輸送経路に問題あり
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その夜、いつものように集まって会議をしていた。……突発的に出てきたことを纏めるという意味でもある。何を話したのか、何を考えたのか。それを伝えないといけない。
「それで出てきたのが、ルムトププ、乾燥ベリーの油漬け、天然酵母を利用した柔らかいパン。そう言う事なんだね?」
「そうですね。直ぐに作れるのは乾燥ベリーの油漬けと、天然酵母になります」
「乾燥ベリーは美味しかったわよ。それを長期間保存できるのであれば、油を使うのはいいかもしれないわね。どうせ油は石鹸にも使うんだし、大量に必要でしょう? なら大量に作って輸出しましょう。お金にもなるわよ」
「うーん。いい案だとは思うんだけどね。そうなると、空瓶問題がまた出てくるでしょ?」
「あー。まあ、そうですね。基本的に瓶詰にする訳ですし」
「お酒を買うのも限界があるわよね。その3つとも瓶を使う訳だし」
「うん。だから、そこまでするなら、いっその事、ガラス工房を作った方が早いんじゃないかって思う気もあるんだけど……」
「そうなると、もの凄い費用がかかると思いますよ?」
「そもそもガラスの材料が手に入らなければ、作っても何も出来ないわよね?」
「素材を輸入するくらいなら、瓶を輸入した方がマシかなって思う訳だよ。それは商人と話をしないといけないとは思うね」
「後はお酒の許可です。それが取れれば、大量のベリーの捌け口が出来ると思うんですけど」
「お酒の許可ね。……正直難しいかなって思うよ。基本的には大金を積まないといけない事だし、そして何よりも、商会を作らないといけないからね」
「あれ? お酒を扱うには、商会が必要なんですか?」
「必要だよ。商会を作って、その商会に許可を出すって事になるから。で、万が一何かしら違法な事をやっているのであれば、その商会が取りつぶされる危険性もあると。そう言う事なんだよね」
「あー。じゃあお酒は難しいんですか?」
「……出来ない訳じゃないとは思うけどね。今こっちに来ている商人が、お酒を作る許可を貰っていれば、その作り手になって、お酒を作ることは可能になるかな。勿論、ここに来る商人がお酒を作る許可を持っているとは限らないけど、可能性はあるとは思っているよ」
「あれ? そうなんですか?」
「アーミンは知らないのかしら? 今の商人がなんでここの村に来ているのかの理由を」
「えっと、知りません。なんでなんですか?」
「ヨナターク子爵家の支援だよ。うちの寄親がヨナターク子爵なんだよ。だから、ここに村を作って領地を得た暁には、商人を寄こしてくれるようにって、初代が頼み込んだんだよ。だからこんな何でもない様な土地にも、商人はやってきている訳だね」
「ヨナターク子爵家が寄親なのはなんとなく解っていましたけど、支援目的で商人を寄こしてくれていたんですね」
「そう言う事。そうじゃなければ、こんな土地に商人がくる訳がないからね。小麦を生産しているのもその時の名残と言えば良いのかな。本来であれば、全部ライ麦で良い筈なんだけど、商品価値的には小麦の方が高い。ライ麦は小麦の3倍は取れるけど、値段は小麦の方が5倍くらい高いんだ。それに、荷物が嵩張るからね。大規模な商隊は来れないし」
「あれ? でも道路は整備されているんですよね?」
「道路はね。まあ、道路の関係もあるんだけど、問題はその大規模な商隊が、何処に泊まるのかって事なんだよ。当然だけど、宿なんて無いし、泊まる場所がないんだ。確定で村長の屋敷になるんだけど、大規模な商隊を迎え入れるだけの広さは流石に無い。だから良くて中規模の商隊しか受け入れられないんだよ」
ああ、なるほどな。商品価値があるものを作ったとしても、大規模な商隊は来れないと。良くて中規模か。それだと荷物が制限されるもんな。となると、単価の高いものを中心に売り買いすることになるんだけど、ライ麦よりは小麦の方が良いよな。
問題は多くあるなあ。こっちから商隊を出せれば良いんだろうけど、それも難しい。最低でも護衛は10人くらいは必要だ。兵士はそもそも10人くらいしか居ないし、冒険者の真似事をしている住民も30人程度だしな。4分の1の戦力を出さないといけないとなると厳しいどころの騒ぎではない。
しかも、何往復もさせるわけだ。まずは確定でアタライ村に泊まることになる、そうなれば、こっちの豊かさがオスカーにバレる。流石に何度も何度も商隊を向かわせていれば、オスカーがどれだけ馬鹿であっても気が付くというもの。そもそも傲慢なだけで、馬鹿ではないので、簡単に気が付くだろうな。それはそれで問題があるな。
「色々と問題がありますね。ここからだと、商隊を用意しても、小規模な運用しか出来ませんし、アタライ村にこっちが何をしているのかと言う事になれば、色々と面倒な事にもなりかねませんし」
「そうよね。だから、単価の高いものを出来るだけ多く輸出するのが良いのよ。それか、商人が何度も来てもいいと思うくらいには、利益のある話を持ちかけるのかね。でも、利益があっても、何度も来れるかどうかはまた別問題なのよね……」
「そう言う事だね。商人を歓待するのは当然の事。その時は白パンを出さないといけないだろうし、ご馳走も用意しないといけないだろうね。……僕らだけなら幾らでも歓迎するんだけど、それに巻き込まれる他の村がね。歓待なんて碌に出来ないだろうし」
「ああ、はい。まあ、そうですね。……でも、それだけの利益を作れる村だと思われないといけない訳ですよね? コンラート兄さんが6代目になろうと思うと」
「それもあるのよねえ。出来れば、有能な領主と言う事で、次のビューヘルム準男爵家に選ばれる方が良いとは思うのよ。でも、商人を呼び寄せ過ぎれば、他の村に負担をかける無能と言われても仕方がないのよね。その辺は上手くする必要があるとは思うわ」
「えーっと。何か案は無いのですか? 各村を経由しないで向こうに辿り着く方法とか……」
「うーん。難しいよね。基本的には道を通らないと商隊なんて送れない訳だし。普通は道を通らないといけない訳だ。鳥のように空を飛んでいくって訳にもいかないしね」
「ですよね」
うーん。難しい。どうすれば発展が出来るんだ? 輸出をするにも回数制限がある。となると、一気に厳しくなってくるんだけど。何かいい方法が無いか。そうだな。空が駄目ならって発想で行くしかないのかな? それなら……。
「……空が駄目なら、川を遡上するのは駄目ですか? あの川ってアラゴンまでは通じていましたよね?」
「通じているけど、川を遡上するのは難しいよ? 大きな船はそもそも用意できないし、荷物は限られてくるしね。仮に船を準備出来ても、アラゴンからこっちに来るのは簡単だけど、こっちからアラゴンに行くのは、絶対に魔道具が必要になるよ?」
「うーん。ある程度の魔石があれば、何とかなるんじゃないかなとは思うんですよね。それに、船はこっちで作るんじゃなくて、アラゴンの方で作って貰えれば良いんじゃないですかね? こっちも川が結構ありますし、向こうも川を使った輸送経路はあるんじゃないですかね?」
造船技術は向こうが持っている気がするんだよな。こんなに大きな川があるんだから。結構水深は深いんだよ。真ん中に限ればって話ではあるんだけど。まあ、それも商人に聞いてからって事になるのかな。まずは話を聞いてみないといけない。出来るか出来ないかの判断は、その後にすればいい。出来るのであれば、やってしまった方が良いとは思うんだよ。