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その後も食事をしながら、色々と話をさせて貰った。主にコンラートが。俺が口を挟んだことはないし、カタリーナも口を挟むことは無かった。あくまでもここの決定権者はコンラートだと言う事になっている。まあ、交渉の時は口を挟むかもしれないが。夕食会ではコンラートがメインになっていたんだから当然の話ではあるんだけどな。
そして、夏の27日。朝から豪勢な食事を取ってから、商人との交渉に入った。ここからが本番である。
「さて、本来であれば、小麦がどの程度で、塩がどの程度必要なのかを話し、村の人たちが買ってくれる訳なのですが、どうも勝手が変わったようで。何処までの事をやったのかは解りませんが、村人の買う塩もこちらに卸せば良いのですよね?」
「そうなりますね。村人からは税収を採らない代わりに、労働力を出してもらう形に変えました。これで、貧富の差も避けられる。……まあ、こんな小さな村だから出来る事ではありますが。普通の町では、誰も納得しないでしょう」
「なるほど。まあ、当然の話でしょうな。出た利益を全て領主が持っていくとなれば、暴動が起きます。我々商人としても、それでは困った事になってしまいます」
「でしょうね。ですので、この村でしか出来ないとは思うのです。これ以上大きな組織、町になると、貧富の差を覚悟の上で、自由にやって貰った方がいいでしょう。ですが、こう言った村では、言ってしまえば、運命共同体になるのです。ですから、ある程度の権力は通用するという訳ですね」
「確かに。このような村では、どうしても仕事で格差が出てしまう。それは望むところではない。出来る限り多くの人々に暮らしてもらう必要があると。確かに、そういう手法も有りだとは思いますね。まあ、それでは商人としては活動が出来ない訳ですが」
「でしょうね。ですから、この村に商人を作ることは出来ません。外部の商人であるレイミール商会が頼りになります。ですので、ある程度の品を買い取っていただければなと思います」
「なるほど。それの1つがジャムと。そう言う事ですか」
「そう言う事ですね。ジャムは、この森の特性を考えれば、一番初めに取り掛かっても良いものでもあります。そうでしょう? グロドツギの森は、他のどんな場所よりも、植物が育ちやすい。それは何も小麦だけの話ではありません。ベリー類も同じ話です。季節を無視して実がなり、生えている。それを加工品にするくらいは、こちらでも出来ますので」
「確かに。あることが解っているのであれば、最初に取り掛かるべきものではあるでしょうね。しかし、ジャムを保存するには、瓶が必要になってきます。その辺りはどのようにして解決するつもりですか? 我々に空瓶を届けろと、そう言う事でしょうか?」
「流石に空瓶をとなれば、そちらの利益が少ないでしょう? ですので、代わりと言ってはなんですが、他の物を詰めて貰えればなと思います」
「ほう、他の物とは?」
「お酒です。普通はお酒を入れる瓶はもっと違うものになるんでしょうが、空瓶を運搬するよりは余程良いとは思うのですが?」
「なるほど。お酒ですか。それならばこちらも利益のある話。運ばせてもらいましょう。ですが、今度は別の所が問題になってくるでしょう?」
「そうなりますね。訪問回数が増えることになる。それでは、僕たちはいいですが、他の村がどう思うか、という問題が出てくることになりますね」
「でしょうねえ。この村はある程度発展している。いや、1年前よりも遥かに良くなっている。ですが、他の村はそのままだ。それでは、他の村から苦情が出てきてしまう」
「それを避けるためにも策を用意しました。その方法であれば、負担を他の村には押し付けなくても済むのです」
「……思い付きはしましたが、本当にそれを実行する気ですか?」
「ええ、船を用意してアラゴンと往復させます。そうすれば、他の村には一切負担はかからない」
そうだな。他の村に迷惑をかけるわけにはいかない。だけど、こっちとしても美味しい話はどんどんと美味しくしていきたい。そうなった場合、どうすれば良いのか。答えとしては、船を用意する事。これに尽きる。そうなるのは既定路線だ。問題は、この代金を支払えるのかどうか。そこにかかってくる。
「我々としても利益のある話ではあります。ですが、船を運用するにしても、必要な物があるでしょう? そう、お金です。現状、ジャムだけでは到底支払えない金額になりますよ? 船便を使うと言う事は、それなりの価値のあるものを用意してもらいませんと。それらを用意できますか? 船便を出すと言う事は、こちらにとってもデメリットがあるのです」
「解っています。なので、こちらは石鹸を用意しました。こちらの村であれば、石鹸を作れます。石鹸であれば、貴族の皆様にも売れますよね? その利益で、船を買い取ることは出来ますか?」
「……石鹸と来ましたか。これは非常に悩ましいですな。確かに、石鹸を扱えるとなれば、こちらとしても船を出す事は出来ます。それだけの利益が支払えますからな。石鹸の価値は高い。貴族の女性であれば、毎日のように石鹸を使います。下手をすれば1日1つの石鹸を使ってしまうご婦人も居るでしょう。……しかも、石鹸はとある商会の専売でもありますからな。その牙城を崩せるのであれば、こちらもそれに乗ることは出来ます。ですが、問題は石鹸の品質です。品質で劣れば、向こうの牙城を崩すことは出来ない。それはお判りでしょうか?」
「ええ。ですので、アーミン」
「はい。コンラート兄さん」
そういって木箱に更に小さい木箱が入っているという物を持って来た。……正直重い。重すぎる。腕がプルプルする。今にも落としそうだ。それを何とかダンレムの手に渡した。
「これは?」
「それは石鹸のサンプルになります。個数は200。それを扱ってみてください。……正直、まだ量産にはこぎつけていないのですが、次の来訪までには、量産の手筈は整っている状態になっていると思います。ですので、まずは石鹸を使ってみてください。そして、感想をお願いします」
「既にある程度の数は用意してくれていたと言う事ですか。……なるほど。これならば、あるいは、と言う事なのですね?」
「ええ、ですが、それはあくまでも見本です。秋の商いまでには、もうひと手間加えて、香りを付けます」
「……香り、ですか?」
「ええ、そうです。今の品質でも十分に満足していただけるとは思います。それだけの物を用意したつもりですので。ですが、まだ反応は解らない。そうですよね?」
「そう言う事になりますね。これが本当に売れるのかどうか。それを確かめなければなりません」
「ですので、売れた場合、次の取引の時には、もう1段階上の石鹸を用意してみせます。それならば、相手側の牙城を崩すことが出来るのではありませんか?」
ぶっちゃけ、香油を混ぜるだけではある。だが、香油を取り出すにしても、かなりの苦労を要するのだよ。蒸留器がお酒造りで持つことを禁止されているのであれば、更に香油の入手難易度は上がる。それであれば、香油入りの石鹸なんて売られていないのではないか。そう思う訳だ。なら、勝負にはなると思う。
香油入りの石鹸で勝負にならなければ、こちらの負けなのだ。これ以上の品質を求めようとなると、色々とする事が多くなりすぎる。まあ、まだ勝負できる手札は残っているんだけど、出来れば石鹸で勝負を着けたいところではあるんだ。これが上手くいけば、船が手に入る。船便で貧乏から脱出できるのだ。




