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Moon phase  作者: 檸檬
次の名はスオウ
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phase-8 【学院の場所】

 さて、どんな感じになったかな。


 そろそろ8時間が経つ頃だ、まずは湯煎で試していた容器を開ける。

 鍋にあけ、煮詰める、3個ほど鍋を並べ釜の中の物も入れてみて同時に煮詰める。


 どうやら無事水あめになりそうだ、アミラーゼが含まれていることがこれで確定した。


 煮詰めあがったら水あめの完成なのだが、湯銭で行った物が一番出来が良い、が手間がかかりすぎる。

 大量に作れば問題ないのかもしれないが保温性の高い金属製の商品をつくるべきか……。


 もしくは土鍋の様な保温性の高い陶器を毛布などでくるむのも良いかもしれないな。

 この辺はルナや母上に任せてしまおう、俺が考えるよりこの時代の物を使って適切な対応をしてくれるだろう。


 また、大根の匂いが殆ど無かった。これはもともとの材料に匂いが薄かったことが原因だろう。

 余計な匂いや味が入らなければ餡子としての味もある程度予想できる。


「これがスオウ様がお作りになりたかった物ですか?若干の光沢がありますね。食べられるのですか?」

 始めてみるのだろう、珍しいものを見るような目で此方に聞いてくる。


「いや、これはあくまで最終的に作りたかったものを作るための材料の一つに過ぎないよ、でもこれはこれで美味しいんだ、素朴な味というか、なんというか、食べてみるかい?」


「よろしければ是非に」

 スプーンで水あめをすくい口に含む。


「これはまた、粘度が高くて……、あ、でも甘みがありますね、ケーキ等で使われる砂糖よりは強くはありませんが、これは砂糖の様に粉状にならないのですか?」


「うん、配列が違うからね、粉状にはならないんだよ。そこが特徴でもあるのだけど、ちなみにこれにアンサイモを揚げた後、絡めると美味しいと思うよ」

 はいれつ? と首を傾げられる。良く分からない発言はいつもの事なのでそのままスルー。


「でしたら専用の容器が必要になりますね、あまり日持ちもしなそうですし、探しておきます。アンサイモですか、でしたら明日の朝はそれにしてみましょう。材料もありますし今晩いくつか試してみますので、こちら、みずあめ? でしたか、使っても宜しいですか?」


「うん、構わないよ思っていたより沢山出来たからね、俺が作りたい物の分は今から使っちゃうけど十分あまると思うからね」

 そう答え、本来の目的だった餡子の作成にかかる。


 既に小豆は茹で終え砂糖を加え、混ざり終わった後である。


「ここに、水あめと塩をちょちょい、と」

 後はかき混ぜるだけだ。直ぐに光沢が出てきて美味しそうな匂いが立ち込める。


「こちらは良い匂いがしますね。見た目はちょっとあれですが……、焦げているわけではないのですよね?」


「もちろんだよ、後30分ほど寝かしたら味が落ち着くから食べてみよう、きっとびっくりするよ」

 さて、と一番簡単なのはおはぎかな、しかし米が主流で無い上、もち米も無いしな。

 パンに乗せても美味しいとは思うが……。


 ついでにマシュマロもつくっておくか。ゼラチンはこの世界に既にあるようだし。

 餡子、マシュマロ、水アメで3個だな、全部成功するかはわからんが、まったく売れないってことは無いだろう。

 街の特産物とかになるかもしれないな。そしたらフォールス印とか付くのだろうか、さすがにそれは止めてもらうように父上に言っておこう……。













・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・













 結果からするとマシュマロ、水あめは好評で母上もいくつかの料理方法を検討、マナも朝のアンサイモを作った後いろいろ他の食材でも試行錯誤しているようだ。

 マシュマロはすでに販売を検討、元となる水あめの作成方法確立が優先のようだが、母上の事だ直ぐに形にするだろう。


 何人かの助手と雇った料理人と供に調理場でいろいろ話し合っている。

 販売ルートや販促方法などは父上がやるようだ、あとは任せてしまって良いだろう。


 造船業が最近おざなりになってる気がするのは気のせいだろうかと父上が愚痴っていたが気にしない。

 最近は塩田の売り上げのほうが大きく、今回の菓子類もそこそこ見込めるだろう事から造船に割く時間が減っているのは否めない。


 優秀な秘書が何人もいるようだし、従業員自体も大分増やしたようだから問題は起きて居ないようだが、父上的には船に携わっていたい様でなんとも言えない複雑な気分のようだ。


 菓子部門がこのたび出来る場合(むしろほぼ確定)母上とルナにすべて丸投げする予定だそうだ。

 その時はチョコレートを教えるのも良いかもしれないな、カカオを見つけるのが先だけど。



「料理に関してのチートはこんな所だろうか、おそらくすぐにいろいろな料理やお菓子が出来るだろう。餡子が受け入れられなかったのは残念だが一部の菓子職人が興味を示しているし和菓子なんかも出来てくるかもしれないな」

 その時は真っ先に買いに行かないとならないな、お茶、特に緑茶も探しておかなくては。

 まだ見ぬ和菓子に期待を寄せつつ、今日のノルマの魔術行使練習を始めた。















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・















 入学まであと半年、試験まで後一月を切った、秋も終わりに近づき、少し肌寒くなってきた。


 さて、どうしよう未だ新しい魔術が出来ない、こまった。

 昼間ハンモックの上でうんうん唸っていると、アルフが尋ねて来たので相談してみた。


「そりゃそうだろうが、そんな簡単に魔術開発なんて出来るわけ無いだろ、どこぞのお偉いさんが何人も集まって作り出すものらしいぜ、それが俺たちみたいなガキに出来たらとんでもねーよ、だいたい前使ったって言ってた火炎風槍撃だって俺たちの年齢で使えるの可笑しいから」

 呆れた目で見ながら言ってくる。お前のチート具合を見てるとその程度できてもなんら可笑しく無い気がするのは気のせいだったか、残念。


「となると目立たない程度に適当な魔術行使にしとくのが無難か、なんかつまらんなー」

 つまらん、ほんとつまらん。まぁ、目立たないに越したことは無いのだけどつまらん。


「つまらんってお前……、俺なんか本当に強化魔術だけで通るのか不安でしょうがないよ、もし落ちたら親父になんていわれるか……」


「ま、強化魔術以外使えないからなお前、加護持ちにも思わぬ欠点があったな」

 そう、軍神の加護のお陰というか、加護のせいで強力なマナ放出が出来ないのだ、生活魔術はもちろん下位魔術程度なら使えるのだがそれ以上となるとさっぱりなのである。

 軍神の加護により肉体強化系魔術の適正は神がかっているのだがそれ以外はまったく、といった感じだ。


「普通軍神つったら両方仕えても可笑しくないと思うんだがなぁ、剣神とかならまだしもな」

 そう呟くアルフ、冗談じゃない、それ以上強くなるとかどんだけだ


「そうかもしれんが、アルフが魔術も適正があったらお前一人で国が滅ぶ気がするよ……」

 胡乱な目をしてアルフを見る。滅ぼすならせめて俺が見てないところでやってくれ。

 そういえば昨日そのチート馬鹿力で壊したスイさん家直したの俺だぞ、落とし穴の分とか言ってたが、他にもいろいろ考えると、どう考えても俺の方が負担してる気がする。


「さすがにそれは無いだろ……、なにより加護持ちは俺だけじゃないだろうしな」

 恨みがましい目を感じ取ったか目をそらしながら言う。


「これ以上チートがいるとか俺は認めない、認めないぞ!」

 冗談じゃない、これ以上面倒ごとに巻き込まれてたまるか、第三者的立場で物事を見るのが好きなんだよ俺は。


「いやぁ、そうは言っても姫さんがたぶん間違い無いと思うぞ」


「くっ……、かかわらなければ問題ない!」


「まぁ、いいけど……」

 どこか諦めた声が聞こえる。


「しゃーない、魔術試験は適当なの使っとくか、【Feu Un pilier】《火柱》あたりで十分だろ」

 とりあえず短縮言語で発動すれば目立たないだろうし、なにより苦手な火だからな、大丈夫だろう。

 後は現場で他の人間の様子を見ながら変更すれば良いだろう。


「それも十分中級魔術だったとおもったけど、まぁいいや、お前の事だうまく調節するだろ」

 もはや諦めたのかどうでもよさ気に答えられた。











・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・














 カルディナ魔術学院は湖と森の国スイル国に存在する。

 五国内で2番目に大きい魔術学院ではあるが、けして実力や学校としての位が低いわけではない。

 あくまで学校の建物や、敷地で見た場合の大きさが2番目であり、実力だけで見ると五国一とも言われている。


 1番大きいとされているフォンド魔術学院はコンフェデルス連盟に存在し、在籍者数も五国一を誇る。

 その分学生の差も多々有り、優秀な魔術師も存在しているが、平均が下がってしまっている。


 原因としてはカルディナ魔術学院には帝国アールフォードの魔術師の卵が多く入学する。軍事国家の彼らの力に対する意識は高く、また学院も軍隊ほどではないが厳しい規律と勉学を行っている為、自然と全体のレベルが上がるのだ。

 反対にフォンド魔術学院は距離的なこと、また、帝国と連盟の仲がさほど良くない事も有り、帝国の魔術師は存在せず、長い平和で若干緩んでいること、商業国家のためあまり魔術に力を入れて居ない事があげられる。


 ではなぜ五国一の大きさで作ったのかというと建築業を司るベルフェモッド家の見栄であろう。

 我が国はこれだけの技術があるのだ、というただの自慢だ。


 また、入学試験もカルディナ魔術学院より易しめであるのも関係があると思われる。


 なんにせよ、最高峰の魔術を習うのであればカルディナに行くべきである。


「そんな最高峰になんで行ける事になったんかねぇ、とくに目立った魔術は見せた覚えは無いのだが。」

 いまさらながらの疑問を呟いてみる。


「あぁ、親父の推薦だったらしいぞ、まぁ、俺の加護持ちは国内では割と有名だし、どっちかってと俺がメインでお前が付いてきたって感じだな」

 なるほどな、正確には俺の親父が持ちかけてアルフの親父さんが乗っかったって感じだろうな。


「おーい、坊主ども、そろそろカルディナにつくぜ、降りる準備をしときな」

 御者の髭顔おっちゃんが馬車の幌に向かって声を上げる。


 幌から顔を出すとまさに時計台、フランスの時計台に瓜二つの門が遠目に見えた。

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