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13. 北の鉱山

読んでいただき、ありがとうございます。

 それから十日後、私たちは北の鉱山地帯へ向けて出発した。今回、騎士隊と魔術師メンバーに魔術師団のラナンもいる。馬車四台と総勢18名の大所帯だ。


 途中の街で休憩している時に一つに結んだ銀色の長い髪を揺らしながらラナンがやってくる。


「ラナン様、お久しぶりです。今回はよろしくお願いいたします」

「アグネス嬢、無事に戻られて良かったですよ。あなたを探すため殿下に国中引き摺り回されて大変でした。なぜか精霊の力でも気配を感じ取れなくなってしまって、魔石を使って何とか気配を追おうとしても全く反応もないし。

 そういえば今回、光の精霊と契約したとか?どのようにして契約したのか詳しく聞かせてもらえますか?二人の精霊と契約するなんてとても興味深い」


 グイグイ来られて戸惑う。ラナンは普段、魔術の研究をしているようで私に話を聞こうと待ち構えていたらしい。


「気配を辿れなくなったのは......どうしてかわかりません。遠く離れていたせいではないでしょうか?光の精霊とは隣国の教会で契約しました」


 マイルと魔法で契約解除したことは言えないし、光の精霊とは契約していないから殿下の言葉を借りるしかない。


「隣国の......他国に行くと別の契約ができるということか......なら僕も行って試してみるか......」

「ラナン様もすでに殿下の闇の精霊と契約して、ご自身の精霊と二人契約をされているのではないのですか?」

「知っていたんですね。しかしそれは特殊な契約なので気配を追う以外には力を使えないのです。アグネス嬢は水の精霊と光の精霊の二つの力を使えるのですよね?」

「ええ、まあ...」

「やはり通常の契約というわけですね。他国の教会にはなぜ行かれたのですか?どこの教会でしょう?」

「あの、それは、途中で寄った街の小さな教会で、あまり覚えていないのです。申し訳ございません」


 苦しい言い訳だが仕方ない。


「そうですか、また思い出したら教えてください。それから光の精霊の結界ですが、」

「ラナン、もういいだろう。アグネスが困っている」


 騎士隊と打ち合わせをしていた殿下が戻ってくる。これ以上話すとボロが出そうなので助かった。


「殿下、どの程度の結界が張れるのか、強度など知っておく必要があります」

「それについては私が確認している。聖女より強力だ」

「そうですか。では現地でその力を見せてもらいましょう」


 ラナンは礼をして離れていく。


「殿下、私の結界の力は聖女より強力なのですか?なぜ分かるのです?」

「あの山小屋に張られていた結界は確かに聖女のものより強力だったよ」

「あれは、あの結界は私が張ったのではないのです。祖母の前に住んでいた魔女のものです。もう随分前に亡くなりましたが」


 殿下は絶句する。何か不味かっただろうか。


「もう亡くなった魔女が張った結界がまだ残っている?そんなことがあるのか。聖女でも毎年結界を張り直さないと保てないのに」

「え?そうなのですか?他にもあの家には彼女のマリアの魔法がたくさん残っています」

「それは、その魔法はいつまで続くのかな?」

「分かりません。私もあまり魔法を使ったことがありませんので」

「アグネス、これは凄いことだが危険でもある。君が魔女だと誰にも気付かれるわけにはいかないからね」


 殿下は顎に手を当てて考え込んでいる。しかし北の鉱山に結界は必要だ。


「結界を張って毎年張り直すふりをするとか?」

「うーん、とりあえず、それしかないね」




 5日間の行程で北の鉱山へ辿り着く。近づくにつれて気温が下がり雪が降り積もる。


「あの山の麓で少し鉱石を採掘していますが、それ以上は魔獣が多く鉱夫も入れません」

「そうか、ではそこから山に入る。みんな用意はいいか?」


 殿下の指揮の下、騎士隊と魔術師団は戦闘服に着替え麓から山へ入っていく。私は一番後ろから殿下に連れられ山に入る。しんしんと雪が降り、辺りは雪を踏み締め時々小枝を踏んで折れる音以外静かだ。いつ魔獣が現れるかとみんな緊張している。私も寒さからか緊張感からか震えが止まらない。


 その時、突然咆哮が山に響き渡る。右前方から一匹の魔獣がこちらに駆け下りてくる。馬の二倍はありそうな黒い魔獣は髪を振り乱し赤い口からは白い牙がいくつも並んでいるのが見える。

 

 魔術師が風の障壁を作るが僅かにそれて、魔獣は勢いを殺さずこちらに向かってくる。騎士が剣に炎を纏わせながら野獣に向かっていく。私は咄嗟に騎士に守護魔法をかける。魔獣を上段から切りつけ炎が魔獣を包む。しかし、魔獣は首を振り騎士を叩き落とす。別の騎士が魔獣へ向かい横から剣で貫く。断末魔の咆哮をあげ魔獣は倒れて動かなくなった。


 辺りは再び静寂に包まれる。

 騎士達は冷静に魔獣の腹から魔石を取り出している。

 私は震えが止まらない。殿下が私の手を取り包み込む。


「みんな魔獣との戦闘には慣れている。大丈夫だよ」


 こんな戦いをいつもしているなんて、絶対に結界を張らないとと決意を新たにする。

 そして、みんなにそっと守護魔法をかける。



 それからも何度も魔獣が現れるが騎士達は見事な連携で倒していく。

 3時間ほどかけて少し開けた山の中腹へ辿り着く。


「少し早いが休憩にしよう」


 皆思い思いに座り昼食をとる。私はみんなの周りに結界を張り山の麓を振り返る。雪は止み、時々木々が風で揺れて積もった雪が舞い、日の光にキラキラと輝いている。


「山頂に着いたら山全体に結界を張る。あと2時間くらいで着くだろう。アグネスできるかい?」

「はい、大丈夫です。夜までに降りられるでしょうか?」

「このまま天候が崩れなければ。帰りは魔獣も出ないしね」


 休憩を終えるとまた山頂へ向かって行進する。だんだんと魔獣の出る頻度が上がるが何とか倒しながら進む。


 山頂近くになって急に天候が崩れてくる。雪が横殴りに吹き視界が真っ白になる。


 魔術師が風の障壁で周りを囲みながら雪を避けて進む。


 その時声が聞こえた。


「私の山を荒らすのは誰?」

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