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商店街でダブルデート?


 "出会いの鈴"を使い、ユリナを呼び出して数分後。


 遠目でも大きく見えるゲートを潜ると、絵にかいたようなお祭り騒ぎだ。

 右にはいか焼き、左にリンゴ飴、その隣に焼きそば。

 目移りのしてしまう光景だ。


「わぁー……先輩っ! 見たことのない食べ物がたくさんあります! どれからにしましょうか?」


「屋台も良いけど、少し待ってくれ。寄りたいところがある」


「はいっ! どこでしょうか?」


 本来なら、家で済ませるか会場までの道中に済ませる事。

 そう、お祭りの中の重要な事柄でも上位を争う物。


 そう──


「呉服屋だ!」


 ──浴衣である。



◇ ◇ ◇



 騎士鎧等からわかる通り、AWLは何だかんだ言ってどこか西洋風だ。

 建てられている施設や建物こそ和洋折衷を様しているが、洋風に引っ張られている。


 だが、ここラミュータはお祭りの街であり、今いるのはまさしくその会場だ。

 似合っていても、ここで洋風は──騎士鎧は、許さない。

 というか、雰囲気がでない。


 ユリナに熱弁をすると、ほうほう、と聞いてくれた。

 その横で、由梨菜ことハクアはやはりジト目をしていたが。

 それでも、ちゃんと浴衣に着替えてくれる。ありがたいことだ。

 ちなみに俺も浴衣になっている。

 水色を基調とした、落ち着いた色だ。


 そして、ユリナと由梨菜は今呉服屋で着付けをしている。

 同時に入ったが、女子らしく浴衣選びに手間取り着付けにも時間が掛かっているようだ。


 待つこと数分。

 店員の女性の黄色い声と共に二人が出てきた。


「遅れました」


「どうですか~?」


「お、おお……!」


 ユリナは、聖騎士鎧に似た白地の浴衣。

 薄紫の大きな花の模様が描かれているが、帯は派手な朱色なためその快活さも見える。

 由梨菜は、対照的に黒地の浴衣だ。

 大きな赤い花が一輪、そして小さい花が散りばめられている。帯は藍色で、淑やかさが出ている。

 頭には浴衣と合わせた大きな赤い花のついた(かんざし)をしていた。


 二人とも、とても似合っている。

 店員が思わずキャーキャー言うのも無理はない。


「すごいな、二人ともよく似合ってる」


「……もう少し、捻るとかないんですか。毎回似たような感想な気がします」


「綺麗すぎて言葉がでない」


 ユリナはその言葉に喜び、由梨菜はそれきり感想を聞かなかった。


「んじゃま、屋台に繰り出しますか!」


 二人をつれて歩く。

 貴族の娘のユリナはこういうお祭りを知らないらしく、すべての事にほわぁーと声を上げていた。


「ほい、ユリナ。串肉だ」


「あ、ありがとうございます! 何の肉なんですか?」


「前の森でまれに赤熊、じゃなくてレッドホットベアが出るって言ったでしょ? その肉だって。肉自体にいい辛みがあるよ」


 あれ、レッドホットベアって名前は言ってなかった気がせんでもない。

 まあいいか、ユリナは納得したようだ。

 熊肉も抵抗なく食べている。


「うう~っ、このピリ辛がクセになりますね」


「そうだろそうだろ。病み付きになるんだ。ほれ、もう一本あるけどいるか?」


「ぜひ! ありがとうございます!」


 俺から串を受け取り、はふはふ、としてから口に入れている。

 そして、頬を押さえながら喜んで食べていた。

 

「んぅ~、ん? 先輩、あれはなんですか?」


「ありゃ射的だな。魔法とかスキルとか禁止、あの鉄砲で的に当てるゲームだ」


「むむむ、難易度が高そうですね」


 商品は可もなく不可もなく、と言ったところだ。

 お面のような定番商品に始まり、ゲームらしく各種ポーション、その詰め合わせ、そしてアクセサリー等だ。

 ちなみに、ユリナの様なNPCではなくプレイヤーが射的をする場合横から妨害魔法や壁がランダムで飛び出す鬼畜仕様となる。

 これは、分析眼や遠当てなどのパッシブスキルを持ってる場合があるから取られている措置だろう。


「ほれ、一回百ゼルだ。六発撃てるぞ」


「当てて見せますっ!」


 意気込みとは裏腹に、玉は的の間をすり抜けるように通りすぎていった。

 何回か撃つと寄ってはいくもののなかなか当たらない。

 操作を教えるところからのユリナではさすがに荷が重かったのか、呆気なく六発は撃ちきってしまった。


「うぅ、悔しいです。あと一回、撃ちたいです」


「まあ、程ほどにな? ほれ、百ゼル」


 ふんす、と銃を持ち直す。

 だが、結局三回目まで挑戦しても当たらなかった。


「まあまあ、こういうのもお祭りの醍醐味だからさ」


「なんだか、負けた気がして嫌なんですよ……」


「他にもゲームはあるぞ。輪投げとかな」


「ほうほう、輪投げですか! ……どんなやつです?」


 復活はやっ。


 良いことに、輪投げでは成績を出していた。

 景品ではなぜかレッドホットベアの着ぐるみ手袋をもらっていたけど。



 そんなこんなで、わいわいとお祭り街道を通りすぎた。



◇ ◇ ◇



「宿でセーブ完了、と」


「次回はお祭りの次からですね。お祭り街道を通らなければ街の中心街にたどり着けない設計はどうかと思わなくもないです」


「まあまあ。……さて、これからどうする?」


「どうする、とはなんでしょうか?」


 由梨菜は首を傾げている。

 まあ、これまで攻略するときはしなかったし、わからなくても仕方ないか。


「もし由梨菜に時間があるならお祭り回ろうぜ。次は二人でさ」


「……いいですよ。今夜は時間がありますし」


 ユリナを含む三人で回っているときは、全然由梨菜に構えなかったもんな。

 それに、AWL内ではあるが……デート的なこともしたいし。


「んじゃ、行きますか!」


 

 由梨菜とはゆっくりと。

 一つひとつの屋台をじっくり見てまわった。

 セーブポイントの宿に戻ってくるので、行き帰りで左右の店を制覇した。


「よっしゃあ! 輪投げフルコンプ!」


「体術のパッシブスキルの身体制御能力アップのお陰ですね。それで、景品はどうするんです?」


「んー、実は決めてある。ほれ、由梨菜に送ったよ」


「……なんですか、これ」


「猫耳だ! 厳密には、猫耳カチューシャ!」


 いつも通りジト目で見てくる。

 反射的にトレードウィンドウから受け取りを選択してしまったのを少し後悔しているのかもしれない。


「ここで付けさせる気ですか……?」


「いいだろ~、それ。猫耳カチューシャの黒猫verなんだけどさ、さわり心地も見た目の完成度もスゴく高いんだ」


「敏捷アップ、回避行動制限上限の向上……。無駄に性能高いですね」


「しかも走るときと回避の時、あと気分がそれなりに動いたときにピクピク動く仕様だ」


 その仕様を聞いて、由梨菜の肩がピクッと震えた。

 性能が高い代わりに、色物装備であるからだろう。


「まあ、さすがにつけられないかな、なんてな」


「どうですか、似合ってますか?」


 頬を赤らめ、上目使いで見つめてくる。

 言葉を発すのを忘れるほど良かった。


「さ、触っていい?」


 無言で耳を差し出してきた。

 そろ~っと手を伸ばし、ふにふに、と触れてみる。


「う、うぉ……やわらかいし気持ちいい……」


「ひゃ、あっ」


「……どした?」


「これ、触られてる感触が本当にあるんですけど……ひゃっ! さ、触らないで下さい」


 おお、耳がピクピクしてる。


 と思った数秒後には装備解除され粒子となり消えてしまったが。



「ま、またいつか着けてあげますから」


「おうっ。ありがとな」






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