21 私の能力?
いまだに何もすることがない私は、とりあえず次の日もルーヴァス様の執務室前の廊下で張り込みをしていた。
「ティナ、こんなところで何をしてるんだ?」
私を探してここにたどり着いたと思われるエリオットの呆れた声に、ビアンカとリゼが苦笑いを返した。
「何って、見てわからない?」
「お茶……だよな?」
廊下で立ち話もなんだからと、なぜかディスターさんが簡易のテーブルと椅子を用意して、ビアンカに持たしてくれた。
反対されると思っていたので不思議だ。
そこへリゼがワゴンで茶器のセットを運んできている。私が咎められることがないように、事前に侍女長にはちゃんと許可を取ってあるという。
やっぱりリゼは優秀だ。
ここの廊下は幅が三メートルほどあるから、歩いている人の邪魔にはならない。この時間にルーヴァス様が出てくることはほぼないそうだ。ディスターさんと、ビアンカが言ったので、私はここでのんびりしている。
そして今日もルーヴァス様のお部屋の前を守っている近衛騎士には、お菓子を渡して買収してある。
もしルーヴァス様にこの状況が見つかってしまったとしても、ディスターさんが何とかしてくれると約束してくれたので、私はその言葉に甘えるつもりだ。
「だったら俺も一緒にいいか」
「ええ、リゼお願い」
「かしこまりました」
エリオットは壁につけて置いてあるテーブルの執務室側へ座った。執務室側が見える位置にいる私とは向かい合う形だ。
「エリオット様は順応力がすごいですね」
ビアンカは思わずつぶやいてしまったらしい。私が視線を向けると目をそらされた。
「ティナのやることをいちいち疑問に思っても仕方がない。それにティナが面白いことをやっているのを、見るのは楽しいからな」
今は、いくら私でも反論できない。他人が廊下なんかでお茶会をしていたら私だっておかしいと思う。
「しかし、ここでこんなことをしているのは、実はアルティナ様の深いお考えがあってのことなんですよ」
ビアンカが私のことを擁護し始める。だけど私はルーヴァス様のことしか考えてないから、持ち上げられても恥ずかしいだけだ。
「深い考えとは?」
エリオット、追及はしないで。
「すでに近衛騎士の何人かは掌握しております」
え、なんで? 私と同じく、そんな返事が戻ってくるとは想像もしていなかったらしいエリオットも同じように驚いている。
「アルティナ様の香りには不思議なお力があるのです。ここでアルティナ様は近衛騎士たちに焼き菓子をお裾分けしているんですが、仕事が終わった後それを食べたら、とても満たされた気分になったとか。それもみんながみんな同じ状態だったようで、アルティナ様からの焼き菓子を心待ちにしているようなんです。その話を聞いた仲間たちも気になっているようですし」
私の香りにそんな使い方があったとは。私は知らないうちに近衛騎士を餌付けしていたようだ。
「ふーん、ティナがねえ」
エリオットは私がそんなことを考えて行動していたとは思っていないようだ。付き合いが長いのでわかってしまうのだろう。
それよりビアンカは本気でそう思っているのだろうか。
リゼも隣で首を縦に振っているので、もしかして本当に勘違いしているんじゃない?




