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もじゃもじゃ星人

「ほれ、うまいぞ」

「けけけけけけっこうです」



 ついてこい、と連れてこられたのは、木々の間のわずかなスペースに建てられたテント。

 だってついてこないとなにされるかわかんないと思ったんだもん!!

 手に巨大な蛮刀だぜ?あれ振り下ろされたら一瞬であの世行き。

 しかも血まみれ。

 なんか殺してきた帰りなのは間違いない。

 そう思ったら、やっぱりそれは獣の血だったらしい。

 しかも巨大イノシシ。



「べっぴんさんはこんなもん食わないのかなあ」

 いや、それ生だし。

 腹壊しそうだ。

「食わないんなら…」

「お、おおおお俺男ですからねっっ」

 犯されるのかと思って思わず自分でバラした。

 こんな男に押し倒されたら、それこそ一生もののトラウマだ。



 ひげもじゃもじゃ。髪もじゃもじゃ。どっちもいつ切ったんだか!!

 胸毛ももじゃもじゃ…これは気持ち悪いです。

 お前はもじゃもじゃ星人かってぐらいもじゃもじゃだ。

 われながら意味不明。

 そのうえ、そのもじゃもじゃは血まみれで絡まりあってるのだ。

 うわ、生肉食ったし!!

 浅黒い肌はあきらかに日焼けだし、もじゃもじゃの間から見える顔はかなり人相が悪い。

 山賊だったらどうなんだ。男なら用済みって殺されるのか。でも、いざって時にばれたらそれこそその場でこの世とお別れだよな。

 お父様、お母様、意外と早く予想外の場所であなたたちの後を追うことになりそうです。

 親父、お袋、結局おれ長生きできない体質だったんだな。

 天国のじいちゃん、待っててね。




「べっぴんさん、村まで行くんだろう?送ってあげよう」

「へ?」




 村まで、送る??

「この島には一箇所しか村はないから、そこのお客さんだろ?」

「た、たぶん…」

「日が暮れる前に送っていってやんないとな」

 じゃあなんでここに寄ったんだ。さっき差し出した肉はいったい、と思っていたら、山賊はよいせっとばかりに解体したイノシシの残り半分を担いで歩き出した。

「ついといで、べっぴんさん」

「ええと…」

「どした?」

「あの、俺は…食べられるんじゃ…」

「は?おらがべっぴんさんを?人間はまずいから食わん」

「・・・・・・・・・・・・・まずいから!?」

 やっぱり食べたことあるんじゃないか!!

「そりゃおらは肉食だからな。食うなら人間でも食うさ。だけど今は食い物があるし、べっぴんさん、どこもかしこも肉なくてまずそうだからな」

「は、はあ…」

「ほれ、ついてこないとおいてっちまうぞ」

 腹減ったら食うぞ、と付け加えられて、俺は慌ててその後をついていくことにした。

 …村でも人間食ってたらどうしよう…。

「べっぴんさんは誰に会いにきたんだべ」

「はぁ…テホン、という方にお会いしに…」

「テホン!?テホンってテホンじーさんかい?」

 あ、やっぱり爺さんっていう年なんだね…。

「テホンじーさんかぁ…そりゃぁ…」

「・・・・・・・・・・・・まさか、お亡くなりになってるとか」

「いやいや、死んではいないよ。でもねえ…見ればわかるだろ」

 いやあの、頼むからさ…頼むから、少しは両親死んだ痛みに浸らせてくれよ!なんだってこんなに次から次へと起こるんだよ!!両親殺されて、自分も生きるか死ぬかで、がんばって逃げ出してきたら…きたら、わけのわからないちぐはぐ島にもじゃもじゃ男に頼りにしてきた爺さんはなんか曰くありげだし!

 俺はまだ12歳なんだって!!

 これが15とか20とかだったら俺だって金を元手にどっか違う国まで逃げ出して商売でも始めたり、なんか稼ぐ手段みつけるけどな!12歳のいたいけな美少年じゃ働くとこもないんだよ!

「ほれ、ついたよ」

 めまぐるしく動く頭と同じように足を動かしていたら、いつしか村とやらについていたらしい。



 村を染め上げる夕日。

 はしゃぐ子どもたちの声。

 ごはんよ、と呼びかける母親の声と、帰宅を告げる父親の声。

 あたりには食欲を刺激する匂いがたちこめ、食事の支度をする煙が赤く染まった空に上っていく…。



 昔懐かしい曲が聞こえてきそうな牧歌的な光景だった。



「おーい」

「あ、ロボさん!!」

「ロボおじちゃんだよー!」

 子どもたちの上げた声にわらわらと主婦であろう女性たちが家から出てきた。

「あらあら、今日はでっかいイノシシだねえ。もう料理しちまったよ」

「すまねえ、今日はずいぶん時間かかっちまってなー」

「みんなでもらっとくよ。いつもすまないねえ」

「今日は分けて塩ふっとくとしようかね」

「あたしは煮ちまって明日まで寝かせとくよ」

「ロボさんがすぐ水に浸してくれてるから明日までは持つだろうよ」

 にぎやかな主婦に囲まれているイノシシ肉をぼんやりと見ていると、もじゃ男につつかれた。

「誰か、このべっぴんさんをテホンじーさんのとこにつれてってやってくんないかい?」

「テホンじーさんに?なんでまた」

「死んだ親父さんがテホンじーさんとこに行けといったんだとー」

「あれま、かわいそーに…」

「おじょうちゃん、他に親類はないのかい?」

 それはどういう意味だろう。

 もじゃ男にもいわれたが、

「テホンじーさん、すっかりボケちゃってねえ…」

 …なんだとう!?







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