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8 嫌がらせ


フィリップ様との噂が広がるにつれて、嫌がらせが始まった。

コーデリア様の予言通りだ。私の中でこっそり予言者コーデリアと呼ぼう。


フィリップ様のお遊びが収まったのと、私との噂が立ったのがリンクして私が本命説が立ったのだ。

いやいや、お遊びが止んだのは廃嫡されそうになったからなのにぃ。



遊び人とはいえ優良物件のフィリップ様、狙っていた子は皆、面白くないらしい。

廊下を歩けば足を掛けられ、食堂に行けば飲み物を掛けられる。


教科書には、ブスと落書きされる。

ええ、書かれなくても存じてますわ。

だから、何?ってかんじ。顔なんて、目と鼻と口が付いてれば良いのよ!



私の幼馴染みのあの子は誰もが認める美少年だ。

それゆえ、ファンも多く跡をつけられたり、よからぬ人にさらわれそうになった事さえある。

美形は美形で大変なのだと言うことを、ずっとあの子の側にいた私は知っていた。

平凡顔、万歳!なのだ。


とりあえず、転ばせようと差し出した足は踏みつけ、飲み物を掛けられたらよろめいて濡れたドレスをなすり付けておいた。

濡れるの両成敗だ。

教科書はカバーをつけて、面倒だが、教室を離れる際は私物を鞄に全部詰めて移動している。

腕の筋肉がつきそうだ。


こちとら、長年、美少年の婚約者だったのだ。

こういういやがらせは全て経験済みだ。




「前の婚約者も美少年でしたし、今度は伯爵家跡取りで美丈夫のフィリップ様にアプローチされるなんて。いったい平凡な顔の貴女のどこがいいのかしら?」

ゴージャス美人ダリアさんに、言いにくいことをはっきり言われてしまった。

こういうタイプ嫌いじゃ無いです。言いたいことを言ってくれるので裏を読まなくて済む分、楽。


「ええ、ええ。私もそう思うわ」

幼馴染み関しては親同士が仲が良かったというだけですし、フィリップ様は遊びが過ぎて釣り合いの取れた家に嫌われて子爵家うちに回ってきただけで、

結局、わたくし運がいいのでしょうか? 悪いのでしょうか?


とりあえず、ダリアさんには、

「たまには、落ちない女を落とすお遊びをされてるんじゃないかしら?」と答えておいた。

「そ、そうよね、勘違いしないほうがいいわよ!」と適切なアドバイスをして去って行った。


日々の嫌がらせ、コーデリア様は、「今までの知識を総動員して上手にあしらってご覧なさい」とおっしゃったけどどうすれば良いのかしら?

犯人を見つけて戦う?

伯爵家の覚え書きを見てるから、ここの弱みは知ってる。こっそりチクリと脅す?

周囲の同情を誘うように泣く?

からめ手で犯人を脅す?

情報操作して噂を消す?


いろいろ考えるけど良い手が思いつかない。


人に悪意を向けられるって、ちょっとへこむ。

嫌がらせをする人達の気持ちも分からないでは無い。

皆、優良物件フィリップが、平凡顔にちょっかいかけるのが面白くないのだ。


家に帰って落ち込んだ顔に気合いを入れる。

小さい弟に心配掛けるなんて三流のお姉ちゃんのすることだわ。

「打倒! フィリップ!!」

拳をあげると、小さな弟がパチパチと手を叩いた。

……応援してくれてるの?




***




フィリップ様は噂が立って解禁と思われたのか、ニコニコしながら私のクラスにしょっちゅうやってくる。

人が悩んでるのに、暇なのかしら? この人……

私は、若干呆れていた。


「どうやら君は何か落としたみたいだよ。ああ、俺のハートだ!」

君が落としてるのは、理性はじらいだ。


「ちょっと深呼吸させて。君を見てると俺は息が止まりそうだから」

永遠に、止まってしまえ。


「ここは天国に違いない。だって天使が俺の横に立っているんだから」

違う、ココハ学園。立ってるのは平凡娘。


「地図を持ってるかい? なぜって僕は君の瞳の中で迷子なんだよ」

地図は今度用意しておく。迷子なのは君の頭だ。



――フィリップ様は、毎日よく分からないことを言ってくる。

嫌がらせかしら?


「フィリップ様の目と脳みそが腐ってるんじゃないかと心配してるんですが」


「心配してくれるんですね」


「俺の天使、君に悲しい顔は似合わないよ? 俺に微笑んでくれないか?」


ええ、ええ。美しい人にしか悲しい顔は似合いませんわ。

ちなみに、貴方のせいで嫌がらせを受けてるんですけど。


「わたくし、婚約破棄されたばかりですの。次の恋など考えられませんわ」

と、けんもほろろに断わる。つい、私の本音がでる。


「まだ彼が忘れられないのかい?」

フィリップ様が辛そうな顔をする。

――ナンデ、アナタガ、ツラソウナ顔ヲスルノ?


1ヶ月そこらで忘れられるはずなど無い。 こちとら3つの頃から幼馴染み一筋だったのだもの。

「忘れられるときなど、来ないかもしれませんわ」

どうしてだろう? 彼には思わずムキになって本音で答えてしまう。

コーデリア様に知れたら説教ものだわ。


「忘れないままの君で良いから、少しで良いから俺のことも見てくれないか?」

彼がふわりと微笑んで切なそうな目で私を見つめる。周囲から息を飲む声がいくつも聞こえてきた。



毎日こんなやり取りをしているうちに、周りは、『ついにあのフィリップ様が真の愛に目覚めたのだ。あまりに不憫だから応援しよう派』と『フィリップ様は、また落ちない女を落とすゲームをしてる派』に分かれ始めた。

もちろん、私は後者だ。


で、嫌がらせをしていた人達もどちらかの噂に納得したのだろう。嫌がらせが止み始めた。



コーデリア様には、「二人で協力して印象操作したのね。すごいわ。愛の勝利ね」と合格を頂いた。



――アレを印象操作というのか。

げせぬ。




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