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Moon phase  作者: 檸檬
次の名はスオウ
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phase-9 【権力の魔力】

 なんてこった……、まさかのダンブル○アとは……。


 カルディナ魔法学院の入学試験、試験管の一人学院の院長とあったときの第一印象だ。

 まぁ、髪の毛はつるっつるだったけど見た目そっくりだ。


 なんだ、魔術学院とか学園のトップは白髭生やさないとならない決まりでもあるのか。


 思わず突っ込みそうになったが、そんなくだらないことで入学を捨てるのもなんだったので大人しくしていた。


 入学試験は3人~5人ごとに部屋に入室し行っているようだ。

 どういった事を中でやっているのかは不明だが室内でやるのだから派手な魔術は使えないだろう。


 集まってる子供たちも6~9歳くらいの子供たちだ、皆緊張した面持ちで順番を待っている。

 必死に魔術言語のおさらいをしている子もいれば、保護者と一緒に来て話し込んでいる子、泣きそうになっている子もいる。


 考えてみれば俺ってまだ7歳なんだった、アルフが全然子供っぽくなかったし、そもそもアルフ以外の友達ってあんまいなかったし全然気にしてなかった。違和感も無かったから流されてたが、もう少し気をつけるべきだったな。


 いまさらだからもう良いのだけど、入学が決まれば寮生活だし、なにより貴族連中も多い上にエリート揃いならまともな奴も多いだろう。自分の立場を鼻にかけたやつも多いとは思うが、そーいうのは予めピックアップしておいて関わらないか、弱みを握るか、潰すか、だな。


 ま、特に絡んでこない限りは放置だな。


 まだ入学も決まっていないのにそんなことを考えながら自分の番を待つ。



「あー、緊張してきた、ってお前ほんと暢気な奴だな、少しは緊張しろよ!」

 アルフに怒られた、そうは言われても正直合格したほうが良いな、程度であって絶対では無いからな。

 落ちたなら落ちたで実家の家業を発展させるのも楽しそうだし、なによりそっちの方が親孝行できる気もするしな。


「お前が緊張すること無いだろ、加護持ちが落ちるとか無い無い」

 加護持ち、という発言をしたとき周りの子供たちから一気に視線が集まった。

 好奇の目線もあったが殆どが恐怖の目だ。


「あ、悪いアルフ……」


「いいさ別に、もう慣れてるよ」


「そうか、じゃあ謝った分なんかで返せ」


「てめぇ、この野郎」

 笑いながら腕を首に絡ませ締めてくるが締まりきる前にするりと抜け出す。


「緊張は解れた様だな、お前なら大丈夫さ、頑張って来いよ」

 目をぱちくりして此方を見てくる、男に見つめられる趣味は無いのだが。


「わりぃな、っと、俺の番か、んじゃいってくる、ありがとな」

 同時にアルフの名前が呼ばれ部屋にはいっていく、アルフと一緒になるかと思ったがどうやら次のグループの様だ。









 アルフが部屋にはいってから直ぐに隣に座ってきた子供から声をかけられた。


「君、あの加護持ちと知り合いなのかい?」

 金髪に釣りあがった目、服装は高そうな装飾がされており、良いところのお坊ちゃんか貴族様って奴だろう。


「ん? 知り合いというか幼馴染だね、それが何か?」

 気に入らない野郎だな、なんか高圧的だし、つーか背も殆ど変わらないのに上から見ようと若干仰け反ってる、馬鹿なのかこいつ?


「そうか、よくあんな化け物と付き合えるね、下賎の民の考えはとても僕には理解できないね」

 馬鹿にしたように笑いながら言われた。よし、こいつ処刑リストにランクインだな、光栄に思え。


「そうかな? そうかもしれないですね、貴方のようなすばらしい高貴な身分の方には理解できないと思うよ、それはしょうがないさ住む世界が違うのですから。あぁ、大変申し訳ない高貴な貴方様のお名前を教えて頂けませんでしょうか、私などのような下賎の民に名を教えて頂ける様お願いする事がすでに失礼かとは思うのですが、名を知らぬままのほうが失礼かと思いまして」

 恭しく頭を下げてお願いする。


「ふむ、なに気にすることは無い、私は心が広いからね、優雅で強く、そして下賎の民を導くのが我らが貴族の使命なのでな、私の名はゼロール=ザンフル=アルバートンだ、良く覚えておきたまえ」

 ふふん、とこれ以上無いくらい高圧的に言ってきた、いやはや、本当にいるんだねこういう人。


「ゲロール=ザンパン=アルバカートン様ですね、ええ、良く覚えましたので、もしお互い合格出来ましたら是非お近づきになりたいですね」

 周りの子供たちが笑いを堪えている、中には噴出してゲロール君に睨まれている子もいるようだ。


「き、きさま! 侮辱しているのかこの私を! 分かっているのかアルバートン家を敵に回したらどうなるか分かっているのか!」

 顔を真っ赤にして怒鳴りだす貴族様、優雅はどこにいったんだ優雅は。


「これは大変申し訳御座いません、侮辱する等とてもとても、私の耳に聞こえた貴方様の名前をそのまま述べただけだったのですがどうやら御気に触ったようで。大変申し訳御座いませんでした」

 恭しく頭を下げながら魔術言語を高速で呟く、ゲロール君に聞こえないレベルの声で呟く。







【Vent Un gros morceau Je l'ai frappé】《僕たる風よ、固まりて放て》







「貴様……! いくら心の広い私と言えど二度目はないかぼふぁっ……!」

 手加減を加えた簡単な魔術言語(スオウ基準)を馬鹿みたいに正面を向いてるゲロールもといゲロ君の腹に空気の塊を高速で叩きつけ、あざが残らない程度のダメージの後、霧散させた。



 下から抉る様に叩きつけられた哀れなゼロール=ザンフル=アルバートンは、胃をものの見事にシェイクされ、口から朝と昼に食べたであろう食事をぶちまけた。






名実供にゲロール君になれた、おめでとう。






「だ、だいじょうぶですか貴族様! 誰か至急水魔術の使い手か、もしくは横になれる場所を! ああ、そこの先生、この貴族様が急に倒れてしまいまして、どこか治療できるような場所はありませんでしょうか……?」

 涙をうっすらと溜めながら先生と思われる人に向かって懸命に訴える。

 先生だったのであろう、あわててこちらに走ってきた後ゼロールもといゲロール君の容態を見る。


「これは完全に意識を失ってるな、先ほど怒鳴り声が聞こえていたようだがそれと関係しているのかね?」


「は、はい、申し訳ありません。私がどうやらお気に触ることを言ってしまった様で、誠心誠意を持って謝っていたのですがお怒りが収まらない様子でした。どうすればお許し頂けるかと考えていたところ急に体調を崩してお食事を戻されたような状態でして、私も何がなんだか……、あまりの興奮状態だったのが関係しているのかもしれません。もともと試験前で極度の緊張状態にもありましたからその辺も関係があるのかもしれません……」

 いけしゃぁしゃぁとなにを言う! と周りの子供たちが目で訴えてくるが厄介事に巻き込まれたくないのか誰も何も言ってこない。さすが優等生だ、事なかれ主義だね。


「そうか、まぁ、極度の緊張状態から吐き気を催す子供は毎年いるからな、後の事は私がやるので君は自分の試験に集中しなさい。一度落ちてしまうとまた1年後になってしまうからね。頑張るんだよ」

 ずいぶんお人よしな先生だな、大丈夫かこの学院、内心そう思いながら少し考えなしの上に事前準備もしないでことに当たったことを反省した。


 いやいや、あぶなかったな一歩間違えたら全部おじゃんになる所だった。

 もしかしたらその辺全て理解したうえで言ってるかも知れんなこの先生も、現状都合が良いから特に何も言わないでおこう。


 お姫様抱っこ状態で運ばれていくゲ君(もはや原型も無い)、達者でな。


「皆さんお騒がせしまして大変申し訳御座いませんでした。では皆で力を合わせて受験頑張りましょうね。」

 惚れ惚れするような笑顔で待合にいた子供たちに語りかけたスオウ=フォールス、なんか間違ってるぞスオウ、大丈夫かスオウ。

 



 こいつはやべぇ、かかわったらやべぇ、待合室にいた子供たちの総意であった。













・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・














「ふー、終わったぞスオウ、次はお前だってよー、ってあれ、なんか臭くないかこの部屋、というか何でこんな静かなんだ?」

 顔を顰めながら聞いてくる、どうやら無事終わったようだ。悲観して無い感じからなかなか良い反応だったのかもしれん。


「あぁ、先ほど緊張のせいか急に体調を崩した子が居てね、ちょっと、まぁここだけの話戻しちゃったんだよね、よっぽど緊張してたんだろうねぇ……」

 遠い目をして言う、周りの子供達からは、どの口が言う! どの口が! と言いたそうだ。


「そうか、それは大変だったな、俺も緊張してた口だからな、いや、そういう意味ではスオウに助けられたぜ、ありがとうな」


「気にするな、帰りの馬車賃とか出してくれなくても良いぞほんと」

 はっはっはと笑いながら言ってやる。


「てめぇん家のが金持ちだろうがっ、俺にたかるな!」

 急に興奮しだした、大丈夫か、試験が終わって開放的になったのか。


「いや、だから出してくれなくても良いって言ってるじゃないか」

 何言ってるんだこいつはといった目で見てやる。

 将来が心配だ、言語の理解ができてないとは、いや大丈夫だ、まだ7歳なんだから俺が付いてるぞ。


「ぐぐぐぐ……、てめぇ……!」

 手の平が白くなるほど両手を握り締めて睨んでくる。


「おっと、んじゃ行って来るわ」

 手をひらひらと振りながら試験場の教室に向かう。


「さっさと行って来い!」

 後ろから心強い親友の声が聞こえた。

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