倒れる大魔王様
投稿再開します。
不定期ですが書き溜めた分を投稿しますので一日数回は更新する予定です。
さて、大魔王ヒーロと名乗ったのはいいが…
比呂斗はまたもや気絶していた。
魔力欠乏症である。
「訓練する、付き合うがよい」と言われたルシールが介抱している。
目が覚めていたら興奮するであろう、美少女の膝枕であった。
最初ほど時間も掛からず6時間も寝ていれば意識も回復するのだ。
しかし、相変わらず攻撃の魔法になると全魔力を打ち出すのである。
比呂斗曰く、最小の魔法で、雷じゃなく静電気と願って打っても山を吹き飛ばす有様…
これで山を吹き飛ばしたのは10個目であった。
「う、またか…」
懲りないなあ俺も…
でも諦められん、これだけは。
よく確かめもせずに、起き上がったんだけどね、今俺膝枕されてたよね……
いやいや、そうじゃなくて、真面目な話、また倒れたか。
「はい、最初程の激しい魔力欠乏症の症状では御座いませんが」
失敗例を挙げてみよう…
「風の魔法で巨大竜巻が出来て、静電気で雷撃爆破。
火を出そうとして閃光爆発。闇を作れば消滅魔法。
いっその事と思って破壊魔法を唱えたら大地が揺れて爆発が起きて落雷があった。
山が5個は一気に吹き飛んだよな」
碌で無しですね…
「はい…まさに大魔王に相応しき力」
慰めは嬉しいけど、
この結果は戴けないだろう。
「だがな、ルシールよ、
余としてはこの結果は不満なのだぞ?
このように常に倒れるのはいかん」
「御意」
コレはあれか、攻撃しようとするのが駄目なのか。
じゃあ違う魔法はどうなんだろう。
「いっそ方向性を変えるか…
余は攻撃に拘り過ぎていたのではないか」
「しかし、ヒーロ様、魔族の扱う魔法で他と申されましても」
「飛ぶのはどうだ」
そうだよ、魔法といえば飛行!
後はなんだろうな…
「そうでございますね、比較的よく見られる魔術です」
「ふむ、やってみよう」
おお、体が浮いている!
意外と自由自在、なんだいけるじゃないか。
「フゥハッハッハッハ、
見よ欠乏症を起こしておらん」
俺にも…魔法が使えた!
うん、浮いてるぞフハハハハ。
コレは楽しいが飛び回ってると威厳がないな、降りよう。
「おめでとう御座います」
「攻撃魔法ではないなら使用可能な魔法もあるか…
うむ、回復魔法などはどうだ」
「魔神官などが使える魔術でございますね、
傷などを受けたときに回復しますが」
「そうか、傷を受けねば使えぬのだな…
これは又の機会にしよう」
「私どもは魔術として使うのですが、
身体能力の向上などは自らの魔力で行います」
「ふむ、身体能力を上げるのは出来そうだな」
おお、これは便利だ…
そうだ、よくある魔法武器とかどうだろう。
「『業火の剣よ我が手に』」
あっつぃアチチチチチ!
「あ、熱いな」
「火傷なさいますよ」
「だが出来たぞ」
「これならば付与魔法はお使いになれそうですね」
おお、なんだかかっこいいぞ。
「古の武器で大魔王が作ったと言われる物が存在します。
炎を宿す剣や雷を呼ぶ剣などがあると伝承に御座います」
「よし、やってみたいな」
「では我が剣でお試しくださいませ」
「うむ、ルシールの望む剣はなんだ」
「私の願いはこの地の民を守ること、
大魔王様に歯向かうものを悉く切り捨てる剣で御座います」
うーん、さすがいい答えだ。
どんなのがいいのかな、切れ味を増やす付与なんて出来るのだろうか。
「『全てを切り裂く闇の刃をこの剣に宿さん』」
うぉ、魔力がごっそり減ったぞ。
さっきの炎の剣とえらい違いなんだけど!?
「どうだルシール、試しに何か切ってみてくれるか」
「ハッ、お預かり致します」
え、いやいくら付与したからってその岩は剣が折れると思うよ。うん。
「せぇっぃいやぁぁあー」
スッ、パーンッ!
ルシールの目の前にあった巨大な岩が左右に切り分けられた。剣の大きさと比べても不自然な現象である。自分で魔法を使って山を爆破しているのにこれ位でも驚く、いや逆に身近でこの現象が起きたから驚いたのだ。
切れたね…うん真っ二つだ。
「ヒーロ様…これは伝家の宝刀となりましょう」
「うむ、そのままその剣は使うが良い」
「宜しいのですか」
「フフフ、我が魔法で攻撃すればこの通りの有様よ、
ならば武器をそなた達に授けてやるのも一つの方法であろう。
実はその剣だけで魔力が半分程すわれたからな、
そうそう大量には作れぬだろうが」
「ありがたき幸せ、ですが御気になさらないで下さい、
我が領土はもとより山が多く、開墾の必要が御座いました、
資源の回収と新たな開拓地、我らにとっては行幸です」
「そうか、そうであるなら良いのだがな」
数日の間に山が消滅していった事が魔界全土で知れ渡り、更なる混乱をきたしているなど二人は全く知らなかった。




