大魔王様の后達
果たして俺は本当に正しい選択が出来たのだろうか。そんな物はハーレムの前には考えるまでも無いという強者も存在するだろう。満足してないのかと言われるとこれ以上ない満足が俺にはあると答えられる。
だが一人ずつ増えたのならまだしも同時3人はどうなのだろう。
いやわからない、鈍感系主人公なんて小説があったら途中で読むのを放棄してた俺である。ハーレムなんて作れば即ちそこには【平等】を持ち込む必要があるのだ。
この【平等】とは一人一人に対しての愛情の示し方や接する時間の事を示していない事は判るだろうか。其々が不満と思わない接し方が大事なのだ。
朝から次の日の朝まで全力をもって3人を愛する。あれ休みが無いんじゃないかなんて考えない!
あの日以来、俺の生活は変わった。唯一変わらなかったのは付与魔法の時間だけ。これだけは3人共に納得してもらった。現を抜かすには早い段階なのだから。とはいえど、他の時間の変更具合は仕方がなかったし、なにより3人を娶るとなれば公式にアメラにも使者を出す必要もあった。そして内外に対する布告を大々的にする必要と3人同時結婚という儀式を行わないといけないのだ。
こればかりはフクに任せるわけにもいかずロッティに協力を要請した。花嫁に自分の式の裏の手配までさせる訳には行かないのだ。まあ俺がロッティから呆れた目で見られたのは3人の美女を手に入れる代償だと思えば、思えば、思えばまあ耐えられないことは無い。大事な所だから3回言っておいた。そう代償なのだ。
いっそリア王とでも改名しようかと思う程だった。
親方には言ったとおりだろと親指を突き出されていた。親方、人差し指の間に入れると違う意味だぞ、娘さんの教育問題もあるのでこっそりと教えておこう。
ちなみに少し問題があった、結婚式で誰に誓うんだよという話だよな。
じつは魔界の教会では大魔王もしくはその地を収める魔王に結婚の誓いをする。
俺に俺が誓うって変じゃね?
これがまず一つ目の疑問だった。確かに言われてみればと3人ともに頷いた。自分を信じる自分を信じた自分を信じろでは意味がわからない。であるならば単純にこの国に住まう者達全てに宣誓しようではないかとなったのだ。
次に3人の立場であるが、俺は第一王妃を決めないと宣言した。これは立場の問題だけではない。色々な関係も全て考えた上での判断だ。決してあとで3人から責められるのが怖いとかの理由だけではない。
実際考えるだけで恐ろしかったが、それよりもアメラの立場やルル、フクの今後の事を考えた上での判断である。一応は考えなくてはならない後継者問題ではあるが、基本的に死なない大魔王が頂点となるのである。子供の人数なんてドンと来いだ。そもそも長寿の生物は簡単に子供が出来ない。
そしてヴィヴィの事である。3人の中で唯一人間であるヴィヴィの寿命問題があると思っていた。これが速攻で解決した時にはどうしようかと思った程である。恐らく子供が3人の中で一番できやすいのはヴィヴィであった。そして妊娠と同時に大魔王の加護と血の交わりによって魔族へと転生する事になるらしい。
過去にも天使が大魔王と触れ合い、そしてそのまま恋に落ちて子を成したときに堕天使として魔族へと転生した記録や、人間と恋に落ちて魔族になったなどという逸話が大量に存在していたのだ。歴代の大魔王は一体なにをしていたのか、そんな事を思いたくなったが自分もその一人となったのである。強くは言えない。敢えて述べるなら、先例を残してくれて有り難う。
「アメラへの使者が到着して早くとも2ヶ月は掛かることになる。それが最短での結婚式の予定だな」
「そうですね、楽しみです、あなた」
「それまでしっかり働きませんとね、あなた」
「私もお手伝いできる事は何でもしますわ、あなた」
やはりリア王に改変の必要があるのでは無いだろうか。
そんな馬鹿な事を朝食を4人で食べながら思っていた。
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流石に夫婦になるからといって修行は一切手を抜かれなかった。いや、以前よりも厳しくなったのでは無いだろうか、そんな激しさは夜中にとっておいて頂きたい物でだ。
「うおおおお」
ちなみに掛け声ではない、逃げてる悲鳴である。A級までの事象改変能力完全防御の衣服を互いに着込み、さらに最高の訓練用戦闘服を用意した事。そしてルル達の鎧も考案していた凹凸式甲冑改Vr.1.02を装着する事によって機動力が増したのだ。
つまりそれ程痛くはなくなったが事象改変能力や魔術が解禁となった上での戦闘訓練が繰り広げられているのである。打撃も完全に防御したかったのだが、それでは訓練になりませんと言われてしまったのでダメージはある程度通る付与魔法に止められている。
よって先程のように事象改変能力と魔術、さらに剣技に追われた俺の絶叫が響き渡る事になる。
「B級をいつの間に即時詠唱なんて技を!」
「決まってます、昨日の夜の間にですわ、キャッ」
キャッじゃねえし!確かに恥ずかしいけどならば自重しようよ。
「自重!、普段確実に使える魔法や魔術で挑まないと訓練にならないぞ」
「わかってますわ、ヴィヴィ。でも貴方も子供ができたらきっとこんな風に戦闘を楽しみますわ」
「そ、そうかな、じゃあ参考にしておくよ」
「参考にしなくていいから、そのまま自重させてくれ」
「駄目ですわ、ヒーロ様には必ず3人で掛かっても払いのけれる強さを身につけて頂きます」
「そうです、私達の為ですよ旦那様」
「ぐほぁ」
「今隙だらけすぎてついつい打ち込んでしまいましたわ」
「だ、大丈夫だ、ちょっと動揺しただけだから」
「では御主人様、行きますわよ」
「うぎゃあああ」
訓練は通常運行であった、いや何時もの3割り増し程である。なぜならあと一人がそのうちやってくるのだから。
「お待たせしました、アナタ」
そう、この特訓は必ず4人で行う事になった。午前中に必ず2時間、みっちりと剣術と魔術の対戦訓練が行われるのである。執務の段取りを終えたフクが今日は最後である。これは日々微妙に変わる事があるのだ。
そして最後は3人相手に打ち合うという無茶を要求されている。この3人は俺に何を求めているのだろうか。防具のお蔭で多少は軽減されるけど、一人一人でも大変なのにね。
何か別の称号でも俺につけようとしているのでは無いかと戦々恐々だよ。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
午後は都市計画を始めとして内政、軍備の時間、もしくは国内視察の時間だ。
日によって相手が変わるのだがこの時間は日替わりでデートタイムである。勿論仕事はしている上で一緒の馬に騎乗したり飛竜にのって出かける。
ここ数日は戦場跡地に向かって防衛線構築の視察と同時に協力をしていた。
連発は不可能であるが超強力な一撃で堀を一瞬で作り出す。そして休憩は後方の原っぱで膝枕。本日の供はルルで、思えば最初から一番膝枕をしてくれていたのもルルだった。
「なあルル」
「なんですか」
「俺は元々大魔王なんかじゃないんだ」
「知ってますよ」
「そうか、そうだよな」
「ええ、確かに最初は大魔王サナンの特徴をもった方を召還できたと喜びましたが」
「が?」
「余りに優しそうな目付きに、優しげな喋り方。この方は普通の片なのだと思いました」
「そうか、バレバレだったのか、ちょっと恥ずかしいな」
「いえ、一生懸命に大魔王であろうとしてくれて居た事は私も、そしてフクも知ってますから。それに違う意味で優しいことをヴィヴィだって知っていますわよ」
「そうだろうか、そうだと良いのだがな」
「何をお悩みですか」
「いや、大したことじゃないさ」
「はい、今しばし御休憩下さいませ」
「有り難う」
まったく敵わない嫁さん達だ。よく考えないでおこう、全員年上だなんてな……ある意味年齢が関係ない結婚なのだから。そして女性に年齢の話をするのは何があっても控えねばならない。これは姉からの忠告とでも言おうか、言葉にせず伝えられた事なので無伝奥義の一つとでも言える真理の一つなのだから。
素晴らしい嫁を一度に貰った喜びはふとしたときに訪れるものなのだった。膝枕をされて風がそよぐ。そんな景色の中でひと時の安らぎを感じて比呂斗は幸せな眠りに落ちていくのだった。




