悪役令嬢は悪魔なヒロインの耳掻き当番
ガールズラブ的な表現が含まれています。
「この者をマイ・ヒメヅキ専属の耳掻き当番の刑とする」
あの日、王城で婚約者や王子、それに弟や先生の前に立たされ。わたくしは同じ光の魔法適正者で庶民のマイ・ヒメヅキに数々の嫌がらせをした罪やバレた過去の罪で国外通報になる筈でしたが……何故か庶民のマイ・ヒメヅキの提案が通り……マイ・ヒメヅキ専属の耳掻き当番にされてしまいました。
「レオナ様?今日から私の耳掻きをお願いしますね」
「………お断りしますわ」
「おいレオナ!マイはお前のために……!」
「……リオン良いの。私の部屋でレオナ様、耳掻きお願いします」
「ふん……せいぜい、耳を壊されないように気をつける事ですわ」
「僕は姉さんに大切なマイの耳掻きを任せるなんて……反対だな。マイの耳掻きなら僕が二人きりで優しくしてあげるのに……。今からでも王様に変更して貰おうよ。ねっ、良いでしょ」
わたくしの弟のマイルがあの女に近づいて、あんな気持ちの悪い言葉を言いました。我が弟ながら何故あの庶民の女に執着してるのか分かりませんわ。ですが、良い提案ですマイル。
あの女の耳掻きするくらいなら、国外追放になったほうが幾分かマシですわ。
だがマイルの提案に、あの憎たらしい笑顔であの女は答えた。
「いいえ、私の耳掻きはレオナ様に決めているのです。いくらマイル様でも耳掻き当番の変更はできません。これは王様も理解していただけたので、今から誰が変更を申し込んでも受理できません」
「そんな、王様に言っても変更出来ないなんてそんなの可笑しいよこんなの。このまま姉さんがマイの耳掻きをしたら絶対にマイの耳を……ずたずたに傷をつけてしまうよ!そうだろみんな!」
そうよマイルの言うとおりですわ。だからわたくしを国外追放にしたほうがよろしいのです。
「……マイル、マイを心配するのは良いが。もう少しマイの決断を信じてやっても良いんじゃないか」
「でも……!」
「これはマイが決断した事だ。おまえに変更する権利はない」
「っ!?」
マイルもっと頑張りなさい!あなたが頑張らないとわたくしは、あの庶民の女の耳掻き当番にされるのですよ!?早くなんとか言いなさい!あの女が……あの女がわたくしに耳掻きさせる前に!
「レオナ様、今から私の部屋で耳掻きをお願いします」
「!?」
あ、ああっ……誰か……誰かいませんの!?わたくしを国外追放したいのでしょ?憎いのでしょ?なら、この女の耳掻き当番させないで国外追放にしたら良いのですわ!
「レオナ様?私の部屋に行きますよ。そういえばレオナ様は、私の部屋に来た事ありませんでしたよね?なら……レオナ様が迷わないように手を握ってあげます」
ひぃいいい!触らないでちょうだい。だ、誰かいませんの?マイル!マイルーーーー!姉を助けなさい、あなたはこの女を好いているのでしょ?なら、国家権力にも負けずに頑張りなさい!
「マイル様、そこを退いてもらえますか?」
「う、うん」
う、うん。じゃないですわああぁぁああああ!さっきまでの、気力はどこへ行きましたの……!?
もう、マイルじゃダメですわ……何か……何か……っ!り、リオン!そうですわ。わたくしの婚約者のリオンならあの女の耳掻き当番からわたくしを解放してくれる筈ですわ!
「リオ……」
「そうそうリオン。私はレオナ様に耳掻きして頂くので、今日は一緒に居られないの」
「そうか……じゃあ、明日マイと一緒に居られる時間を楽しみにしているよ。……レオナもマイのために頑張るんだな」
この男は……もう既にマイに落ちてますわ。
みんなこの女が正常だと思ってますわ……表向きは正常ですけど、裏では……。
「ふふふ、レオナ様が私から離れないようにこうしておかないとダメですね」
指を絡ませないで!わたくしを引きずらないで!だ、だれかー……。
「んふふ、レオナ様の太腿の感触はとても良いです。今までの彼女達よりも素晴らしい寝心地で、これは最高の耳掻きが期待できます」
「くっ、このわたくしの身体はあなたの言う事を聞かねばなりませんが……心まではあなたのような女には屈しませんわ!」
「ふふ、そう言って彼女達もレオナ様のように……私の虜になっていきました。レオナ様はどのくらいで彼女達のようになるのか……楽しみです。まあ、その前に壊れてしまわないか心配ですが……んふふ」
この女は部屋にわたくしを連れ込むと、ベッドの上に私を座らせて……この高貴なわたくしの太腿の上に頭を乗せたのです!そして、ここにはわたくし達しかおりませんから……この女は本性を現しましたわ。
同性愛者……人誑し……この女は欲しい女はどんな手を使っても、手に入れる。たとえ……男に触れられる事すら嫌なのに、自分を騙して男達を誑しこむ。
わたくしは婚約者の様子が可笑しくなったので調べていたら、なんとこの女の存在を偶然にも知れたのでいろいろと狙いを調べていると……わたくしが狙いだと知った時には、もう手遅れでしたの。
何時の間にかこの女に嫌がらせをしたとか、他にもやってもいない悪さをしてたとかで……気が付いたら王城でいろんな人に囲まれて、やってもいない罪で責められて。今はあの女の狙い通りに、わたくしはあの女の手が届く所に来てしまいましたわ。
「ふ、太腿を撫でないでくださいませ!これ以上撫でるようなら、耳の奥に棒を差し込みますわよ……!」
「弟の……マイル様」
この女!わたくしの大切な弟に何をするつもりだ!
「っ!?マイルに何をするつもりですの!わたくしの弟のマイルに何かありましたらただじゃおきませんわよ!」
「んふふ、あんなにマイル様の事を気持ち悪いと思っていそうなのに……心の底ではちゃんとお姉さんらしく、心配しているのですねレオナお姉さま?心配なら、その耳掻き棒で私に何をしてくれるのでしょうか?」
この手に持っている耳掻き棒で、今直ぐこの悪魔のような笑みをニタニタと浮かべている女の耳の穴に思いっきり差し込んで……もう、二度と悪さを出来ないように息の根を止めたい。
でも……でも、それは出来ない。きっとこの女に何か合ったら、マイルが……。
「くっ……ま、マイルの事なんて全然心配しておりませんわ!マイルはああ見えて、剣の腕も水の魔術の成績も人望もありますの。あなたの企みに、いつか気がついて……あなたを断罪してくれますわ」
「ふぅん、要するに今は私に害する事はしないから……弟の事は見逃して欲しいって事でしょ?だって私を傷つけたら、マイル様がどうにかなっちゃうから。今は私に従って、何時かマイル様が自力で私の企みに気がついて断罪してくれる事を期待してるのでしょ?」
わたくしの目を覗きこんで、この女はまるで心を読んでいるかのようにわたくしの思いを暴露する。
この女はどこまでも、わたくしの事を見透かしていますの……?この女をわたくしが始末しようとしても、弟のマイルに何か合ったらと思うと……手が石のように動かなくなってしまいますわ。
この女の事を好きになったマイルは言動が気持ち悪くなりましたが、それが無ければマイルはとても大切な弟。そのマイルが人質になってしまえば、わたくしはこの女を害する事が出来なくなってしまいますの……。
「ねぇねぇ、レオナ様?まだ太腿撫でちゃダメなのかな?」
太腿の上に頭を乗せるこの女はわたくしの事をキラキラした瞳でじっと見つめて、太腿を触れるか触れないかの所で手を動かしてそう問いかける。ぞくぞくと触れてもいないのに、わたくしの太腿にあの女の手が這いずり回る感触で鳥肌がたちそうですの。
わたくしはこの女の問いにこう答えなければいけない……例えプライドを捨てても。
「と、特別に許可してあげますわ……ひゃあ」
「特別に……許可?レオナ様はこの私に言わなきゃいけない言葉はそんな言葉じゃないでしょ?じゃないともっと奥にいっちゃうよ?」
この女はスカートの中に手を入れてきました……。ちゃんと言わないと次は、もっと奥に触れてくるつもりでしょう。そこを触れられると思うだけで、わたくしの喉の奥から吐き気がせり上がってきますわ。
「どうぞわたくしの太腿を好きなだけお撫でください……」
「じゃあ、遠慮なく触るねレオナ様♪」
無邪気な笑顔で、言うこの女。
この可愛らしい笑顔で、何人の犠牲者をだしていますの?
「くっ……」
わたくしはこの女の耳掻きをしながら……太腿を這い回る不愉快な感触に耐え続けなければいけません。何時助けが来るか分からないこの状況で、わたくしの心はこの女の責めに耐える事ができるのでしょうか?
「ねぇねぇ、レオナ様♪……私のためにずっと笑顔でいてよ」
「こ、これで良いのですわ?」
「んふふ、そんな作り笑顔のレオナ様には罰を与えないといけないね」
この状況で心の底から笑顔になれる筈がありませんわ……。
気が付くとわたくしはこの女と鼻が触れ合う距離に顔を近づけていました。
そして、僅かな時間でしたが……確かに触れ合いました。
「んっ!?」
「んっ……」
な、何をなさいましたのこの女は……!わたくしの初めてを初めてを……よくも!
「んふふ、これが罰だよ。だってレオナ様は私の事が嫌いだから……これなら罰になるでしょ?でもでも私はレオナ様を心のそこから愛してるから……私にはご褒美だね♪」
ううっ……早くこの部屋から出て、口を洗いたいですわ。
これから……こんな毎日が待っていると思うと、少しだけ泣きたくなりますがきっと……きっと、弟のマイルや婚約者のリオン。王子のライナに魔道師のジャスそして私が出会っていない誰かがこの女に断罪を与えてくれますわ……。
まだ、希望が残ってるますもの……この女にどんな事をされようと屈しませんわ。
『ふーん、こんどのレオナ様は中々壊れなさそうで嬉しいな。前のレオナ様はみんないなくて直ぐに壊れちゃったからね。今度のこの世界では希望って言うニンジンをぶら下げてみたけど、私の馬はどこまで壊れずに走ってくれるのかな?今度こそ心の底から私を愛する私のレオナを手に入れて、究極魔法リセットボタンとはおさらばしたいな』
この女は突然、わたくしに理解出来ない言葉で何かを喋っていますの……。
でも何か重要な事を言っているような気がしまわ。
「今の言葉は何語ですの?」
「んふふ、内緒ですよ?さあさあ、固定されたお話のエンディングの後はフリーなお楽しみの時間だよ。これからは、攻略キャラじゃないレオナ様を攻略しちゃうからね。攻略できるまで何度でも繰り返す。私は主人公、エンディングの後じゃないと自由な未来を選べない。今からレオナ様エンディングを目指して頑張ろう」
「何を言ってますの?」
「えーと、システムへの挑戦状かな?」
ここまで呼んでくれてありがとうございます。
悪役令嬢が壊れたらヒロインに繰り返される物語、悪役令嬢がヒロインとくっついてハッピーエンドを向かえるまで救いはありません。