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頑張る樵

OFUSE始めました。

https://ofuse.me/rukea


ついでにブログも始めました。好きなことをつらつらと書いていく予定。

https://rukeanote.hatenablog.com/


さらについでにTwitterも始めました。変なこともつぶやく可能性があります。関係ないことも沢山つぶやきます。

https://twitter.com/rukeanote

 秋の32日。今は東側の堤防を作っている。……移民たちには悪いが、万が一洪水が起きた時は、被害を受けて貰う事になるんだよ。こちら側の堤防が出来て、西側にも堤防が出来て、橋がかかったら、東側の堤防も、もう一度工事をする。そうして、洪水対策をする事になっている。被害を受けて貰う事になる訳なんだけど、そこはどうしてもマンパワーが足りないからな。何とか受け入れてもらうしかない。まあ、洪水が起きなければ問題は無いんだけどな。


 一応なんだけど、この河川は何度も何度も分かれては合流してと言う事を繰り返しているらしい。だから、こっち側は洪水が起きにくい場所なんだとは言われている。一番洪水が怖いのが、ドルト村で、次がフォーク村らしいのだ。アマシエ村はその次くらいなんだという。一番洪水が少ないのが、今の領都であるアタライ村だと言う事なんだ。


「皆頑張っているね。樵も慣れてきたかな?」


「これはこれは弟様。ですが、この辺は危険ですよ? こんな所まで来てもいいんですか?」


「大丈夫だよ。魔物も殆ど居ないしね。この辺は狩りをしっかりとしてもらっているから、安全ではあるはずだよ。植物型の魔物が居ても、樵の装備があれば、何とかなるでしょ? だったら心配ないかな。まあ、見回りは必須なんだよね。偶には皆の働きを見ないと。それでコンラート兄さんに報告して、色々と内政の事を話し合わないといけないからね」


「ならいいんですが……。こう、貴族の方々がこうやって来るのは、本当にいいんですかね? 俺らの所に来ても良いものなんですか?」


「なんか雲の上の存在って感じがあるんですけど……」


「まあ、そう思うのも仕方がないんだけど、ここは小さな領地だからね。皆で頑張らないといけないのさ。皆が頑張らないと、生活は良くならない。それは俺たちも同じだ。皆の働きがあるから、他の村よりも贅沢な暮らしが出来ている。他の村では、肉なんて食べられないからね。狩りをしてくれる人たちが居ないと、肉も食べられないんだ。そのことでは、狩りをしてくれている人たちにも感謝をしているし、こうやって樵をやってくれていることで、領地が増えていくんだから、こう言う事でも感謝をしている訳なんだよ」


「そう、なんですかね? でも、やらないと生活が出来ないので、やらざるを得ないんですけど」


「そうそう。皆が色々とやっているのに、俺たちがサボる訳にもいかないからさ。俺たちに出来ることをやるしかない訳で」


「樵なんて誰でも出来るからなあ……。俺たちも別の仕事が出来る様なら良かったんだろうけど」


「そんな事はないぞ。樵の仕事も立派な仕事だ。単純に木を伐るだけと思っているかもしれないが、それは大きな間違いだ。木を伐ることによって、畑の面積を増やし、住宅の材料を確保する。5年後には皆が住宅に住めるようにするんだ。その為に今、一生懸命樵をしてもらっているんだ。それに、誰でも出来る訳ではないんだよ。俺なんて樵には成れないからな。身長がまだまだ低すぎる。身体も小さい。斧も振れないんだ。こんな体では、樵なんて当然無理だからな」


「いや、そんな事は……。無いとは言い切れませんか。特にハーフリングなんかも同じですよね。エラメラなんかも同じですよね。そうか、身長が低いと、樵には成れないのか」


「まあ、斧よりも小さいと無理だよな。それは失念してた。俺たちも体格は良い方だもんな。痩せぎすなのはそうなんだけど」


「でも、今は食べるものは困ってないしな。俺もこれでも大分太ったんだぜ? 太ることなんて無かったからな。今じゃあ太り過ぎないか心配しているくらいだし」


「皆が食べ物を食べられるようにしてくれているのは、畑をしてくれている女性や子供のお陰だ。肉が食べられるのは狩人のお陰だ。でも、そんな人たちも、樵には成れないかもしれないんだ。何かが足りなくて、樵になれない事がある。そんな人たちの為にも、君たちが代わりに樵をするんだ。そういう人たちにも住宅に住んでもらわないといけないからな。その為には、土地を切り開くことが必要だし、木材を入手してもらわないといけない。樵は立派な仕事だ。誰でも出来る訳じゃない。出来るものを選抜しているんだ。出来ない人は他の仕事に付いている。だから、自分たちを卑下するんじゃない。やる気を持って、自分たちにしか出来ない事だという思いで仕事をしてくれればいい」


 樵なんて誰でも出来るとは思わないでほしいな。最低限の力は必要になってくるんだし、身長も必要になってくる。結局は振り降ろしと遠心力を上手く使って木を伐るんだ。単純に力が強いだけでは、樵には成れない。単純に力が強くても、雑であれば、狩人の方があっているんだよ。だから、そういう人材については、狩人になって貰っている。樵は、その余りと思われているのかもしれないが、割と適性は見ているんだよ。


 樵に成れない人たちの分も頑張って貰わないといけない。樵しか駄目だって人も居るだろう。けど、樵には樵にしか出来ない仕事があるんだ。それは誇りを持ってもいいんだよ。特別な才能は必要ないかもしれない。けど、誰でも出来るとは思わないで欲しいんだよな。


 まあ、意識の切り替えは難しいかもしれないが。周りの人の方が特別に見えることが多くある。自分のやっていることよりも、他人のやっていることの方が素晴らしいと評価してしまう事もままあるんだよ。それは勘違いだ。皆が素晴らしい仕事をやっているんだよ。だからといって、威張り散らして欲しい訳ではない。ただ、卑屈にはならないでほしい。それだけ価値ある仕事をしているんだから。


「皆が、移民たちが本当にこの村の住民になるために、力を貸してほしい。やはり家が無ければ、平等とは言えない。家を作るためにも、頑張って木を伐って欲しい。その木が最終的には皆の住宅になるんだから。特別な仕事と思ってもらう必要はないが、誰でも出来る仕事だとは思って欲しくはない。皆が皆、出来ることをやっているんだ。最終的には、皆がこの村の住民になってくれるように、今は頑張ってほしい」


「そこまで言われたら、やるしかない。俺にだって出来ることがあるんだってよく解ったからな」


「だな。皆の家を建てるために、俺たちが出来ることをしないといけない訳だ」


「5年と言わず、3年で用意してやろうぜ。俺たちが頑張れば出来る筈だ」


「まあ、俺たちだけじゃあ駄目だろうけどな。樵が全員、力を合わせてやっていかないと」


「そうだな。弟様、俺たち頑張ります。きっといい家を作ってみせますよ」


「期待している。それが皆の願いになるんだ。まずはそこを目標に頑張ってみて欲しい。挫けそうなときは、誰かと相談してもいい。それに、この冬には酒も来る。皆には飲んでもらうつもりだ。移民と住民の差は、家があるかどうかだけだ。酒にはそんなものは関係ないだろう? 皆と話をしてみる事だ。案外、同じような思いを持っているかもしれないぞ」


 次の商人が来て、船着き場の確認をしてもらったら、本格的に交易が始まるんだ。そうしたら、酒が大量にやってくるはずだ。その時にでも聞いてみるといい。150年前にも同じことをやった連中がゴロゴロと居るんだから。


 結局は、自分たちがやっていることは、過去の人たちもやっている事なんだよ。自分たちの住居を切り開くことは、この土地を開拓した人たちもやったことなんだ。その話を聞いてみるといい。なんだかんだと同じような事を思って、同じような経験をしているからな。

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