表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/14

10 誘拐

次の瞬間、腕を捕まれて停まっていた見知らぬ馬車の中へと引き込まれた。



――うわぁん、わたくし、攫われました!!!!!

お金に目がくらんで、幼馴染みを婚約破棄したバチが当たったんだわ





悲鳴をあげる前に、見知らぬ男に口を押さえられる。

抵抗するも馬車の中で目隠しされ、後ろ手に縛られ猿ぐつわをはめられた。

なんとか逃げたいが、身動きできない。


行き交う荷馬車や人々でごった返すざわめき、商店の呼び込みの声がする。

町中を通っているのだわ。町中のせいか馬車はそんなにスピードがでていない。

揺れる馬車のなかで考える。

人さらい? 誘拐?

貧乏子爵家うちに身代金請求してもお金ないのに。

と、いうことは売春宿に売られるやつだろうか?

犯人、もっと美人を狙え!

いやいや美人も狙っちゃダメか、犯人更正して真人間になれ!



しばらくすると馬車がスピードを落として止まった。御者が何者かと話す気配がする。

門が開けられる音がして、私は建物の中に連れ込まれた。


「雇い主が来るまで、しばらく閉じ込めておけ」


私は後ろ手に縛られたまま、部屋に閉じ込められた。

これからどうなるんだろう? こわい。こわい。こわい。

私は震えていた。


震えていてもしょうがない。なんとか逃げ出さないと……

男達が去った後、縛られた縄が解けないか頑張った。

後ろの柱らしきところに、縄をこすりつけたり、いろいろ藻掻いたが縄は解けなかった。


どのくらい時間が立ったのか、部屋に人の来る気配がする。

「戒めを解いてあげて」

女性の声がする。

誰かが部屋の中に入ると縄と目隠しと猿ぐつわを外された。

普通の民家といった造りの部屋が目に入る。


恐怖を覚えながら視線を彷徨わせると、部屋の中にはダリアさんが立っていた。

ダリアさん美人だし、大商人の娘だから誘拐のターゲットとしては大変美味しい人物だ。


「ごめんなさい。腕が赤くなっちゃったわね」

「ダリアさん、貴女も攫われたの?」

ダリアさんは大きく首を横に振った。

「違うわ。本当に貴女ってホント鈍いわよね。貴女を攫ったのは私よ」

「なんで?? ダリアさんが?」


訳が分からず見つめる私を、ダリアさんは憎々しげに睨みつけた。

「ここから出して欲しければ、フィリップ様にもう二度と近づいたりしないと誓って」


うわぁ、フィリップ様いやチャラ男、ダリアさんにも手を出してたか……

なんか呆れる。

喜んで近づきません!って誓いたいけど、貴族の家同士の婚約をしたからには、ハイと言うわけにはいかないのよね。


「ごめんなさい。まだ発表してないんだけど政略でフィリップ様と婚約が決まったの。

だから、近づかないわけにはいかないわ。でも、政略だから愛はないのよ」


「ハッ! 勝利を捧げたフィリップ様の顔を見なかったの? 貴女は、フィリップ様がいつもどんな目で貴女をみつめているかも気づいてらっしゃらないのね。こんな鈍感で見た目にも平凡な貴女と婚約なんてありえないわ!」


「勝利を捧げたフィリップ様の顔って、アレよね? 褒めてもらいたい子供のような顔?」

「もう、貴女ってひとは……」

ダリアさんが額に手を当てて頭を振る。

なんか盛大に呆れられているみたい。


「そうだわ! いいことを思いついたわ。貴女さえいなくなれば、フィリップ様は帰ってくるわ。全部、貴女が悪いのよ!」

「やめてダリアさん、それ良いことじゃないから!」


――うふふ、貴女を亡くして悲しむフィリップ様を私が慰めるの。素敵でしょう?


そういうと、ダリアさんは妖艶にわらった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ