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お出掛けする大魔王様その2

 数日後、地獄の稽古を終えた比呂斗はまたしても視察へと赴いていた。新市街地から旧市街地、そして裏通りの探索の為という名目での外出だった。


 そして愛妻理論という不可思議な論理に基づく結果でもあった。既に二日ごとにルルとヴィヴィも大通り巡回コースは楽しんでいるのだ。流石ににレオナとの出会いのようなハプニングは無かったが楽しい一時を過ごす事が出来た。


 そして今日は勿論4人でのお出掛けの予定になっていた。フクの仕事の予定まで計算し尽しての準備を進めた。勿論フクちゃんも非常に協力的だったからこそ実現したのだ。


 先日の騒ぎで既に旧市街の治安体制も改善が進んでいた。可能な店舗を買い取り警邏の番所を作成し、交渉次第では新市街地への斡旋なども行う事で治安維持を進め。同時に傭兵など入隊希望者を選別する試験を実施する事となった。また傭兵斡旋所や冒険者組合(ギルド)には今後狼藉に対するきつい取締りの通告を出し、入国に関しても仕事の証明が出来るまで武器などの預かり措置などを取り入れる事となる。


 これで武器を持つ者は職を得たものか警邏のみとなり、斡旋所や冒険者ギルドは雇用に関しての責任を負う事になった。その代わりに税の軽減と国からの依頼を増やしたのだ。


 世の中飴と鞭の使いまわしをしないと回らない。


 そして治安が安定してきても貧富の差は簡単には解消できない事で、これは公共事業が進んでも簡単には改選し無い事だった。これは時間をかけて飢えるものが居ない国を目指すしかないと判断した。ピラミッド型の経済構造でしかこの時代の経済は回らないからだ。


 今日の目的としてはその手の事の解消になにかいいアイデアが浮かべばいいなという思惑もあった。


 裏通りを中心に見て回ると、子供達が遊びまわっているのだが、一言で言えばスラム一歩手前の状況、マンホールチルドレンではないが、子供が働き組織だって動いていた。


「これは……」

「恐らく大魔王様降臨前の戦争で親を無くした子供達ですね」

「そうか、以前にも戦争は何度も」

「そうですね、少なくとも必ず年に一度は隣国との小競り合いがありましたので」

「アメラも宗教戦争ではなく単純な侵略戦争を我が父の代で行っておりました」

「魔界の軍勢も暇をみては国境を越えようとしておりましたから、夜間戦等にてゲリラ的に活動していましたが、兵士の損耗はそれなりでしたし、夜盗なども徘徊していましたので」

「夜盗なんかも多かったのか」

「今では減りましたが」

「非常に逞しいと云えばそれまでだが、これはどうにかすべき問題だな、今日の視察はこれで終わろう、至急城に戻るぞ」


 昔の偉い人が『人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり』と云ったとか、ならば次代を担う子供達のこの現状は頂けない。



 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆



「では計画を説明しよう」


 今回の内容は内政の分野ではあるが国の方針として決めるので主だった家臣にも召集を掛けた。


「民とは国民であり、民こそが国である。国とは民なくして成り立たない、そして子供達は将来の国其の物だ。以前の戦争で親を失った子供達も含め我等には子供達を育てる義務がある」


 ルルは珍しく国民の為という理由で俺を召還したんだけど、習った知識からすれば国民もしくは領民とは王又は領主の財産という考えが主流の世界だからな、俺の発言を聞いた皆が唖然とするのも仕方ない。


 だが俺は魔王だ、やらなくてはいけない。


「よって、大魔王児院の設立を最優先事項とする。建設場所は新市街地とし、先ずは仮設で構わぬから軍の天幕を利用し2日で仕上げよ」

「国庫の負担がかなり生じそうですな」


 山を吹き飛ばして鉱石を手に入れて裕福ではあるが戦争準備などで余裕を持っていないが現状。

 フクちゃんの意見も尤もな話だ、敢えて判っているのに云うのだから、勿論解決策ぐらい用意してますよ。


「大魔王児院では教育を施す他に自給自足の為の耕地を与える事もあるが我の稼ぐ装備費、輸出品からの利益によって運営するので国庫の負担にはならぬ」


 お小遣いではないのだが山を吹き飛ばして作った土地などを売却した利益は自分用に管理されている、一部の土地は自分の農地として既に開拓事業にしている、国にお金が無くても個人資産は大量にあるから問題など無いのだった。


 即座に計画は実施される事になり大量のテントが新市街地の端に設営された。軍事訓練の一環としてルルの手配で翌日に出来上がった事からも先日の戦争だけでなく訓練が行き届いているのが良くわかる仕事ぶりだった。


 施設を建てるまでのその場凌ぎのテントだが野宿しているに比べればという所だ。プレハブなどの施設建設技術は無いので変に木材で仮設住居を作るよりも軍事用の天幕の方が快適だしね。早めに寝泊りのできる施設は作らないといけないけど、其処は大工次第になる。とは云え投げっぱなしにする訳ではない。石材切り出しようの付与魔法(エンチャント)道具や一輪台車などを作成して建築の手伝いもしたし、農地耕作用の付与魔法(エンチャント)を施した土螺工手トラクターVr.1.01の導入なんかもした。


 軍事用物資を運ぶ為に内燃機関の開発をしようとして余りにも難しく諦めようとした時に閃いた魔石を利用した魔道装置を軍事より早くこちらに利用しただけなんだが、これは素晴らしい発明だと自分でも絶賛できるよ、何故なら子供でも使えると云う高性能っぷりはルル達を初めとして開発に携わった親方まで驚かせたからな。


 問題があるとすれば子供が動かすには魔石に魔力を充填させるのが大変だという点だろうか。カートリッジ式にしてあるので問題もないのだけどな。




 実際、この時点でどの国にも無い魔導工学という新たな技術体系を築き上げている事を比呂斗は知らない。

 そして自分が開発したこの土螺工手トラクターVr.1.01よってスイペン王国がどの国よりも豊かになっていく事まで知らず、日々カートリッジに魔力を注ぐ忙しい日々を送るなど夢にも思っていなかったに違いない。それは後日「こんな筈じゃなかったのに」と作業部屋から聞こえてきた叫びが物語っていたのだった。


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