天然酵母パン
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春の39日。朝、何気なく食事をしようと思ったら、パンが柔らかいんだ。黒パンなのはそうなんだけど、多少柔らかくなっている。スープに浸さなくてもちゃんと嚙み切れるだけの柔らかさだ。
「あれ? 黒パンだよね? 柔らかくなった? それに、ちょっと香りも変わったね?」
「はい。アーミン様から天然酵母を使う様に言われておりました。昨日完成したので、今日のパンから使用を始めました。……先に毒味をさせて貰った身としては、果物の香りがして、程よい甘味が感じられるとは思います」
「なるほど。これが天然酵母の力か。でも、売れるものではないって言っていたよね?」
「売れないとは思います。そもそも他の町なんかでは使っていると思いますし、果物があれば簡単に作れますから」
「そうですね。材料は水とベリーのみで作れました。後は時間が経つのを待つだけなので、知っているパン工房は既に使っていると思われます」
「なるほどね……。町だとそもそも自宅でパンは焼かないか」
「じゃないんですかね? 詳しい事は知らないですけど、ここは燃料となる木材は年中取れますし、異常に成長の早いグロドツギの森ですからね。自宅にパン窯があるのは珍しいんじゃないですかね? しかも、黒パンを焼くならともかく、白パンだとそんなに日持ちはしませんし」
基本的には、白パンと黒パンの違いは、小麦粉かライ麦粉の違いだけだ。ライ麦の色が黒いから黒パンになるんだよ。ただ、小麦粉よりも栄養価が高いので、平民食としては黒パンの方が良かったりもする。他から栄養を採れるのであれば、白パンでも良いんだけど。
「まあ、それもそうか。それに売るにしても単価が安そうではあるよね」
「安いでしょうね。見たら作り方は解りますし、簡単に真似をされるとは思います」
「そっか。じゃあ基本的には自分たちで使うためのものではあるんだね」
「そう言う事になります。カタリーナ姉さんはどうですか? 味の方は」
「いいわね。顎が疲れないし、ジャムとも合うわ。ただ、ちょっと大きいかしら?」
「それでも生地は小さいんですよ? 焼くと大きくなるのです」
「柔らかくなると大きくなるんですよ。なので、量はそんなに変わらないはずですよ」
膨らむからな。膨らむから柔らかくなるんだ。本当は2次発酵させた方がもっと柔らかくなったりもするんだけど、これで十分な気がする。……今までが硬すぎたとも言えるんだが。スープに浸さなければ食べられない程度の硬さだったからな。パンというよりも、なんだろう? フランスパンよりも硬かったからな。フランスパンは、あれはあれで表面だけが硬いって感じだし。中まで硬いのは流石に厳しい。
まあ、これも食べ慣れれば、実家に帰った時に苦労はするとは思うがな。……俺が初めての食事の時に、歯が欠けるかと思ったくらいだからな。スープに浸して食べるのだと、その時に初めて知った。そもそも貴族なのに、そんな食事で大丈夫なのかと問いただしたかったのはあるんだけど、貧乏なのは家を見れば明らかだったからな。
「それよりも俺は腸詰を普通に食べられるようになったのが嬉しいですね。これも手間暇がかかるし、何よりも美味しいですから」
「そうだね。普通の肉だと、放置しておいたら朝には危険な臭いがしているしね。その点、腸詰ならちゃんと燻製にしてあるんだし、ある程度の保存は出来るから」
「朝からお肉って贅沢でいいですよね。ずっとこのままが良いです」
「流石にそういう訳にはいかないんじゃないかな。まあ、僕も朝からお肉を食べられる方が嬉しいけどね」
「流石に朝に黒パンと野菜のスープ、ジャムだけでは飽きますからね。今はジャムがあるから良いですが、昔はジャムすら無かったのよね……」
まあ、な。黒パンに野菜のスープが朝と夜に出てくる。それが当たり前の事だったからな。流石にそんなのはひもじいどころの騒ぎではない。貧乏過ぎるんだ。それが今はまだマシな食事が出来る様になっている。まだ20日も経過していないが、凄まじい進歩と言えるだろう。
それもこれも、いろいろとやってくれる人たちが居るからなんだよな。貴族として陣頭指揮は執るが、口だけ出して、特にやることは無いからな。やるのは全部平民だ。平民の頑張りのお陰で、今があるといっても過言ではない。
こういう朝ごはんが食べられるのも、平民のお陰なんだよ。ちゃんと感謝をしないといけない。まあ、感謝を示すと嫌がられるんだけどな。貴族が頭を下げるんじゃねえって感じで。でも、そのくらいは感謝していると言う事なんだよ。
「さて、今日はどうするのかな? 予定はあるのかい?」
「私は今日もジャムや天然酵母を作っている所にお邪魔しますわ。意見交換は大事ですもの。特に今日はこうやって天然酵母でパンを作ったのですから、他の人たちとも情報交換をしないといけないわね。後は乾燥ベリーの作り方を少しでも熟せるようにしておかないといけないですから」
「俺の方はとりあえず、油を貰いに行って、ひたすら石鹸作りですね。今日の予定は特にはありませんので、ずっと屋敷に居ると思います」
「解った。ちょっと僕の方は出かけてくるから、何かあったらアーミン、お願いね」
「解りました。何処に行くかだけ教えてくれますか?」
「水車小屋の方にね。改造も良いけど、まずは水車の点検もしておかないといけないし、それの見学だね。だからお昼には帰ってくると思うよ」
「解りました。来客があって、俺が出ないといけない様な時は、その様に伝えます」
「うん。頼んだよ」
水車小屋の様子見か。まあ使ってから暫く経っているだろうしな。この時期は止めているし、点検をするなら、改造をするのと同時にやっておくべきなんだろうとは思う。もう暫くしたらまた水車を回すんだろうし。ライ麦を挽かないといけないからな。基本的には皆が一斉に使うんだよ。
そうしないと色々と勿体ないし、掃除も1回で済むからな。出来ればそういう風に使った方が効率は良い。まあ、前までは誰の分がどうのこうのとはあったんだろうが、今は全員で共有のライ麦だからな。面倒な事を気にしなくても良くなったのは良い事だ。
水車が無事に回ることが確認できれば、改造後は水車をフルに使っていく予定だからな。壊れましたでは話にならない。まあ、150年前から使っているんだろうし、色んな部品は交換したんだろうけどな。特に歯車なんて痛みやすいからな。
今後は酷使していくんだけど。ミキサーとして酷使していくのだ。とりあえず、今は石鹸の鹸化に使うだけで良いんだけど、将来的には、別の何かにも使いたいよな。折角のミキサーなんだし。何に使えるのかは知らないけど。何に使えるんだろうか?
その辺も考えないといけないよな。今後の事も考えておかないといけない。まだ出来ることはあるだろうからな。出来ることは何でもやっていかないと。この村を発展させないといけないからな。そうじゃないと貧乏に戻ってしまう。それは厳しい。
貧乏は嫌だからな。贅沢をしたいわけではない。人並みに生活をしたいだけなんだよ。特に食事に関しては、もうちょっとどうにかしたい。となると、今度は川に視線を向けてみるのはどうだろうか。川で何か出来ないかな。
河川を使う事は考えている。だけど、それ以外にも何かできるかもしれない。何が出来るんだろうか。出来ることはしておきたいよな。……近々川に行ってみるか。今日は石鹸を作るからまた今度行くとして、何が出来るのかを考えないといけない。




