第8話 決意
拝読ありがとうございます。
報告ですが、話の方向性が定まっってきたので、サブタイトルを付けることにしました。
これからこの作品のタイトルは『元箱入りお嬢様は異世界で自由に暮らしたい ~女神に授かった力で最強目指して異世界放浪~』になります。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
転生の間でひとり椅子に座る美しい銀髪の女神は、下界を映す円形の鏡の中で戦いを終えた幼女の姿を見て満足気に微笑む。
「カレン……私の愛しい人。よく頑張ったわね、今すぐ下界に行って抱きしめてあげたいけれど、ごめんなさい。そっちの世界の神に目をつけられると厄介だから、今はまだ会えないの」
鏡の表面に指を這わせた女神ラフィーアは、悲しげにそう言った。
「それにしても一つ目の神位の力を、友達の甦生のために使うなんて妬けちゃうわ。でも、そんな優しいところも素敵よ。カレン」
「《神剣キュラント》はたまたま、持ち主が西の大陸にあるダンジョン内で死んだから私が手に入れる事ができたけれど、他の神器はちゃんと自分で神位持ちから奪い取るか、探して手に入れるかしないといけないわ。とても過酷な旅になるでしょうけどカレンなら大丈夫よね? 早く神位Lv10に到達して、神となって私と結ばれましょう。うふふ」
「それじゃあ、ずっと天界で見守っているからね。おやすみなさいカレン」
ラフィーアはそう言って、眼前に浮遊していた下界を映す鏡を消滅させると、優しげに頬を緩めた。
―――――
廃教会の事件から五年の月日が経ち、カレンは現在10歳になっていた。
暖かな日差しが差し込む緑豊かな中庭で、二人の少女が汗を流している。
一人は白みがかった金髪をポニーテールに結んだカレン。
もう一人は、短めの灰色の髪に獣の耳を乗せたシャロンだ。
シャロンはカレンより一つ年上なので、現在は11歳になっている。
二人は横に並んで、真剣な眼差しで両手で持った木剣を振っていた。
素振りというやつだ。
「シャロン、私ちょっと疲れてきたかも、ちょっと休憩するね」
「うん、わかった。ボクももう少ししたら休憩するよ」
カレンは近くの木陰で腰を下ろすと、素振りを続けるシャロンを観察する。
あの時からシャロン凄く成長したよねぇ。
なんていうか健康的美人って感じ?
腹筋とかも程よく縦に筋が入ってて、でもちゃんと肉はついてるんだよなぁ。
それに胸もカレンより成長している……気がする。
五年前の事件が起きたあの日。
カレンは猛ダッシュで屋敷に帰ったので、無断外出がバレることは無かった。
メイドのサラには気づかれていたような気がするが、告げ口はされていないのでセーフだ。
シャロンも復活後は怪我もなく、何事も無かったかのように家に帰れたらしい。
翌日、カレンはシャロンとの約束を守る為に、お父様のライルに彼女を家で雇ってくれとお願いしたところ。
初めは渋い顔をしていたが、カレンの初めてのおねだりが利いたのか最後には折れてくれた。
のちのち話を聞くと、ここ【スヴァンフ王国】がある東の大陸は獣人族の数が少なく、彼らに偏見のある者が少なからず存在しているらしい。
原因は獣人族や亜人族、エルフやドワーフなどは主に、反対側の西の大陸に住んでいるのと、大昔にあった彼らとの争いや、人族よりも長寿であったり、優れた能力をもつ種族ということで嫉妬で敵対心を持つ者が多いのだそうだ。
ライル自身にそうした感情は無いらしいが、普通の家ならともかく、ヴィノーラント家はここら一帯を当地する領主。
多少の波風は立ったらしいが、ライルの人徳のおかげか、たいした事態にはならなかった。
今ではライルや母のルシールもシャロンを可愛がってくれているので、カレンも嬉しい限りだ。
「カレンちゃん、どうしたの? ボーっとしちゃって」
「ん? ちょっと考え事よ」
「そっか、ボク、そろそろ仕事に戻るね。休憩時間も終わりそうだし」
「うん、ありがとう。また剣術を教えてね」
「わかった。じゃあ、また後で」
シャロンはそう言って、屋敷に戻っていった。
ヴィノーラント家のメイドとして働くシャロンとは休憩時間のたびに、一緒に過ごしている。
カレンは数年前からシャロンにちょこちょこ剣術を教えて貰っていて、今では剣士の職業レベルが2にまで上昇した。
カレンは主に魔法を中心にして鍛錬しているが、もしもの事態に備えての保険のようなものだ。
もし魔法の攻撃が効かない敵が現れた場合。
物理攻撃手段を覚えておけばきっと役にたつはずだ。
「〈ウォーター〉」
カレンはふと喉の渇きを覚えたので、最下級の水魔法を唱えた。
球体状の水の玉が眼前に生成される。
ふわふわと浮遊するそれに口を近づけて飲もうとしたその時。
「あらカレン、こんなところにいたの?」
「ブハッ!」
バチャ!
突然の声に驚いたカレンは、咄嗟に魔法を解いてしまい、青色の服がびちゃびちゃになってしまった。
「お母様!」
「あらあら大変、ごめんなさいね驚かせてしまって、ほらこれで拭きなさい」
慌てるカレンにルシールは持っていた手ぬぐいを手渡す。
カレンはそれを受け取って、体を拭いた。
「ありがとうございます」
「あら? シャロンちゃんはもう仕事に戻ってしまったの? 汗をかいていると思って持ってきたのだけれど……働き者ねぇ」
どうやらルシールは、カレンとシャロンが剣術の稽古をしているのを知っていて、手ぬぐいを持ってきてくれたようだ。
本当に見た目どおりの優しい母親で、カレンもこのルシールのことが大好きだ。
凄く可愛いしな!
「はい! シャロンはとっても働き者の良い子です!」
「ええそうね。でももっとカレンと遊んでいても構わないのに……カレンもその方がいいでしょう?」
「その方が嬉しいですけれど、シャロンは真面目だし、楽しそうに働いているシャロンを見るのも好きだから構わないです」
「そう? カレンは偉いわね。あんな事件が無ければ、少しくらい外で遊んでもよかったのだけれど……」
ルシールが悩ましげに頬に手を当てた。
彼女が言う事件というのは、五年前、何者かに『赤獅子盗賊団』の一味が惨殺された事件のことだ。
殺害された赤獅子と呼ばれていたバジンという男はこの辺りでは有名な盗賊で、かなりの実力者だったらしく、治安維持に一役買っているヴィノーラント家も手を焼いていた。
そんな男が死んだのはこの街にとって良いことだったといえるが、殺害方法が残酷なもので、鑑定士職のスキルを使わないと身元が分からないほど、死体はぐちゃぐちゃだったらしい。
当然、かたぎの人間の仕業ではないという結論に至り、惨殺した犯人がうろついているかもしれない街への外出は、過保護なライルによって禁止されてしまった。
よって7歳になったら外出許可が出るという約束も反故になった。
身に覚えのありすぎる事件なので、カレンは自業自得ということで今は納得しているが、いつか過保護なライルに反抗期という復讐をしてやろうと密かに企んでいる。
「お父様のパンツと私の服を一緒に洗わないで!」とか「お父様臭い」とか言ったらきっとライルは半泣きになるだろう。
いや……もしかしたらガチ泣きするかも。
「あ、そういえばパパが良い魔術師の先生を見つけたらしいのだけれど、雇ってみる? メリアス魔法学校の卒業生でけっこう優秀らしいわよ?」
「メリアス魔法学校ですか。この東の大陸の西側にある【メリアス魔法国】の学校ですよね?」
「ええそうよ。街が魔法に溢れた不思議な国らしいわ。実はママもむかし、魔法学校に入学したいと思っていたのよね」
「そうなんですか? 驚きました。お母様はてっきり魔法や魔術には興味が無いのかと……」
カレンは魔法を使えることを家族や家の者には最近まで隠してきた。
理由は、魔法を禁止されてしまうかもしれないという懸念があったからだ。
カレンはこの世界における魔法というものの立場を正しく認識していない。
もし、ヴィノーラント家が前世でも過去にあったような魔女狩りを推奨するような宗教に入っていたとすれば、そういう事もあるかもしれない。
実際にはそんな宗教は少なくとも、この東の大陸には存在しないようだが。
カレンはそういったもしもの事態を避ける為に魔法が使えることを隠していたのだが。
それは杞憂に終わったので、結果的にはよかったといえるだろう。
魔法を使えるのがバレたのは、ルシールが魔法を練習しているカレンの部屋に入ったことがきっかけだった。
その時のルシールは驚きながらも、八歳にして魔法を操るカレンをとても褒めてくれた。
しかし同時に少し寂しそうでもあった。
カレンはその時のルシールの表情が印象的で、ずっと胸に引っかかっていたのだ。
それ以来、ルシールは魔法の練習中のカレンを黙って影で応援してくれているので、魔法を嫌悪しているというわけでは無いと思う。
「ごめんなさい。カレンにはそう見えてしまったのね。でもそうじゃないの、ママは小さい頃からずっと魔術師に憧れていたのよ。空飛ぶ魔術師のお話って知ってる?」
カレンは首を横に振った。
「昔いた英雄の話なんだけれど、
その空飛ぶ魔術師はどこかで困っている人がいるとすぐに魔法で飛んでいって助けてくれるの。たとえそれが反対側の大陸でも空を飛んで、海を渡って困っている人を助けて回るのよ。ママはそんな魔術師に憧れてたんだ」
なんだかパンのヒーローみたいだなと思っったが、
その英雄譚を語る母の顔は少女のように無邪気で、本当にその物語が好きで、魔術師に憧れていたのが伝わってきた。
「なんで、魔法学校に行かなかったんですか?」
「そうね、カレンにはママの家の事は話たこと無かったわね……ママの実家は下級貴族なんだけれど、とても身えっ張りで、ずっと下級貴族なことに劣等感を感じていたの。特にママの両親と祖父母はひどかったわ」
カレンはそれだけで話の結末が見えてきた。
よくある話だ。
カレンも以前は似たような境遇だったからよくわかる。
「だからどうしても一人娘だったママを階級が高い貴族と婚約させたかったらしくて、ありとあらゆる方法で貴族達に媚を売っていたわ。そんな家だから当然、魔法学校への入学なんて許可が出なかった。あとは賢いカレンにはわかるわよね?」
「はい」
カレンには痛いほどその気持がわかった。
ルシールに慰めの言葉をかけて、自分にもそんな過去があったことを話してしまいたいという衝動にかられたが、当然そんな事はできない。
もし前世で出会っていれば良い友達になれただろう。と、そう思った。
「ママはカレンの魔法に興味が無かったんじゃなくて、とっても羨ましかったの。過去の自分と重ねてしまっていたのね。ごめんなさい」
「お母様、謝らないでください!」
カレンは隣で腰掛けていたルシールにぎゅっと抱きついた。
少し涙目だったかもしれない。
カレンがこの屋敷で自由に過ごせているのは、実はルシールのおかげなのだ。
数年前から、礼儀作法や勉学の先生を屋敷で雇うことが何度かあった。それは貴族としては当然のことだろう。
しかし、カレンが難なく人並み以上にそれらをこなしてしまうとわかってからは、先生が家に来る事はぱったりと無くなった。
それはルシールがカレンには好きな事を好きなだけやらせてあげたい、という育て方をしてくれたからだ。
そうでなければ、昼間から中庭で剣術の稽古などできていないだろう。
「カレンは本当に優しい子ね、ママの自慢の娘よ。だから勘違いしないで、昔はそういうことがあったけれど、結果的に好きな人と結婚できたし、カレンとも出会えた。だから後悔なんてしてないの、ただほんのちょっとだけ羨ましく思っちゃっただけ」
そう言ってルシールは笑ってみせた。
ルシールは母親といってもまだ27歳だ。
そんな感情が芽生えても仕方が無い。まだまだ若いし可能性は無限にある。
だから諦めというよりも妥協の感情が大きいのかもしれない。
「私決めました! 魔法の先生の話はお断りします。代わりにその時間でお母様に魔法を教えることにしました!」
「――!?」
カレンの言葉にルシールは大きな碧眼をさらに見開いた。
そしてとても嬉しそうに顔をくしゃっとして笑うと、カレンに抱きついて、
「ありがとう。大好きよ、カレン」
――――――
その日の夕方。
夕食にままだ早い時間、カレンは街にいた。
〈ステルス〉という姿を眩ませる透明化の魔法を使い〈ウィング〉で街の屋根から屋根へと飛び移る。
この方法だと当然のように地面を走るよりも早く目的地に到達できる。
しばらくジャンプを繰り返していると、街の家の屋根よりももっと高い壁にぶつかる。
この街をぐるりと囲む城壁だ。
この世界にはモンスターがどこにでも住み着いているので、少し大きな街ならばどこにでも造られているらしい。
カレンはその15メートルはある城壁を〈ウィング〉の魔法で跳び越える。
それからはしばらく平原が続くが、カレンはそれを一度も地面に降りず通過した。
すると、ずっと先に見えていた森に到達する。その入り口に目当ての建造物が立っていた。
かつて事件があった廃教会だ。
カレンは週に一度この廃教会に通っている。
現在のカレンの〈ウィング〉での最高移動距離は約3キロメートルだ。
五年前からカレンのレベルはかなり上昇していた。
あの時、強さの追求を決心したカレンは、どんな手段を使ってでも強くなる覚悟がある。
だから少しくらい道の外れた方法で、レベルを上げることに抵抗は無い。
「ステイタス」
==========
「カレンスフィーナ・フォン・ヴィノーラント」
「種族」人族
「レベル」67
体力:788/788
筋力:451/451
敏捷:512/512
魔力:1603/2996
「職業」
『転生者Lv10』
『氷の魔術師Lv5』
『火炎の魔術師Lv4』
『光の魔術師Lv4』
『水の魔道師Lv3』
『重力魔導師Lv6』
『剣士Lv2』
「技能」
『言語理解』『速読Lv10』『熱耐性Lv6』『氷結耐性Lv6』
『超級魔力操作Lv4』
「???」
『神位Lv1』
神器:《女神の十字架》――神位魔法〈リザレクション〉の行使――使用回数1/1
==========
五年間で60のレベルアップ。
屋敷で引きこもっているカレンでは到底不可能な数字だ。
カレンはあれから一度も冒険者ギルドに行っていないし、モンスターを倒したこともない。
ここらのモンスターは冒険者ギルド、ハーリンツ支部によって一掃されているため、出現率は極めて少ない。
モンスターを狙うなら10キロ以上は遠くへ行かないといけないらしい。
なら何故カレンのレベルはこれだけ上昇しているのか。
それはこれから明らかになる。
カレンは壊れた扉から廃教会に踏み入った。
中は五年前とほとんど変っていない。
カレンは中央にある大きな窪みに近づく。
そこは床が抉れ地面がむき出しになっている。
何より目を引くのが、何度も繰り返し焼かれたような焦げた後と、凄惨な血痕。
カレンはこの場所に週に一度必ず通っている。
週に一度なのは、この魔法が週に一度しか使えないからだ。
カレンは慣れたように手を窪みにかざすと、魔法を詠唱した。
「神位魔法――〈リザレクション〉」
巨大な魔方陣が現れ、中心に向かって収縮する。
青白い光が、窪みの中で何かを形を作っていく。
「あぁ……あぁ……あぁ……」
光が人の形を創造して眼前に現れたのは、虚ろな顔をして規則的なうめき声を上げる赤髪の男だった。
「〈火炎葬〉(クリメイト)」
カレンは男が甦生されたのを確認すると、何のためらいも無く次の魔法を放った。
Lv3の火炎魔法は一瞬にして、男を骨の髄まで焼き尽くす。
224回目の死を迎えた赤髪の男が完全に影だけを残して消滅した。
『レベルが68に上昇しました』
約半年ぶりのレベルアップのアナウンスを聞くと、カレンは呟いた。
「そろそろこの方法も潮時みたいね」
次の方法を考えなければならない。
この男の生前のレベルは41、今のカレンよりかなり下の数字だ。
はっきり言ってしまうと、一度殺害したところで大した経験地は稼げない。
このペースではこのまま続けたとしても、次のレベルアップはかなり時間がかかってしまう。
それでは駄目だ。
カレンはまだ強くならないといけないから。
神位のレベルが1になったとき、カレンの頭に流れ込んできた情報が確かなら、
カレン以外にも神位持ち、つまりは神器を持つ者は多数存在する。
唐突だが、この世界は滅びに向かって進んでいるらしい。
昔カレンが読んだ古い御伽噺の本に書いてあった物語。
『かつて一人の神の使いと七人の邪神が戦った壮絶なエネルギーによって時空に亀裂ができた。そして見事邪神を打ち滅ぼしたが、神の使いは戦いによって死んでしまった。そして使いを――つまりは部下を失った神が、その寂しさを埋めるために時空の亀裂にこの世界を造り、人を繁栄させた』
この物語はフィクションではなく真実である。
そしてこの話に登場する神の使いというのが神位持ちの事をさす。
当時の神の使いとやらは、ほぼ神と同格の力を持った存在で、神位Lv10に到達した人物だったらしい。
ここまでならカレンが登場人物と同じ能力を持っているだけなのだが、話はこれで終わらない。
どうやら、この時戦った邪神とやらが一人だけ生き残っていてこの世界を滅ぼそうと企んでいるらしい。
ほんとうにラノベだとしてもふざけた設定に聞こえるが、すべて真実だ。
昔は違ったが、神に作られた今の世界は、神が干渉できないようになっている。
だから、邪神はかつての神の使いのように、下界人に神位という能力と天界の物質である神器を持ちいることで滅ぼそうと考えた。
当然、善側である神も同じ方法で対抗しようとした。
その結果、素質のある者や意志力の強い者が複数神位持ちとなった。
――この時言う素質の定義はカレンにはまだ分からない。
だがそれは賭けだ。
善神が与えた神位と邪神が与えた神位は全く同じ能力。
つまり、悪人が――邪神にそそのかされた神位持ち――神位Lv10に到達してしまえばこの世界は滅ぶ可能性が非常に高い。
世界中にばら撒かれた神器を集めるか、神位持ちから奪い取るか、どちらかの方法、あるいは両方で神位を上昇させなければいけない。
「はっきり言って神位には興味が無いし、世界が滅ぶなんて言われても実感が全然湧かない。でも私が手に入れた神器を狙ってくる敵を、排除するくらいの力はつけないとね」
じゃないとカレンの周りの人が戦いに巻き込まれた時に守れない。
何者であってもカレンの生活を壊そうと企む者を、彼女は決して許さないだろう。
シャロンやルシールやライルその他の屋敷に住む人たちは、もうカレンにとって失い難い者達。
カレンの理想の異世界生活には欠かせない人々なのだ。
「そういえば異世界転生する前に、女神様が言っていたな。この世界は危険だって……きっとこのこうなることも分かって言っていたんだよね。でも私が崇拝する女神ラフィーア様、きっとカレンはここで強く生き抜いてみせます。だから見守っていてください」
全くの的外れだが、カレンはそれを知る由も無い。
あ、いまラフィーア様の微笑みが見えた気がする。
でもカレンは何故か女神様が見守ってくれているという確信があった。
ま、なんとなくだが。
それがあながち間違っていない事を知るのは、たったいま天界で嬉しそうに口元を歪めている女神だけなのであった。