全知全能の神、転生す
ここ神界には数えきれない程の神々が暮らしている。
神にも上下はあり、最上位の創造神ともなれば星を誕生させ見守る、ただそれだけだ。
唯一、言葉の通じる者達が誕生すれば信託を与える事は出来る。
だがそれまで数十億年〜数百億年もただじっと待つだけだなのだ。
創造神は暇なのである。
そしてここも1人暇な創造神がいる。
全知全能の神と謳われ神界最強の武神から創造神となったゼノスと言う。
「暇じゃ。星を見守って、偶に信託を与えるだけの仕事。神は寝もせず、食事もしない、そして不死じゃ。暇を持て余しておる」
「そうじゃな。儂も暇だ。だが儂らは自分の星を守らなくてはない」
「わかっておる。わかってはいるが・・・暇で暇で死にそうだ」
「ワハハ。不死の神が暇で死ぬか。もしも死んだら転生でもしたらいい」
「転生とはなんじゃ?」
「なんじゃ全知全能のお前も知らんのか?最近の流行じゃよ。創造神の伊奘諾の星、日本と言う国から死んだ者を他の星に記憶を持ったまま生まれ変わらせるのじゃよ。あとは召喚、転移なんて言うのもあるそうじゃ。あの国は科学とか言うので他の星より発展している。転生等をさせてその星を発展させたり、チート?とか言う強いスキルや魔法を与え、魔物を討伐させたりと、色々と融通が効く。その日本とか言う国は、それを記した書物が溢れており転生したいと思っておる人々が沢山おるのじゃよ」
「ほー転生とな」
「全知全能のお主なら転生できるかもしれんな」
「うむ、やってみるか?」
「じゃが、星の管理はどうするつもりじゃ」
「最近な、オート管理機能を搭載したから、数百億年くらいは問題ないな」
「ガハハハ、お主ときたら流石全知全能の神だな」
「それじゃ、行ってくるわ。次会うのは人間の寿命なら100年後かの?」
「それならすぐじゃな。ゼノスよ土産話楽しみにしとるわい」
「全知全能よ儂を転生させてくれ」
「おっ?成功じゃな」
どれどれ、鏡はストレージに入っていたような・・・あったあった。
「ほー15歳くらいかの?この星では成人したばかりと言ったところじゃな。なかなかのいい男に転生したものじゃ」
さて、顔の確認も終わった事だし近くの街へ行ってみよう。
多分、こっちじゃろ。
街道をトボトボと歩く事1時間、大きな外壁に囲まれた街にたどり着いた。
門の中へ入る列に並ぶと、30分程で儂の番じゃ。
「身分証は?」
「そんなものないのー」
「それじゃ銀貨1枚だ」
「ちょっと待っておれ、え確か何処かにあったはずじゃ」
「若いのに随分と年寄り臭い言葉使いだな」
「アハハハ、年寄り臭いか。少し待っておれ、ほれ銀貨一枚じゃ」
「確かに。因みに冒険者ギルドや商業ギルドに登録してギルドカードを発行すれば、金は取られないぞ」
「そうなのか、なら行ってみるとしよう」
どうやらこの街はアルガルベ王国の王都だそうだ。
「アルガルベか・・・確か善政の豊かな国じゃったな。ここで暫く拠点を構えようかの」
『全知全能よマップ展開』
「ほぉ冒険者ギルドとやらはもう少し行ったとこかな。商業ギルドも隣にある」
冒険者ギルドへ向かおうと歩き出すと
「お兄さん、宿屋はもう決まってますか?」
「いや、決まってないがお嬢さんは宿屋の娘さんかい?」
「娘さんって、娘だけど私はアリーよ」
「アリーさん、それじゃ宿に案内してもらおうかの」
「お兄さん、おじいちゃんみたいな話し方するのね?」
「そうかの?」
「ウフフ、ここが星守亭よ」
「お母さん、お客さん連れてきたよー」
「また無理矢理に連れてきて、お兄さん大丈夫でしたか?」
「あぁ、大丈夫じゃよ。10日程泊めてもらおうかの」
「朝夕飯付きで銀貨30枚よ」
「はいよ銀貨30枚」
「夕飯は6時から9時だよ。朝は7時から8時だよ。アリー、部屋に案内してくれる?」
「はーい」
夕飯時、店内は飲み屋にもなっていて混雑している。
「夕飯ならカウンターで良ければ空いてますよ」
「ありがとう」
「どれにします?」
「アリーさんのオススメを下さいな」
「飲み物は?」
「うん、ワインはあるかい?」
「ありますよ」
「ならワインをもらおうかの」
「はーい」
暫く待つと料理が並ぶ。
「ビッグボアのステーキ、山菜のソテーと白パンにスープそれとワインです」
「うむ、ありがとう。いただきます」
いやー美味い。
食事と言う行為は初めてだが、ビッグボアの肉は柔らかく脂身も甘い。
噛むごとに汁が溢れてくる。
山菜はシャキシャキと食感が良く、癖もなくてとても美味しかった。
パンにスープも最高の一品だった。
「ごちそうさま。アリーさん、美味しかったです」
次の日、朝食を食べ街を散策していると、とても立派な建造物が目を引いた、それは教会のようだった
中へ入ると儂の像だ。
民草の様に祈りを捧げてみると・・・
「ん?ここはどこじゃ?」
「ここは貴方の全知全能が創り出した空間です」
「何故こんな所に儂を読んだのじゃ?」
「はい。ゼノス様の記憶が15歳になって戻りました。そしてその前の記憶が薄れていたようなのでここで戻します」
「ほぉ確かに持ち物の位置等はわかるがその前の記憶は曖昧だ、15歳くらいの人間に転生を果たしたのかと思ったわい」
「そうではありません。貴方は創造神、その身体に馴染むまで時間が掛かりました」
「そうなのか」
「では記憶を戻します」
「うむ頼む」
父や母の顔、そして母が亡くなりその後父もか・・・
残酷な運命じゃな。
その後預けられた孤児院か?
シスター今思うと懐かしいの。
15歳になって孤児院を出たのか。
妹分のアリスはまだ孤児院、15歳になったら迎えに行く約束をしたのじゃな。
そして儂の名はゼノかこれは覚えていたぞ。
冒険者になる為に王都にきたのか?
「わかった。記憶は全て戻った。全知全能よ、この星を頼むぞ」
「わかりました。偶にでいいので教会へ足を運んで下さい。信託としてこれから起こること等をお知らせします」
急いで宿に戻る。
「ステータスオープン」
自分のステータスが見れることも記憶から知った。
名前 ゼノ
年齢 15
種族 人族
職業 神
レベル 25
HP 1250/1250
MP 1160/1160
スキル 全知全能(全てを知り全ての能力を行使する者) 貨幣行使(ゼノス教の信徒が奉納した貨幣を使うことが出来る)
加護 創造神ゼノスの加護 創造神ガイアスの加護 創造神伊奘諾、伊奘冉の加護(ステータス上昇率10倍×4=40倍)
称号 創造神の転生者
「おいおい、ただの人として生きたいのにこれじゃチートとやらと同じではないか。金も欲しいと願う額出てくる訳じゃ」
ステータスを確認してギルドへと向かった。
こうなれば冒険者になり人々を助けようと思ったのだ。
「冒険者になりたいんじゃが」
「は、はい、受付のミリと申します。こちらに記入して下さい」
氏名 ゼノ
年齢 15
職業 ・・・
・・・神とは書けんだろ?全知全能どうにかしてくれ
するとステータス欄の職業が魔法剣士となった気がした。
ほう、これが改竄か・・・
職業 魔法剣士
「これでいいかの?」
「はい、大丈夫です。魔法剣士なんて珍しい職業をお持ちなんですね」
ゼノスは武神として名高く、剣の扱いはどんな神々より長けている。
そして全知全能はどんな魔法でも行使出来るのだ。
うむ魔法剣士とはよく言ったものじゃな。