お説教シーン書き忘れてたので追記しました。3/20