ピザ
少しグロいかも?
ジリリリリリ。
鳴り響く目覚まし時計。窓からは朝日。月曜日。ゴミの日。真夏日。
掛け布団をかぶって抵抗してみるが、自分の中にある常識が私に社会的信用という名の弾を込めた銃口を突きつけてきたので両手をあげた。
手際よく身支度を整えると、勤務先である市役所に向かった。今の生活に不満がないと言えば嘘になる。遊びたいし、働きたくない。もっと寝ていたいし、好きなものを買いたい。だけど、仕事にありつけない人や紛争で苦しむ人と比べると、自分はある程度安定した日々を過ごしているのだと自分を騙し妥協して生活している。
いつもの交差点。ここやたら交通量が多いのに信号が遅い。その結果、黄色でも結構なスピードを出して車は横断しようとする。私はそれに巻き込まれた。轢かれた。痛い。痛すぎてむしろ痛くない?ああ、こんなことなら最後に何かしたかったなあ。せめて都会で生活したかったなあ。走馬灯など見るまでもなく、私の記憶は落ちていく。
飛び起きる。時刻は2時。一大事。
遅刻までとはいかないが、かなり急がないとやばい。
変な夢にうつつを抜かしている場合ではない。とにかく急いで、急いで、急いで支度をしなくては。
洗面所の鏡の前に立ち、乱雑に髪をかきあげる。
かきあげた手は、まるで重力を忘れたかのようにその場に静止した。
いや、彼そのものが静止したのだ。そこに立っていたのは、知らない人間だった。
いや、僕だった。
ふと我に帰ったのにそこにいたのは我だった。
街を急いで走る。
信号。交差点。家。家。家。マンション。公園。家。コンビニ。目的の場所に着いたのは30分後の2時45分23秒だった。息を整える。そこはボロいアパートだった。光に群がる虫のように吸い寄せられていく。2階の端の部屋に入り、電気をつけるとお目当てのものがあった。机の上に置かれた一輪の花だ。血管のような根からは赤い液体が流れ、皮膚でできたような茎からは歯のような葉が生えていた。それを食べ僕は死んだ。
目覚める。寝坊。大寝坊。
変な夢を見ていた。意味のわからない夢を見ていた。これって新手の現実逃避?行きたくないが、学校に行く。学生だから。学生である前に人間であるのに。
「ああ、ピザが食べたい。もうこの際ビザでもいい」
交差点が怖い。いつもより慎重に進む。ふと、花壇を見ると、血まみれのグロい花が咲いていた。夢で見た花だった。
なんだ。まだ俺は、いや、私は夢を見ているのか。いや、誰だ? 俺を見てるのは? これは一体誰の夢なんだ。この夢は誰のものだ。
俺? 君? 神? 蝶?
信号。8時。一大事。コンビニ。駅。家。交差点。君。家。僕。家。夢。