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Moon phase  作者: 檸檬
カルディナ魔術学院
14/123

phase-11 【学院の世界】

 入学式。8歳を迎えた俺は必要なものを鞄に詰め込み準備完了。


 父上から貰った剣を腰に吊るし、鞄を持つ。

「さて、しばらくこの部屋ともおさらばだな」

 いろいろ思い出が詰まった部屋を後にする。


 父上と母上が扉の前で待っている。

 涙ぐむ母上と力強く頑張って来い、と送り出してくる父上

 ルナは何事もないかのように立っていたが目が真っ赤である。

 他のメイドにも挨拶をし、家を出る。


 家の門をくぐるとアルフが居た。


 ともに馬車に乗り込み出発する。

 さぁ、新しい生活の始まりだ。













・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・













 カルディナ魔術学院は初等部、中等部、高等部、そして研究部の4部署に分かれる。

 全部門の人数と学院で働いている人を合わせると3000人近い人が所属しているマンモス学校だ。


 各部は単純に小学校、中学校、高校、大学のイメージで良いのだが、大学もとい研究部は学ぶ場所ではなく仕事場のような意味合いが強い。新たな魔術の研究や宮廷魔術師の手伝いなどが基本となりどちらかというと大学院のイメージかもしれない。カルディナ魔術学院の教師になりたい人間もこの研究部に入ることになる。

 

 大抵、というより殆どの人が高等部を卒業したら実家に戻るかどこぞの国や軍、研究機関に勤める。カルディナ魔術学院は優秀な人間を輩出することから就職率は100%だそうだ。


 尚、年齢での進級と思われているが、年齢と同じく技術が伴わない場合進級が出来ない。

 そのため20歳を過ぎても初等部のままの人もいる。大抵は3年上がれなかったら自主退学していく様だ。


 入学の年齢はまちまちであり7歳~10歳の間に初等部にはいる子が多く、もちろん20歳近い人が能力を持って高等部や研究部に編入してくることもあるが滅多に無い事の様だ。


 中等部は14歳以上、高等部は16歳以上、研究部は19歳以上にならないと能力を満たしていても進級が出来ない。尚卒業は高等部に所属しており、能力値が卒業基準を満たしていれば卒業できる。高等部に進学と同時に卒業も可能という事だ、長い歴史で一人も居ないそうだが。

 年齢で区切る理由は高等な魔術言語を行使する為にはそれに伴う体作りと精神の育成が必要、だそうだ。


 まぁ、善悪の区別が付かない子供に強力な魔術が使えたら碌な事にならないだろう、が、そもそも使えないだろ、と思わなくもない。

  

 初等部で学ぶ内容は基礎元素と生活魔術のおさらい、後は下級魔術を少しと体力づくりだ。

 他にも選択できる科目があり、剣術、槍術、弓術、杖術等等、冒険者も多く排出しているだけあってそちらの科目も充実している。


「やっぱ剣術が無難かな、俺が居ないとアルフも相手に困るだろ」


「む、そんなことはないぞ、なんたってカルディナ魔術学院にはガルフ先生がいるからな! 親父が言うには大陸でも指折りの剣士らしいぜ」

 へっへっへ、と嬉しそうに言うアルフ、今まではまともに相手をしてくれるのは父親だけだったし、俺相手だと役者不足な所があったから仕方が無いだろう。


「いやいや、お前、いくらなんでも入学したばっかりのひよっこが、そんな先生に教えてもらえるわけが無いだろう」

 いや、まてよ加護持ちってのは分かってるんだろうから特別枠で組み込まれるかもしれないな。

 となるとその技術も近くで見ることが出来るかもしれん、しかもガルフ先生はたしか火の魔術教師だ、苦手な火を克服するのにも役立ちそうだ。


「そーかな、お願いすればやってくれるだろ」

 楽観的に考えているのが丸分かりであり、何も考えていなそうだ、ダメだったら無理やり斬りかかって見ようとか思っているのかもしれない。


「そんなわけあるかっ」

 ゴスッと剣の鞘で頭を小突き。確かにもしかしたらやってくれるかもしれないと思った。













・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・













 いくつかの馬車を乗り継ぎ、魔術学院にたどり着く。

 おそらく他の入学者と思われる子供たちと、それに続く馬車が何台か見える。


 少しずつ馬車のスピードが落ち、学園に近づく。

 約半年前に見たレンガ造りの門と、奥に見える同様のレンガ造りの建物。

 見上げるほど大きく、その建物が4つ、初等部、中等部、高等部、研究部と並んでいる。


 学院は5m近い高い塀に囲まれており、その周りをさらに堀が掘られており、透明度の高い水が流れている。


 学院内に入る唯一の跳ね橋がさげられており。その跳ね橋の上を馬車が通り抜けた。



 大通りを抜ける、道の両脇には露店や魔術品などを売る店、食料を売る店が立ち並び一つの町を作り出している。

 道路はレンガできれいに舗装されており、等間隔になんらかの木が植えてある。


 学院が見える手前で馬車が停止、ここから先は徒歩となる。

 御者に運賃を払い荷物を持ちアルフとともに学院に向かって歩き出した。



 階段を上り中央広場に出る、中央には噴水があり水の魔昌石からコンコンと透明度の高い水が溢れている。

 近くのベンチにはおそらく学院の生徒達だろう、団欒している様子が見て取れる。


 生徒たちを横目にまずは荷物を置くために寮に向かう。


 中央広場から3つに伸びる道のうちどれか悩む、近くの看板を確認すると、正面が学院教室、右が図書館、左が学院寮との事だ。

 アルフに声をかけ、左の道を寮に向かって歩く。


 すぐにレンガ造りの5階建ての建物が見えてきた。

 奥から赤、緑、青、黄色の淡い色が付いる。


「たしか青の301だったか?」

 アルフが聞いて来る。どうやら自分で調べる気はないようだ。


「あぁ、そうだ、聞いてはいたが木造じゃなくてよかったな、レンガならお前の馬鹿力でもそうそう壊れんだろう」

 学院にきてまで壁の補修修理なんてそんな後始末はやりたくない、レンガだろうと壊すときは壊してしまいそうだが……。


 1階から3階が男子、4階、5階が女子だそうだ。5階まで階段上るの大変そうだな、と思っていたが寮に入った途端その疑問が解消された。


 寮のドアを開けるとまずは大きな玄関、そして奥には団欒室だろうか。ソファーと暖炉が見える。

 玄関から右手にバロック調の階段が見える。が、その階段が途中から途切れていた。


 唖然としてみていたら上から石状のタイルが降りてきてそこから同級生だろう生徒が数名降りてきた。


「まさかのエレベーター……」

 魔法はんぱねぇ、今更ながらに再認識した。













・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・













 エレベーターもとい、浮かぶタイルの上にのり3階で降りる。中央の吹き抜けをぐるりと通路が設置してあり、通路の行き止まりまで行くと301号室はあった。一番角部屋にあり多少なら騒いでも問題なさそうだ。


 部屋に入るとおよそ20畳ほどの部屋があった。正面は窓が二つ、壁際の部屋なのか左側の壁にも窓が一つ。

 そして机が二つ、ベットが二つ、箪笥が二つ、中央で別れ左右対称に設置されていた。


「これは思っていたより全然広いな、さすがは最高峰といったところか」

 予想以上に広い、寮と聞いていたのでさほど期待していなかったのだがまさか此処までとは思っても見なかった。これだけ広い部屋が割り当てられるとなると3000人もどうやって住まわせているんだ?絶対スペースが足りない気がするのだが。


「おいおい、俺の実家の部屋の3倍はあるんじゃねぇか……」

 唖然とした顔で呟くアルフ、呆然と部屋を眺めている。


 とりあえず換気しようと、窓に手をかけ、開く。ガラス等は付いてなくただの木窓だ。

 全開に開け放つと外の大通りの喧騒がわずかに聞こえる。


「さて、さっさと荷物整理をして入寮手続きを済ませてしまおう。書類は既に送っているが入寮した後に報告に行かなければならなかったはずだ」

 普通は先に手続きをして入寮する物だと思うのだが、違う人の部屋とかに入ったらどうするのだろう。が、そこは魔法の世界、扉に合格通知と一緒に送られてきた生徒の証であるオオカミ(この世界ではファングと言うそうだ)を象ったバッチに個別の認証魔法がかけられてるそうで適合した部屋にしか入れないそうだ。

 じゃあ鍵いらないじゃんとも思ったが一度発動するとそこで終わりの使い捨てであり、何度も使う場合毎回扉とバッチに認識魔法をかける必要があるそうなので鍵も必要らしい。

 

 なんか中途半端に便利な魔法を作ったもんだな、抜けも有りそうだし。


「そうだったっけか、まぁ、俺は大して荷物もないからな、服を適当に箪笥につっこんで終わりだ」

 本当に丸めて突っ込みそうだ、しわしわの服を着て隣を歩かれるのは嫌なので本当にそうやったら止めないとならないな。


「俺も変わらんけどな。剣は、とりあえずおいて置くか」

 父上から貰った剣をベットの上に置く。そういえば名は湖月(コゲツ)と言うそうだ。いまさらだけど。


 適当に荷物を処理した後机の上に置いてあった鍵を取り、木窓を閉めて外に出る。

 鍵を閉めた後、念のため施錠の魔術をかけておく。

 正確には施錠というより固定の魔術だ、解術してからじゃないと鍵が回らないようになる。


 可動式のタイルが丁度降りてきたので乗ろうとした所で良く見知った顔に会う。

 入学試験の後の事を思い出して変な汗が出る、あぁ、勘弁して、もうこれ以上教えるような事は無いって、あれ、その手に持ってるのはお酒? あれ、ちょっとまって俺7歳だから! まだ一桁だから! 中身はそろそろ30だけど7歳だから! もう寝かせて、しんじゃう、しんじゃうよー!



「スオウ、アルフお久しぶりです。お変わりないようで何より。今から入寮確認で初等部に行くのですがご一緒しませんか?」

 言葉遣いはこれ以上ないくらいに丁寧だが断ることを許さない雰囲気を持って話しかけてくる。

 スゥイ=エルメロイとの半年振りの邂逅だった。

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