紙漉き所完成、温室構想
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冬の42日。紙漉き所が完成した。結局、紙を漉く場所が4か所になり、生産効率は上がることになる。……その分、ライ麦も使う事になるんだけどな。食べる為ではなく、紙の繋ぎにするためだ。普通は植物の液体を使うのが一般的だと思う。何の植物だったかは覚えてないが、粘り気のある液体を出す何かしらの植物があったと思うんだよな。アロエじゃないけど、あんな感じのドロドロとした液体が出てくるんだよ。そんなのがあったと思うんだよな。今回はそんなものは無いので、麦を炊いて、ドロドロにしたものを、繋ぎにする。多分大丈夫だとは思うんだけどな。
そんな訳で、水車小屋で木の端材をミキサーでドロドロの液体になるまでかき混ぜた。本来の作り方は、また別の方法ではあるんだけど、今回は時短するんだよ。結局は、セルロースを繊維状にすれば良いんだから、ミキサーでかき混ぜるのでいいのである。まあ、時間はかかるけどな。石鹸を作るのと同じ場所で作るから、色々と時間の調節は大変だとは思うが、石鹸作りは昼からやっても、夜には終わるからな。朝のうちに、ミキサーでどんどんと木材をドロドロの液体にしていく。勿論だけど、水は入れているからな? 流石に、水なしでドロドロにするには無理があるんだよ。
それを木で作った所に流し込んで、木枠で作ったあれで紙を漉いていく訳だ。手慣れてくると、直ぐにでもセルロースが貯まってくるのが解るんだけど、素人がやると、時間がかかる。それはそうだ。やったことが無いんだから。誰もやったことがないので、それはそれは時間がかかった。推定、厚紙くらいの厚さにするまでに、2時間くらいはかかった。それを木枠から外して、板に張り付ける。その上から更に板を載せてプレスする。一気に水分を抜いていくのだ。まあ、これをしても、天日干しはしないといけないんだけどな。そこまでやって、漸く紙が完成する。……まあ、一番初めに作ったものについては、使えないと思っておいた方が良い。後でまたミキサーに突っ込んで、セルロースの状態にまで戻してやれば、再利用は可能である。それが和紙の良い所でもあるんだよ。再利用が可能なんだ。工業で作ろうと思えば、別のものが必要になってくる訳なんだけど、今回は手漉きするからな。
こんな感じで、何とか紙を作る仕事が始まった。まあ、慣れるまでは試行錯誤を繰り返してもらわないといけないとは思う。まともな紙になるまでには、暫くの時間が必要になるだろう。最初は、紙にもならない何かが出来上がると思うからな。それを何度も何度も繰り返して、まともな紙にしてもらわないといけない。俺たちが使うに足りる性能にまでしてもらわないといけない。コピー用紙みたいな品質は、土台無理な話。和紙で良いんだ。昔ながらの和紙で結構なのである。それを使って仕事をしてみて、良ければ、商品として売り出せばいい。その時までにはクオリティが上がっていると思うからな。そこは頑張ってほしい所ではある。
そんな訳で、紙漉き所が動き出した。紙が出来てくるのは、5日後か6日後か。初めは上手くいく訳がない。そこから試行錯誤を繰り返してもらわないといけないんだよ。紙になるまでには時間がかかるだろう。まあ、それで良いんだよな。厳密に言えば、こんなものは和紙としては認められないんだろうが、それでいいのだ。使えれば問題なしである。別に特許がどうのこうのという話ではないからな。誰でも出来る作り方で、作ればいいだけの話なんだよ。難しい事は考えない。ただ、紙として使えれば、それで問題なしなんだよ。
後は、慣れてきたら薄く仕上げてくれると助かる。出来れば、障子のように、日光を通してくれると助かるんだよ。厚紙レベルまで分厚くすると、頑丈にはなるけど、日光は通さないだろうしな。日光は通してくれないと駄目なのだ。そうじゃないと、ビニールハウスは作れないからな。……ビニールが駄目なら、紙で作れば良いじゃない。そんな感じでハウス栽培をやろうと思っているんだよ。日光さえ通してくれれば問題はないはずだ。そもそも森の中、日光が少ない状態でも、ベリーは実を付けていたのだ。障子紙レベルに日光が遮られても、十分に育ってくれるはずである。
雨降ったらどうするんだよって問題はあるだろう。紙だしな。濡れたら駄目に決まっている。溶けて穴が空くだろう。そんな状態で大丈夫なのかと言えば、大丈夫ではない。それじゃあ温室にならないからな。じゃあ、穴が空かないようにすればいい。撥水性を持たせればいいだけの話だ。簡単だろう? 水を弾けばいいのである。
何か薬品でも入れるのかって話になるかもしれない。そんな事はしない。薬品なんて入れたって、紙は紙だ。水に溶けない紙を作る方が難しい。だから、撥水性を持たせれば良いんだよ。ワックスを使って、紙に水への耐性を持たせる。そもそも雨粒は、空気摩擦によって、一定の速度以上にはならない。重くないし、早さもそれ程でもなければ、ワックスさえ塗っておけば、紙を貫通するだけの威力にはならない。
後はワックスを準備すればいいだけだ。ワックスなんて何処にあるんだよというかもしれないが、既にあるだろう? 最初は猪の脂を使おうかと思ったんだけど、それ以上に良いワックスがあるんだ。今、一生懸命に育てているだろう? 蜜蜂を。蜂蜜を絞る時に、どうしても出てきてしまうものがある。それが蜜蝋だ。それを紙に薄く塗れば、日光を辛うじて通す、撥水性の紙が出来上がる。……強風には圧倒的に弱いんだが、そもそもこのグロドツギの森の中は、風が殆ど吹かない。であれば、強風被害は考える必要がない。考えるのは雨だけでいい。
和紙はある程度の耐久性がある。今回は繊維をもの凄く細かいところまで分解できるわけではないからな。ある程度の斑は出来る。それ故に、若干の耐久性があるんだよ。それを蜜蝋でコーティングする。そうすれば、何とか日光は通しつつ、中を暖かい空間に保つことが出来る筈。
因みに、熱源は魔道具で何とかしようと思っている。本来であれば、船の運行に必要な魔石を、こっちで用意しようと思っていたんだが、必要なくなったので、魔石の使いどころがない訳だ。それなら熱源に利用しようという訳なんだよ。……流石に、密閉した空間で、火を付けるほど、俺は馬鹿ではないつもりだ。そんな所で火を使ったら、一酸化炭素中毒で死ねる。しかも、暑くなり過ぎる。調整できる程度で良いんだ。だから、魔道具を使う。魔道具なら、火を使わない熱源としての効果が期待できるはずだ。……出来なければ、何とかして、温風を送り込む装置を作らないといけない訳なんだが。
計画はまだ未定だ。そもそもこの冬には間に合わない。本格的に始動するのは、来年の秋ごろだろうな。そもそもまだ蜜蝋が手に入っていないのである。先走って紙だけでやるのは、流石にコストに合わない気がするんだよな。雨が降る度に、温室が壊れる事になるからな。
これで完璧だ、とは流石に言えないんだが。出来れば、板ガラスで何とかしたい所ではあるんだよな。それなら壊れるって心配はしなくても良いんだし。紙だと不安でしかない。ただまあ、出来るとは思うぞ。一冬乗り越えられれば良いんだ。年中使う訳ではない。だから、技術的に可能なレベルまで落とすと、この辺が落としどころだとは思うんだよな。現実的ではない? それはそう。だって、誰もやったことがないんだし。でも、出来るかもしれない。なら、挑戦した方が利益になるじゃないか。




