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ひと月の恋人  作者: たま
2/7

やすらか




トランプかなんか、忘れたが、そんなんで負けた。その罰ゲームで、俺は「次に昇降口から出てきた奴に告白し、一ヶ月付き合う」ことになった。

男子校だから当然男相手だ。めんどくせえと思ったが、ビビって逃げたと思われるのはもっとめんどくせえ。適当に相手を脅しつけて、一ヶ月我慢しようと思った。


そしていま俺は、同級生の安島 要と付き合っている。


この安島というのは不思議な男で、異様にほんわかした雰囲気を纏っている。動作がやや遅いし、話し方も柔らかい。

普段俺が接しているダチと違うのは当然だが、あまり男子高校生らしくもないと思う。


だが、案外度胸は座っているのかもしれない。安島は、俺の罰ゲームに巻き込まれることをあっさり了承した。それに、「不良」である俺に怯えるふうも見せない。

おかげで俺は、脅しつける必要もなく、淡々と日々を過ごせている。


いまも、非常階段で共に昼飯を食っているが、俺は妙に落ち着いた心持ちでいた。

一段下に座る安島も俺も、ほとんど喋らない。しかし、なんだか落ち着くのである。

安島は、弁当箱のなかの小さなハンバーグを、ゆっくりと、さらに小さく切っている。俺なら一口だな、と思いながら、俺は見ている。


安島がふとこちらを見上げ、目が合った。



「石くん、よかったらこれ食べる?」



箸の先で小さなハンバーグをつまみ上げ、こちらに差し出す。

欲しかったから見ていたわけではないのだが、お腹いっぱいなんだよね、と言われると、食ってやりたくなった。

俺の弁当箱の蓋を受け皿に、ハンバーグのかけらを受け取る。うまかった。

ほとんどそれくらいしか話さず、その日の昼食は終わった。


教室に戻ると、あの日賭けをしたダチの一人、モヒカン頭の佐藤が寄ってきた。おもしろくて仕方ないといった顔をしている。ムカつくな、殴りてえ。



「みっちゃん、ハニーとご飯、どうだった?」



相手と毎日昼食を共にすること、というのも罰ゲームの内である。

茶化してくる佐藤には腹が立つが、その一方で、俺は今日の昼休みについて振り返ってみた。なかなか良い昼だったように思われた。



「ねーねー、どうだった?」

「っせぇな。ハンバーグがうまかったよ」



そう答えると、佐藤がえぇっと声を上げる。なんだよ。

佐藤は俺の顔を見回してから、なんか、と言う。



「なんか、みっちゃん、やすらか?ってかんじじゃね?」



俺はその言葉を死人以外に使っているのを聞いたことが無い。

ついにたまりかねて、肩のあたりを殴ってやった。



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