お酒が出来た
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秋の25日。遂に仕込んでいた酒が完成した。待ちに待った酒である。早速で悪いんだが、試飲会が始まっている。まあ、飲兵衛どもが、今日だけは休みにすると言って聞かなかったからな。飲んで飲んでとわいわいやっているんだよ。
「おーい、つまみが足りねえぞ。早く持ってきてくれ」
「こっちも開けるぜ。早速試し飲みだ」
「飲み比べすっぞ。まずは1杯目からだ」
「利き酒やるぞ。味の解る奴はこっちに来な」
とまあ、こんな感じである。今日だけは飲兵衛どもに酒を飲ませても良いだろうという、婦人会が一致したからな。息抜きは必要である。まあ、必要な分の酒は確保してあるんだけどな。今日は飲んでもいい分だけ出してあるんだ。今日中に飲み干すつもりらしいけどな。一斉に酒に群がって、どんどんと樽を開けていく。まあまあの出来なら上出来という感じだろう。そもそも初めて作った酒なんだから。美味しいかどうかよりも、まずは出来ているのかどうかの確認が必要になってくる訳で。出来ていなければ、何かしらの事をしなければならないからな。
「んほお! うめえ!」
「こっちのサトウキビの奴はさいっこうだな!」
「酒が体に染み渡るぜ!」
「滅茶苦茶強い酒になっているじゃねえか! 最高だなおい!」
「あー、何というか、ほっとする味だな」
「クイーンベリーの奴は上品だな。結構酒精も強いが」
「飲み比べには適さんな……。これはゆっくり飲む酒だ」
「これは利き酒が捗るぞ」
「うーん。これはいまいちか?」
「いや、十分に美味いだろう。ちょっと酒精が弱いか?」
「だな。まあ、サトウキビの奴が一番強かったな」
「俺はこんなもんでいいや。弱い方だしな」
酒も色々。仕込んだものも色々だからな。違いが解れば楽しいだろう。……俺は飲まないが。子供はまだ飲んでは駄目なんだよ。今日は大人だけの楽しみなんだから。まあ、魔族に関しては、子供か大人か解らないんだけどな。しれっと混ざられると、解らないし、飲兵衛どもは飲ませる対象がいればいいんだから、子供だなんて気にしない。まあ、後で苦しむのは本人たちだ。明日は半分くらいは仕事にならないんだろうなとは思う。主に二日酔いで。
「飲んでますか? 今日だけですからね? こんなに飲んでもいいのは。本当は商品にしないといけないんですから」
「おうよ! 解ってるって。でもな? 商品って言っても、確認もしないで売るのは違うだろ? 確認は必須だよな? だから俺たちが確認してやるって言うんだ。品質とか、味とかは任せておけ。飲んで楽しかったら合格だ。酒ってもんは、そういうものだろう? 楽しんで飲めなかったら駄目なんだ。酒ってものはな? 楽しく飲めないと酒じゃねえ。いいか? 商品の確認をしないといけないってのはよく解るだろう? こうやって飲まないと、確認も出来ねえじゃねえか。な? 売り物にするんだからよ。品質は守らなきゃならねえ。だからこうして、俺たちが飲んで確認してやろうって言うんだ。楽しければ合格なんだよ。だから、これは合格だな。いや、この樽に関しては合格だ。あの樽が合格かどうかは解らねえ。飲んでねえからな。そんな訳だ。この樽も開けるぞ。品質の確認をしなきゃならねえからな」
「……程々にしておいてくださいよ? 完全に人の話を聞いていないですけどね。言い訳だけして、結局は酒の方に吸い寄せられてしまっているんだよな。そこまで美味しいお酒なら十分だとは思いますけど。まあ、確認は確認ですからね。必要なので、飲んでもいいですが。……本当はこれが売れるのかどうかを確認しないといけないんですけどね。美味しいかどうかはともかく、酒を作っても、売れなければ意味がないんですし」
そもそも販路が出来るのかって問題はあるんだよな。酒の競合は強いから。多分だけど、至る所で酒は作っているはずだ。ここだけではないはずなんだよ。それでも売れるって酒を探さないといけない訳なんだけど……。合格とはいっているが、売れるかどうかは未知数なんだよな。クイーンベリーのものについては、自信があるんだけど、問題はサトウキビのお酒である。大量に作れるので、どんどんと売ってしまう方がいいんだけどな。まあ、売れるかどうかはともかく、味は良さそうなのでいいんだけどな。酒飲みが飲まないって酒は、余りよろしくない。それだけ商品価値が下がるって事だからな。
「10杯目行くぞー」
「なんだよ情けねえな。もう駄目なのか?」
「こっちの酒が弱いからこっちに来させろ」
「酔ったら酒を飲ませれば回復するだろ。ほら、酒だ。酒を持ってこい!」
楽しそうで何よりである。まあ、楽しくないのは駄目なんだけどな。……ロシア人のようにならなくて良かったとは思うけど。ロシアみたいに寒ければ、酒くらいしか娯楽がない社会主義国家では、密造なんて当たり前のようにするからな。ロシア人はちょっと異常なんだけどな。工業用のアルコールも飲んでたし、そんなのは酒じゃねえってものも飲んでたからな。そんな路線にはいかないでほしい所ではある。まあ、その辺は倫理観がしっかりしているかどうかだからな。……この環境だと、密造は簡単だからな。流行ってしまうかもしれない。まあ、別にいいんだけどな。商売をしなければ。自分で楽しむ分には文句は言わないけど。
「おう、ちっこいの。飲んでるか?」
「いや、飲んでませんって。飲まないですからね? 俺は酒の感想を聞きに来ただけなんですから」
「なんだよ。ちょっとくらいいいじゃねえか。で? 酒の感想だ? 酒は良いものに決まっているじゃないか。弱い酒も、強い酒も、酒には変わりねえ。だから、酒は良いものだ。よって、酒は良いものなんだよ。解るか? 酒はな。酒なんだよ。だから飲め。酒なんだから飲むんだよ。まあ、ちっこいのにはまだはええか。酒は飲んでも呑まれちゃいけねえ。いいか? 酒は良いものなんだ。あっちの酒は中々に濃くてな。いい酒だった。向こうのはな。上品でいい酒だ。むこうのは、酒精があっていい酒だ。ここにはいい酒しかねえ。つまりは、これからも飲み放題って訳だ。酒はいいぞ。無限に飲めるからな。向こうの酒はいいぞ。これでつまみまであるんだから最高だよな」
「ああ、はいはい。結局は飲めればなんでも良い訳ですよね。解ります解ります」
飲兵衛との会話は不毛だ。酔ってない奴を探す方が難しい。というか、本気で飲み干すつもりなんだろうな。まあ、いいけど。明日、どんな感じになっても知らないからな? かなりの確率で、頭が痛いって事になるとは思うけど。二日酔いになると、二度と酒なんか飲むかって思うんだよな。でも、結局、酒を目の前にすると、飲んでしまうのである。酒ってそんなものなんだよ。何というか、魔力が凄いんだよな。
とりあえず、美味しそうに飲んでいるので、問題は無いと思うんだよな。これで商品にならないって感じになれば、ちょっと考えないといけない訳なんだけど、まあ、その時は蒸留すれば良いとは思うけどな。度数を上げてやれば、売れないことはないとは思う。こうやって酒は無限の需要を抱えているんだからな。
飲んでも呑まれたら駄目なんだけどな。まあ、ここの連中は、そんなこと聞かないでも解っているって言うんだよ。酒飲みは全員同じことを言うんだ。そして、二度と飲まねえと宣言するまでがセットである。酒で痛い目を見るんだけど、結局は忘れて飲むのが普通の事ではあるんだよ。いいんだよそれで。酒は楽しく飲んでもらえた方が、良いとは思うからな。今日だけだからな?




