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犬の日
* 〇 *
百億年まえの犬は
十光年さきの犬と
ひとしい、すなおさで
生活の単位を知らずに
よくたべ
よく吠え
よく走る
こがね色にかがやく
あのうつくしき毛並みで
時と宇宙をかけぬける
(月の、ずっと向こうまで
あなたがきらめくのが見える)
百億年まえの犬よ
十光年さきの犬と
母をおもって眠りなさい
銀河をまくらに夢をみて
やわい泪を流しなさい
暗やみという天蓋に
しっとり寝息を吐いたなら
風のはじまりと
星のおわりを
とんがった耳先に感じて