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ロスト
真っ暗な雲が空を包んで土砂降りの雨が降り注ぐ
ヘルメットに息がかかって曇り、よく前が見えない 。
いろは坂が襲いかかる。
黒いふたつのタイヤが黒い道を切り裂いていく
俺の400は悲鳴を上げスリップした
瞬間に俺はいままでのことが頭に駆け巡った。
所謂底辺校だが最高の仲間達の事
朝から家から口喧嘩して出ていった事
春先に振られた事
アルバイトしてようやく手に入れた400の事
「こんなところで俺は死んじまうんか」
高校二年生、6月。
斎藤翔太は死を覚悟した。