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とりあえず広場inラミュータ


「よーしお前ら、今日はここで終わりだ」


「ありがとうございました~」


 生徒全員で起立、礼。

 本日の六つめの授業がようやく終わった。


 最後の授業は数学だった。

 授業は指名制、一時間の間に入試問題を最低五問は解かせるというなかなかの鬼畜ぶりだ。

 高二では正直辛くて仕方ない。


「だぁぁぁあ、今週終わった」


「さっ、部活頑張れよ」


「終わってなかったぁぁぁあ」


 むしろ、サッカー部のメンバーである拓真に休みがあると思っているのだろうか。

 机に倒れる拓真を見て周りのクラスメイトまでため息をついている。


「マネージャーでもいたらやる気が出るのになぁ」


「サッカー部なのにいないんだよな、珍しいことに」


「マネージャーいないとやる気も減るんだよ。去年までは三年の先輩のマネージャーがいたんだけど、三年が引退してからいない」


「あぁでも、弓道部もマネージャーはいないぞ?」


「男女合同だろうがよ! 羨ましい!」


 マネージャーがいないとやる気がでない理論だと、弓道部はもれなくやる気ゼロだ。

 男女比は女子が多目ではあるが、そこまで大きな影響があるとは思えない。



 意気消沈する拓真と一緒に教室を出る。

 教室の手口と対面の廊下の壁に由梨菜が待っていた。


「先輩、行きましょう」


「ほいほい。んじゃな拓真、部活お互い頑張ろうな」


「死ねぇ!」


 悔しそうな顔をして逃げるように去っていく。

 いきなりキレられたのは遺憾だが、元気ならいいか。

 隣に並んだ由梨菜と話ながら部室に向かった。



◇ ◇ ◇



 部活が終わり、帰り道。

 学校の出入り口で、先に来ていた由梨菜と合流して歩き始めた。

 由梨菜には何度か友達と帰らないのかと聞いたら、友達とも帰っているらしいし大丈夫とのことだ。

 帰り道には、やはりAWLの話題が出る。


「今日は何時にできそう?」


「二十二時以降でしたら大丈夫です。細かいタイミングはまたお互い連絡でどうでしょうか」


「了解。どこまで進めるかな」


「……学校の話とかも、帰り道にはしたいんですが。あんまりAWLばかりだと成績も落ちますよ?」


「中堅は保ててるから、大丈夫……と、思いたい」


 順位は半分の少し上。

 得意教科は平均点より上、苦手な教科は平均点を少し下回るという感じだ。

 まあ、AWLで少々落ち込みぎみではあるけど。


 ちなみに、言うまでもなく由梨菜はトップクラス。

 なぜ普通科なのか、という感じだ。

 

「テスト前になったらまた勉強会しましょうか。その方が良さそうな気がします」


「……やろうか。一日勉強漬けでもなんとかなるのは勉強会だしな、うん」


 夏休みの間、ついこないだのテスト期間。

 それぞれで由梨菜と休みに会い、どちらかの家で勉強会をしたことがある。

 他人が見ているというのはサボりにくくもなるし、何より弛んでると由梨菜にジト目を向けられてしまう。


 まあ、前回は後半に拓真とかが混ざってきたりはしてるのだが。


「また拓真が嗅ぎ付けて混ざってくるかもな」


「そうしたらいつも通り加奈も呼びましょう。加奈なら篠原先輩を抑えることはできるでしょうし、途中で寝ることも無いですから」


 加奈というのは、由梨菜の友達だ。

 クラスが同じ、部活は違うがかなりの頻度で一緒にいるのを見かける。

 たしかテニス部で、ショートヘアーの元気な後輩だ。



「どちらかというと先輩はまず自分の心配をしてくださいね。今は中堅層かもしれませんが、少し落ち込んで来ていましたよね」


 上級に行かなくてもいいですからせめてとどまって下さい、という言葉が視線に込められている。

 実際に入学したときから高い順位の由梨菜に言われてはなにも反論ができない。

 よって、


「が、頑張ります……」


 と言うしかなかった。



◇ ◇ ◇


 

 場所は変わってAWL。

 自分の高校は三学期制だから、十月には二学期中間試験が控えている。

 そのため、由梨菜からは二十二時少し前にもう行けますと連絡がきていたが少し待ってもらい、納得できるところまでやってからダイブした。


 そして、今は新しい街であるラミュータの広場だ。

 由梨菜は、先に潜ってますねと言っていたから既にたどり着いているはず。

 そう思い広場全体に目を向けて……ため息をつく。


 個人の保護のために変えられはするが、プレイヤーの顔は基本的にリアル寄りのランダム生成をされる。

 ちゃんと変えられてはいるのだが、知る人がみれば何となくわかるのだ。

 ただまあ、検証のために双子がアバターをつくったら寸分の違いなく同じ顔になったらしいが。


 つまり、ある程度の平均化や変化はされるがどこか面影が見える。

 よって、平均化されるアバターでさえ美少女の由梨菜は他のプレイヤーからよく見られるのだ。

 広場を見渡した俺は、一人でいた由梨菜に絡んでいる人を見つけてしまった。

 明らかに困り顔の由梨菜……もとい、ハクアに近寄る。



「ねぇ、やっぱり人を待ってるって嘘でしょう? 俺と攻略いかない? もしくは手伝うからさ、どの男キャラ相手に選んだか教えてよ。攻略とか見てるから手助けするよ」


「いえ、本当に人は来ますので。それに自分はまだ男キャラ決めてないですし、問題ありません」


「おや、そこから? それともフラグの建て方がわかんなかったりする? じゃあ、説明したげるからさ」

 

 ……避けられるって気がつこうぜ、うん。

 というか、俺は由梨菜に連絡してからここに入ったハズ。

 それから合流までの数分でナンパされる辺り流石である。


 とりあえず助けにいこう。

 合流しなきゃ話にならない。


「悪いハクア、待たせた」


「いえ、私もここに来たばかりです」


「……なに、知り合い? というかハクアってプレイ名なんだ、いいねぇ。ねぇ、やっぱり俺と──」


「先輩、今日は最初歩くんですからね。時間かかるんですから。──というわけで、失礼します」


 律儀にも由梨菜は相手の男に頭を下げている。

 男はどうやら気に入らないらしく俺を睨み付けてきた。

 今すぐにも何か言ってきそうだ。


「なっ……なんなんだよテメェ! 横入りすんなよ!」


 案の定というにはあまりにも読めやす過ぎる。

 退散してたらまだ良かったのに。


「横入りもなにも、ハクアの待ってた人ってのが俺なんだけど」


「横入りのうえに盗み聞きか、マナーはどうした!」


「お前にマナー云々言われるとは思わなかった。とにかくさ、お前が知らなかったプレイヤー名を俺が知ってた時点で諦めろよ。見苦しいぞ」


 そこまで言われて男は何も言えなくなったのか、舌打ちをして去っていく。

 GMに訴えてやる、とか呟いていたがこんな案件をGMが取り合うわけがない。

 ましてやナンパを仕掛けた方が訴えて取り合ってもらえるとも思わない。

 結論は気にしなくていい、だな。



「……ありがとうございます」


「良いのいいの。それよか、俺のせいもあるけどこれ以上遅れるのはいただけないからそろそろ動こうか」


「そうですね。ラミュータはたしか……」


 そこで、何度も辿った道なのにハクアは首をかしげた。

 分からないのではなく、運営というかデザイナーを理解できないだけである。

 



「……出店街をデート、でしたね」


「何度辿っても意味わからんイベントだよなぁ。必要なんだろうけどさ」



 ラミュータ。

 通称、お祭りの街である。






わからない人がもしいたら、ということで一応用語解説~


・GM

 グランドマスター、もしくはゲームマスターの略。

 分かりやすく言えばゲーム管理者のこと。

 どちらを略したものかはゲームによって異なる。

 ちなみに、AWLではゲームマスターの略らしい。

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