冒険者生活を始めた創造神
「ゼノさんはGランク冒険者となります。Gランクの依頼をこなしてFに上がれるよう頑張ってくださいね。因みに、Gランク冒険者は一月の間依頼を達成出来なければ冒険者資格剥奪となりますのでお気をつけてください」
「わかった。早速依頼をこなしてみたいのじゃが何かいい依頼はあるかな?」
「そうですね。初めてですし、薬草採取等はいかがでしょうか?」
「うむ、それにしようかの」
「わかりました。常設依頼の初級ヒールポーションに使うヒラレル草の採取をお願い致します。一つ銅貨5枚になります。達成条件は20本、銀貨1枚分になります」
「あいわかった。では行くとしよう」
「お気をつけて」
門を出ると直ぐにニタラグア森林が広がっている。ここには大抵の薬草が生息していて、不気味な森の中に沢山の冒険者が入っていく。
『全知全能よ薬草を見つけたら教えておくれ』
全知全能は薬草を見つけるとぼんやりと光らせてそれを注視すれば薬草の名前、ランクや情報等が読み取れる。
全知全能はスキルであるがそれはゼノ自身でもある、視覚に訴えたり、はたまた聴覚や身体を勝手に動かしてみたりとまるでゼノ自身の中にもう1人存在しているかのようだ。
ヒラレル草以外にも数多くの薬草がみつかる。
土や葉に隠れている様な薬草まで見つけてしまう。
情報を見れば貴重な薬草もちらほら、ヒラレル草クラス以外の薬草は全知全能が勝手に収納してくれる。
所謂アイテムボックスやストレージ等と言われる様な物だ、その状態のまま時を止める能力がある収納スペースを全知全能は持っていた。
勿論、全知全能に頼めばストレージなる物をゼノが使える様になるが、ゼノスだった時代にいらないと感じた物を全知全能が勝手に収納する様にと頼んだのだった。
しばらく薬草採取に夢中になっていると。
「新人冒険者か?」
いかにもチンピラという格好をした若者数名に囲まれていた。
「そうじゃよ」
「なんだその喋り方は」
「そう言われてものう」
「まぁいい。ここは俺達、稲妻のライトニングの縄張りだ」
「おいおいお前さん達、そのチーム名どっちも同じ意味じゃぞ」
「チーム名じゃなくてクラン名だ!って何がだ?」
「いやいや、稲妻とライトニングはどちらも稲妻じゃと言っておる。稲妻の稲妻だって凄まれてもな・・・怖くないぞ」
「な、な、な、なんだと。俺達が怖くない?っておい本当なのか?ライトニングは稲妻って事なのか?」
「そうじゃよ」
「マジか・・・だからギルドでぷっって受付嬢が笑ったのか?イチャモンつけてもチーム名言った側から舐められるのもライトニング=稲妻だからなのか・・・」
「まぁ泣くなて、どちらか残してどちらかを違う意味の言葉するのじゃ。そうすれば笑う者はいなくなるじゃろ」
「そ、そうだな。なら雷のライトニングじゃ変わってないか・・・、稲妻のサンダーとかはどうだ?」
「お主わざとか?わざとなんじゃろ?」
「何がだ?」
「素なのか?それはそれで恐ろしいな」
「恐ろしいか。なら俺達は今日から稲妻のサンダーだ」
「そうか。もう何も言わん。頑張るんじゃぞ」
「ありがとうなー」
変な冒険者に遭遇したが順調に薬草を採取し、ギルドへと戻る為に引き返した。
「短時間にこんなに沢山・・・ゼノさん凄いですね」
「いやまぁ偶々群生しとる所を見つけたんじゃよ」
「それでも凄いです。この時期は薬草も少ないので、とてもありがいです」
この国はとても温暖な気候で一年の気温の変化は少ない、それでも今は一年で一番寒いと言う。
実際、朝晩は肌寒く感じるが昼間は暖かい。
薬草の発育がこの時期は悪いそうだ。
「全部で120本ですね。銀貨6枚になります。これで依頼を6回こなした事になります」
「そうか。ではまた明日来るのでよろしく頼む」
「はい。お待ちしております」
ゼノが帰った後、ギルドの受付嬢の1人がミリに声を掛けた。
「さっきの人凄くカッコ良かったわね。だけど言葉使いがおじいちゃんみたいでちょっと幻滅」
「そうかしら?私はおじいちゃんっ子だったからとても話しやすくて好きよ」
ニヤニヤしながら暖かい目で見つめる同僚。
「す、す、好きってそう言う意味じゃないんだから」
「ふーん。そう言う意味ってなーに?」
「もう」
♦︎♦︎♦︎
次の日も薬草採取の依頼を受けて森に入るゼン。
昨日と同じ要領で薬草を採取していると、何処からか声が聞こえる。
「助けてー誰か助けてー」
直ぐに全知全能にマップを表示させると、近くで魔物に襲われているパーティーを発見した。
急いで近づくと女の子4人のパーティーがウルフ10匹程の群れに襲われていた。
4人中3人は明らかに重症、1人も重症に近い怪我をしながら3人を庇い戦っている。
「助太刀致す」
ストレージから一昔前に伊奘諾から借りパクした聖剣天之尾羽張(あめのおはばりとも言う)を取り出し、ウルフの群れに飛び込んだ。
頭から尾まで真っ二つにすると
「うむよく斬れるの」
と一言。
その後全てのウルフを斬り刻むのにそう時間は掛からなかった。
「お嬢さん方、これで安心じゃ。ゆっくりと休め」
最後まで戦っていた1人も安心したのかその場にパタリと気を失った。
『全知全能よ。この女子達の傷を治してやってくれ」
すると直ぐに4人の傷が癒た。
それから夕方まで見張りをしながら起きるのを待って門が閉まる前に街へと戻った。
「本当にありがとうございます」
「傷まで治して頂いてこの恩は忘れません」
「よいよい、命あってこその冒険じゃ。これからより一層気をつけるのじゃよ」
「「「「はい」」」」
4人と別れ、宿に戻るとドッと疲れが出てくる。
「これが疲れか、心地よいな」
人となり初めて剣を振り流石のゼノも夕飯を食べずに寝てしまった。
次の日、ギルドへと向かうと昨日の4人が駆け寄ってくる。
彼女達も薬草採取をしていたそうで、気づいたらウルフの群れに囲まれていたそうだ。
一緒に受付へ行くとウルフの骸を提出して昨日の出来事を説明した。
「わかりました。ゼノさん、この子達を救ってくださった本当にありがとうございます。ウルフはこちらで買取させて頂いてよろしいですか?」
「勿論、構わない。其方に任せる」
「ありがとうございます。では少々お待ちください」
暫くするとニコニコと笑顔でミリが戻ってくる。
「ゼノさんのFランクへの昇格が決まりました。おめでとうございます」
「もう昇格とな?」
「はい。ウルフ10 匹を倒せる方がGランクにいられては困るとギルドマスター権限で昇格が決まりました」
「そうか。ならこれが最後の薬草だ。依頼とは別の薬草も取っておったからそれも買い取っておくれ」
そう言って全知全能に溜め込んでいた薬草を全て吐き出した。
「こ、こんなに?しかもそれはストレージですか?そしてこれはA級の薬草もちらほらと見えるんですが・・・。今すぐ鑑定します」
「頼む」
茫然としている女の子達にもう帰っても構わないよと言い帰した。
最後にまたお礼を言われた。
とても気持ちのいい子達である。
暫くするとミリさんが戻ってきた。
「お待たせ致しました。鑑定の結果からお伝えします。幻のS級のパーフェクトヒールポーションの材料であるミスリル草が5本、A級が3種15本、その他385本で計金貨90枚と銀貨50枚になります。ギルマスがFランクでは足らないかもと嘆いていましたが兎に角これはFランクになってからの功績としましょう」
「うむそこら辺はミリさんに任せようぞ」
「では確認して下さい」
「うむ大丈夫じゃ」
ウルフ買取り料を合わせて金貨91枚となった。
この世界の通貨はイエン、硬貨の種類は銅貨=10イエン =10円、銀貨=1000、金貨=10万、ミスリル金貨=1000万となる、100枚で次の貨幣に繰り上がる。その昔、鉄貨もあったが店側が10円単位で商売をする為、鉄貨は廃止された。
硬貨は100単位なので嵩張り重い。
だが、遥か昔各ギルドが統一のギルドカードになってからギルドカード間でお金のやり取りが出来る。
そうキャッシュレス決済が行われているのだ。
そして、一般人もギルドカードの発券はできる。
その場合、ノルマはないが依頼を受けることが出来なくなる。
今回、910万イエンを手にしたゼノはギルドに預けずに全知全能のストレージに仕舞い込んだ。
これで暫く信者の奉納したお金を使ってしまうことはないだろう。