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大魔王様怒る

 ユイキス教。

 人間の国で信仰されている一神教である。他の多神教に比べ排他的な教えが多く、疫病などは魔族が原因であると言って憚らない。神によって作られた世界は人間によって支配されるべきだと主張して多種族を差別する事で信者を獲得し、国教としている国も多い。なにせ信者の数が多いから国としても放置できなかったらしい。


 現代日本から召還された身としては馬鹿じゃないの?と思う反面、神様っているのかもしれんなとは思う。

 なにせ俺が大魔王だしな。


 そう考えれば神様も下手をすれば魔王みたいに沢山いて、そのうちの一人が中二病を拗らせて俺の信仰が一番だからと言い出したとしても不思議ではなかった。


 簡単に考えればそんなもんじゃないのかとフクに尋ねたら概ねその通りだと答えられた。


「人間のいうところのユイキスも神の一人に過ぎませんよ」

「でも神なのであろう、であればそれなりの事をしたのではないのか」

「魔王と同じレベルですね、存在的にはですが」

「それはどういう事だ」

「私達の魔王、ルルなんかは一族で代々魔王として君臨し、民の為に統治してきました。

 ですが神は宗教というものを用意して信じる信者のみを増やしたのです。信じないものは敵であると神託などといって戦争を起こしたりさせてますから……」

「それじゃ、よっぽど悪魔みたいな所業だな」

「簡単に言えばそうなりますね」


 なんとも物騒な話だが、神が命じた戦争だと言って勝手に人間が戦っている可能性もある訳だが、はたしてユイキスという神はどう考えているか一度顔を合わせて説教をしてやりたい気分である。


 なにせ現在目の前にユイキス教の軍隊がずらっと勢ぞろいしているのである。


 領土を奪う為、宗教を信じさせる為の戦争だなんて真っ平御免でぞ。

 巻き込まれる側の事を考えろよと本当に思う、住み分けしてる土地に態々侵攻してくるなんてな……。


「申し訳ありません……」

「ヴィヴィが謝罪する事ではないぞ」

「ですがヒーロ様、私にはこの戦争を止めれなかった王族としての責任が」

「王族か、王族がそこまで責任があると我は思わぬ。

 民衆を騙すユイキス教その物が悪であるのだよ」

「ヒーロ様……」

「一撃で……我が対処すれば退くであろうか」

「恐らく難しいかと」

「何故そう思う」

「一般兵はともかく、あれの殆どはユイキス教騎士団の旗」

「ふむ、たしかに全面にあるのはそのようだが」

「であれば、死兵となろうと殉教する事をよしとして戦い続けてきます」

「そうか、だが、我は……できれば争いたくないのだがな」


 人を殺す覚悟ができているのか、そう問われればNOである。

 喧嘩やなんだと学生時代には幾度かしたこともある。だが人殺しなんて経験は無い。

 俺が魔力(ウィスクラフ)事象改変能力(マホウ)を発動させれば少なくともあの半数は吹き飛ぶんだ。だが使わなかったら?


 ルルやフク、そしてヴィヴィも親衛隊も、そして見回りについて来た兵士なんかも……

 俺の知っている人達が傷ついて死ぬかも知れないんだ。


 俺は悩んで決めたのに、此処まで来るまでに考えた筈の迷いがまだ吹っ切れてなかった。


「ヒーロ様、御無理は為さいませんよう」

「我等だけでも彼の軍勢如き蹴散らして見せます」


 ルルとフクそれに親衛隊までもが心配をしてくれる。

 駄目だこの子達を傷つけさせる訳にはいかない。


「最終通告を……矢文で送ってくれ」


 俺は決心した、来るなら潰すと……



 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆



「そのまま撤退するならば許す、だがもしも我が領土へと侵攻の動きあれば殲滅する。大魔王」

「不作戯ているのか?

 なにが殲滅だ……伝説ではあるまいに。構わぬ進軍せよ、正義の神は我等と供にあり」

「司祭様、ですが山が無くなったとの報告もありますが」

聖戦クルセイドとは如何なる犠牲をもっても行う物。

 第一軍から第四軍まで編成を別けて当たればよいのです。

 これは聖戦クルセイド、死は神の元へと赴く為の試練です」



 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆



「動いたか……」

「軍を別けて来ましたか。ただの愚者ではないという事でしょう」

「なるほどな、軍を別ける事によって大規模魔法に対抗するようです」

「ルル、フク、軍の指揮任せたぞ」

「ヒーロ様、私を護衛としてお連れ下さい」

「ヴィヴィ、良いのか、辛い光景をみるぞ」

「構いません」

「ならば頼もう、では予定通りの作戦で頼む」

「お任せを、この日の為に特訓を重ねた日々をご覧頂きます」

「魔王の名に賭けて、ヒーロ様よりの策実現させて見せましょう」


 出立に際して儀式を執り行い、兵士を鼓舞する。


「我はこの地に侵略する者など許さん、排除せよ!」

「大魔王様のお言葉の通り我等の地を穢さんとする者に死をくれてやれ」

「侵略者に鉄槌を、これまでの訓練で我等は強くなった、大魔王様の加護もある、国を守るための勇士達よ、今こそ力を振るう時ぞ」


 フク、そしてルルの言葉に兵達が咆哮をもって応じている。

 親衛隊とヴィヴィに守られながら前線に到達した俺は溜息を吐きつつも覚悟を決めた。


「我に歯向かう者共よ、その愚かしい行為の代償。己が命をもって支払うがよい!」


 戦場に響き渡る声の増幅魔法による宣言。

 俺の声が戦場に響き渡った。

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