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Moon phase  作者: 檸檬
カルディナ魔術学院
16/123

phase-13 【学院の始業】

 初等部の大広間に長い机と椅子が並べられている。


 それぞれ仲の良い人達と座っているのかそれぞれのグループが出来上がっている。

 とはいえ、座る椅子は人数分しかないので後から来た人間はばらけて座る形になる。


 毎日のように朝の鍛錬をしていた俺とアルフは何の問題もなく朝目を覚まし。

 むしろ軽い組み手をお互いしてから入学式に向かってきたくらいである。


 しばらくまっても降りてこない二人を、ま、いっかと気楽に置いて行き、先に大広間に向かった。


 案の定というか予想通りというかぽわーんとした雰囲気のライラは朝が弱いようでぎりぎりに起きたそうだ。

 入学式の開始ギリギリに来た彼女たちは何故か空いていた俺とアルフの隣に座った。


「予想通り空いてましたね、だから言ったでしょうライラ」


「うん、でもこれ喜んで良いのかなぁ……」

 申し訳なさそうな目で此方を見てくるライラ。ウェーブがかかった青い髪、頭頂部が少し跳ねてる。寝癖だろう。


「む、なんで空いてると思ったんだ? 別に席取りは依頼されてなかったと思ったが」

 不思議に思いスゥイに尋ねる、下手したら二人ばらける可能性もあったと思うのだが。


「昨日の晩に帝国の貴族を震え上がらせる男に加護持ちの二人組み。隣に座りたがるもの好きが居るとは思えません」

 当然、とばかりに胸を張って言うスゥイ、残念君の胸はまだ張った所でまな板だ。


 oh、まさか何もしないうちに目立つ事になっていたとは……、まさかの新事実発覚とはこのことだぜ……!

 予想外の事実に打ち拉がれる、しかしその二人組みと一緒にいるお前らもまずいんじゃないかと思わないでもない。


「問題ありません、居たくない所に居るより貴方の所のほうが楽しそうですから」

 嬉しそうに言う、聞き様によっては告白だがこいつを侮っちゃいけない、絶対俺で遊ぶ気だ間違いない。

 というか心の中読まれた!? エスパー!?


 軽く驚愕している所で剣を腰に下げた男性が壇上に上ってきた。




「深遠暦653年度カルディナ魔術学院入学式を始める。新入生起立」

 よく通る声が大広間に通る。がたがたと音を立てながら全員立ち上がる。


「おはよう、私は火の魔術教師であり、剣術指南役ガルフ=ティファナスだ。


 まずは入学おめでとう。君達はこの瞬間から最高峰カナディル魔術学院初等部在籍という資格を有する。各人カナディルの看板を背負っていることを意識した活動をするように。


 また、合格通知と同時に送ったファングの印章は持っているな? かならず学院にいる間は見える位置に身に着けておくこと、学院の生徒である証明であり、学院内の食事、買い物等すべて3割引きになる。

 無くした場合は早急に担当教員に申し出ること。新しい印章を発行する。


 ただし! 印章を無くした者、印章を付けて居ないものは罰則を与える。今日この日から君達は魔術師の卵である、大事なもの一つ保管できない人間が魔術師になれるはずも無い、各人重々気をつけるように。


 この入学式の後、それぞれの担当教員が確定する。担当教員の名前もきちんと覚えておくこと。では学院長からの挨拶、お願いいたします」

 学院長に向かって軽く一礼した後、壇上を降りる。ガルフ=ティファナス、アルフが言っていた有名な剣士だろう、腰に剣吊るしてたし、何より服の上からでも鍛えているのが分かる。


 横を見ると壇上から降りていくティファナス先生をキラキラした目で見ているアルフ、名前が似てるから共感する所があるのか、いやそんなわけないな、単純に力試しをしたいだけだろう。


「ほっほっほ、学院長のゼノじゃ、今ガルフ先生からお話があったように大事なものの保管はきちんとするのじゃぞ、寮内とはいえ油断してはならん、なにがあるかわからんのじゃ、魔術師たるもの常に先を読み起こりうる現象を想像し対応せねばならん。

 そうはいってもおぬしらはまだまだ卵じゃ失敗することも多々あるじゃろう、その時のためにわしら教員がおるのじゃ、困ったことがあったら直ぐに言いなさい力になろう。


 む、あまり長く話してもつまらんじゃろうしな、さっそく担当教員の配属といこうかの、今から教員名前を呼ぶのでな、その後に呼ばれた生徒はその教員の所に行って指示を聞くのじゃ、呼ばれるまでは自由じゃが騒がんようにな。


 では、おっとっと、すまんの班員を纏めた書類を忘れてきたようじゃ、ガルフ君すまんの、ちょっととってきてもらえんかの」

 とぼけた顔をして言うダンブ○ドアもとい学院長。なるほどそういう事か、むしろあからさま過ぎる、いや、しかし7歳~10歳の子供たちだ、このくらいで丁度良いのだろう。


「スオウ、印象は所持していますか?」

 自分の印章を見せながらスゥイが聞いてくる。


「あぁ、もちろんだ、アルフ、ライラどうだ?」

 自分の印章を確認しながらアルフとライラに聞く。


「あん? 印章なら部屋にあると思うぜ、まぁ付けないとダメって言われてたけど式が終わってから直ぐ付ければいいんじゃないか?」


「すみません、私も常時所持していなければならないとは思っていなかったもので寮の部屋に置いてます、終わった後直ぐに……」

 それがどうした? とばかりに聞いてくるアルフに申し訳なさそうに答えるライラ。


「いや、今直ぐ取りに行け、おそらくすでに簡単な試験が始まっている」

 周りに聞こえない程度の小さな声でアルフとライラに伝える。


「あん? どういう?」


「再三に渡り印章の重要性を説いた後、無くす事に対しての注意喚起をこれ以上ないくらい繰り返しています。また、書類を忘れるなどというありえないミスをした状態で自由を言い渡しています。所持していない人間は今直ぐ取りに行けと言う事でしょう」

 スゥイが内容を補足する、さすがスゥイ本当に7歳かこいつ。


「ええっ、でも、自由っていってもさすがに大広間を出て行ったらまずいんじゃないですか?」

 驚いた声を出しながら聞いてくる、先ほど学院長が言った話の解釈を違う意味で受け取ったようだ。


「院長先生は静かにしていろ、とは言ったが出て行くなとは言って居ない。大人しく出て行く分には問題はないはずだ、もし駄目なら途中で先生に止められるだろう、それならそれで考えすぎだったって事で済むだけの話だ」

 おそらくそういう意味で間違いない、間違っていたら多少怒られるかも知れないがその場合は見捨てるとしよう。と、思ったらスゥイに睨まれた、いや、わかったよフォローするよ、てか何でわかるんだよ。


「なーる、よし、わかった行ってくる、ライラ加速魔術は使えるか? 俺は強化魔術でいけるがそのままじゃ付いて来れないだろう?」


「すみません、私まだそんな中位魔術はとても……」

 申し訳なさそうに言う、アルフも期待はしていなかったようで抱っこかおんぶか考えているようだ。


【Le vent fort du vent Vous】《疾風の如く、その身を運べ》

 瞬間で呟きライラに加速魔術をかける。


「おそらく、対象としているのが子供相手の話だ、十分に時間があるとは思うが念のために早いに越したことは無い」


「あ、ありがとうございます、じゃあ直ぐ行って来ます」

 驚いた顔で此方を見ながらお礼を言う。言い終わるか終わらないかアルフが手を引いて連れて行く。


「静かに、な」

 苦笑しながら二人に言う、一応注意を受けてる内容の部分は用心するにこしたことは無い。


 さすがはアルフ滑る様に大広間を走りぬけ、ライラを連れて出て行った。

 あ、しまったな此処でお姫様抱っことかさせたらフラグとか立ったかもしれないな。


 暢気なことを考えるスオウであった。








「さすがです、加速魔術まで使えるとは、学院では中等部の領域ですよ。しかも高速言語とは、底が知れませんね」

 微笑を浮かべながら言ってくる。むしろ今ので高速言語だと理解できたお前も相当だと思うのだが。


「アルフの手合わせで必要だったからな、負けるのは当然としてある程度は持たないと鍛錬にならんし、強化魔術だけじゃ戦いにすらならなかったからね」

 アルフの強化魔術の重ね掛けは加速魔術を使わないと下手したら目にも映らない、気づいたときはベットの上だったを地で行くのだ。


「加護持ち相手と手合わせしているだけで相当かと思いますが、なるほどそういう理由ですか」

 納得したように言うスゥイ、最初に覚えたのはそれが理由ではなかったけど、ま、いいか。



 そうこうしているうちに同様の内容に気づいたのか何人かの生徒が大広間を出て行く、どうすれば良いのか迷っている人が3割、黙ってまっている子が2割、おそらく最初から印章を所持して居ただろう生徒は1割ほど、落ち着いて座っている。


 5分ほどしたらアルフとライラが戻ってきた、出て行ったときもそうだったが戻ってきたときも時に何も言われない。おそらく当たりだろう。他にもその光景を見てあわてて取りにいく生徒も何名か見受けられる。


 ティファナス先生が書類を学院長に渡している、おそらくそろそろタイムリミットだ、この4人は問題ないが1割ほどの生徒がまだ戻ってきて居ない。


 学院長が壇上に上り担当教員の発表をしだした。


「担当ダーナ=マナスス、副担当ガルフ=ティファナス

 所属生徒 スオウ=フォールス、スゥイ=エルメロイ、ライラ=ノートランド、アルフロッド=ロイル、サナ=ステファン、ガルシア=コンフォード、グラン=ゼン=バーウィン、セナ=ルナリエル以上8名担当教師の所へ移動じゃ」

 何人かの教師が呼ばれた後自分の番が来る、4人とも偶然か必然か同じ班だ、いやこれは明らかに必然だろう。担当教員のあのおばちゃん、たしか試験官だった人だ。

 やはりあのときの魔術でなにかを感じ取ったか、面倒な事にならなければ良いが。


 と、おもったらおそらく同じ班だろうグラン=ゼン=バーウィンだったかにものすごい睨まれている。

 俺何かやっただろうか……。先行きが不安でしょうがない。


 はぁ……、とため息をつきながら遠くを見るのだった。

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