弓矢の試射会
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春の28日。今日は朝から試射会だ。弓矢を作ったから、それを何度も何度も的目掛けて撃つ練習だ。真っ直ぐ飛ぶかどうかは解らない。ただ、やはりというべきか、エルフの人たちは上手かった。なんでなのかは知らないが、何射かしたら、外さなくなってきたんだよ。
「……コンラート兄さん、上手過ぎないですか?」
「上手いよね。しかも経験者じゃないって言うんだから、余程適性があったんだろうね」
「基本的には構えたら真っ直ぐ飛びますよ。ある程度風を読まないといけないのは、仕方がないですが。ですが、それくらいなら問題は無いかと」
「えー、そうかなあ? 結構難しいよ? 真っ直ぐって言っても、多少はブレるって」
そういうのはハーフリングの人。でも、この人も普通に的を射ているんだよな。かなり上手だ。……俺はやらない。無理だと思うからな。下手をすると、弓を弾けない。向こうまで飛ばせる自信がない。6歳ですし? 力が足りないと思う。
「でも、これなら狩りの効率も上がりそうですね。……まあ、暫くは狩りよりも優先してもらいたいことがあるんですけど」
「当然ですわね。まずは採取できる木の移植からです。村の中にある方が安全ですし、女子供でも採取は出来ますもの」
「という訳だから、採取地点にある木や植物をそのまま持ってきてくれるかな?」
「まあ、私たちは力仕事は苦手ですからね。前衛の方たちに任せます」
「1日に3本が限界じゃないかな。それで5班で15本。それを何日か繰り返さないといけないとは思うけどね。そうだなあ。3日か4日は欲しいんじゃないかな。樵の人も動員して良いって言うなら、話は違ってくるんだけど」
「コンラート兄さん、どうする? 樵の人にも行ってもらう?」
「そうだね。急ぎだし、行ってもらおうか」
「それなら樵は15人だから、3人ずつに分かれてだな。魔物からは守ってくれよ?」
「そこは何とかしましょう」
「今度は弓もあるし、戦力にはなれるよ。植物の魔物に、どれくらい弓が効くのかは知らないけど」
不安がない訳ではないが、樵も行かせた方が良いだろうな。木を掘り返すなら、彼らの方が慣れているだろうし。切り株を放置しておくと、知らない内に木がまた生えるからな。そんな森なんだ。ここは。異常だとは思うけどさ。
「まあ、その代わり、ゴミ捨て場の穴掘りは遅くなるぞ?」
「それは仕方がない。燻製小屋もその分遅くなるのは仕方がないよ」
「お肉が余ってくるまではまだ良いとは思いますけどね。早ければ早い方が良いですけど」
「肉が余るか……。そんな事はまだなさそうか? ……いや、この様子だと、狩り過ぎるんじゃないか? 弓矢ってこんなに当たるものなのか?」
「動いていない的ですからね。動いていれば、この3倍は射ないといけないとは思いますよ」
「矢の回収も難しくなるだろうから、消耗品として作って貰わないといけないかな」
「まあ、そのくらいは作るが」
「石の集まり次第だな。いや、魔物や動物の骨でも良いな。先が尖れば良いんだから、骨の方が扱いやすいかもしれん」
「その辺はお任せするよ。僕らも何か出来れば良いんだけど……」
「そこはお貴族様に動かれちゃあな」
「そうだぞ。貴族ってもんは上から指示をするもんだ」
まあ、その通りなんだけど、高圧的に指示を飛ばしてもって感じはするんだよな。それはコンラートも同じみたいだが。命令するというよりも、お願いになっている感じがあるからな。強く言える様なリーダーを求めているのは確かなんだろうけど、あからさまに上から指示を出されても、答えてくれないんだろうな。こういうのは信頼関係が大事だから。
思った以上に弓矢が当たるので、試射会はそこまで時間は取らなかった。まあ、当たってくれるんじゃないかな。明日からの成果が心配である。肉が早々に余るようでは、燻製小屋が間に合わない。もしかしたら、簡易の燻製器を作って貰う可能性があるな。まあ、狩れ過ぎたらって事にはなるんだけど。
そんな訳で、明日からの打ち合わせをして、今日はお開きになった。弓もそうだが、棍棒も消耗品だから、壊れたら壊れたって言ってくれよなと言う事を再確認した。壊れた状態で戦おうなんて止めてくれよ。怪我をされたら困るんだから。
そして、やることと言えば、石鹸作りである。昨日の今日なので、とにかく練り練りするのだ。なお、布で形を整えた石鹸は無事に出来ていた。これは試供品として、カタリーナ姉さんに渡すことになるだろう。高級品として扱ってもいいのかどうかを試してもらわないといけない。
ただ、それを試してもらうというか、それだけなら1個でも良かったんだけど、材料があるし……。何よりも被験者は多い方が良いんだよな。だから村長宅で働いている女性にも試してもらう事にしている訳だ。使い勝手が良いのかどうか。それを試してもらわないといけない。
因みに、シャワーなんてものは無い。お風呂なんてものは無い。浴室はあるけどね。ぬるま湯で身体を拭くのが一般的だ。しかもそれは女性の場合。男性はと言うと、春の90日間に1回か2回洗われたら良い方である。つまり、風呂には入れないのである。
とは言っても、俺の場合はそこまで苦労はしていないんだけど。いや、何というか、日本人なら毎日風呂に入れとは言われるかもしれないんだけど、仕事の都合で1か月間風呂に入れない事なんてよくあったからさ。
海外出張だと特にだな。一番酷かったのはバングラディシュに3か月居た時だな。あの時は風呂というか、川に入って洗えって言われたからなあ。しかも川は泥水に何かしらの化学製品が上流で使われているのか、水に虹色の膜が張られていたし。そんな所で水浴びなんて出来るかって訳で、3か月風呂に入らないなんてこともあった。
なので、割と平気である。森の中ではあるが、湿気はそこまででも無いので、汗もそこまでかかないし、服のごわごわ感を我慢すれば何とでもなる。日本人としては、汚いという状態に慣れているのだ。珍しいかもしれないけど、そう言う事である。
とりあえず、練りに練った石鹸を、また布で固めて放置。その後に夕飯を食べて、いつもの会議に参加する。今日は特には話は無いと思うけどな。それでも、俺はカタリーナに石鹸を渡すというミッションがある。
「カタリーナ姉さん、はいこれ。石鹸」
「……これが石鹸なのね? 少し柔らかいわね?」
「まあ、型枠に填めた訳でもないしね。布で形を作っただけだから、そんなものなんじゃないかな? 高級品は木枠で固めてしっかりとしたものを作る予定だけど」
「解ったわ。これがどの程度のものなのかを調べれば良いのね?」
「端的に言えば。でも、この屋敷の使用人には配るからね? カタリーナ姉さんだけの意見だと問題が出てくるかもしれないし。それに、平民にも気軽に使ってもらうつもりで居るからさ」
「大量生産が出来るのであれば許可します。少数しか作れないなら、独占させて欲しいわね」
「いや、カタリーナ姉さん。これは一応輸出品にするんだけど……」
独占されたら困るんだけど。輸出をしないといけないってのは、コンラートの言う通りだ。あくまでも外貨を獲得するための手段として作っている訳だからさ。カタリーナに独占されたら不味いんだけど。というか、1回の湯浴みで全部使うなんてことはないよな?
その辺は考えて使ってもらわないと、石鹸をいくつ作っても足りないって事になりかねない。俺の腕が死んでしまう。練るにしても結構力が必要なんだから。最後の方とか特にだな。鹸化するまでに時間がかかるんだし。




