第64話 エミリーナ
ここはどこだ……。
セイジが目を開けると、そこは暗闇の中だった。
地面も何もない暗黒の海の中で、セイジは一人揺らめいていた。体を動かそうとしたが、うまく動かない。
俺は死んだのか? そう考えて首を捻った。
黒鎧との死闘が終わった直後に倒れたのは覚えている。しかし、倒れたのは体力が限界をむかえたからで、死ぬような傷は負っていなかったはず。
考えられるのは左足の傷だが、そこまで出血は酷くなかった。それとも知らない合間に致命の傷を負っていたのだろうか……。
考えるセイジの前に急に光が現れた。光は暗闇を塗りつぶし、急速に広がっていく。あまりの光量にセイジは目をつむった。
光がだんだんと収まっていく。セイジが薄く目を開くと、そこには金色の髪を持った麗しき女性が立っていた。
……クレア?
女性を見た瞬間そう思ったが、即座に「違う」と頭の別の部分が否定した。
目の前にいる女性はクレアそっくりだった。だが、微妙に違う。
一番違うところは身長だった。150cm足らずのクレアに対して身長は170cmはある。女性にしてはかなりの高身長だ。
また、顔の感じが少女の顔ではなかった。もう少し年齢のいった……母親の女性の顔つきだ。
10年後のクレアはこんな顔だろう、とセイジは思った。
(ありがとう……)
突然、暗闇の中に声が響いた。その声はクレアそのものだった。
(セイジさん、貴方のおかげでクレア達は救われました。本当にありがとう)
口は動いていない。声が頭の中で反響して聞こえる。
(貴方は誰だ?)
セイジは言った。言ったつもりだが、声は出ていない。しかし、それは言葉となって頭の中で反響している。
(さあ、誰でしょう?)
聞こえているようで、目の前の女性が微笑んだ。もっとも答える気は無いようだが。
(俺は死んだのか?)
(いいえ、生きていますよ。貴方は今、眠っています。力を使い果たしてしまったのです)
(そうか……)
セイジはほっと息をついた。死ななかったことより、クレアを悲しませずにすんだ方に安堵した。
女性の体がふわりと動いた。セイジの方に近寄り、手を取った。
(貴方は優しき方ですね。どうかその心でクレアを癒やして上げて下さい)
そう言うと、女性は微笑みを消し、悲しそうな顔をした。
(あの娘にはかわいそうなことをしました。高い魔力を宿らせるために女性と男性、両方を持たせることになってしまいました。あの娘にとっては辛い日々だったでしょう)
(どういう事だ?)
セイジは女性に問いかけた。
女性の口調はクレアの体にワザと女性と男性二つの機能を与えた……そう言っているように聞こえたのだ。
女性はセイジの問いかけに答えなかった。悲しそうな顔から再び満面の笑みに戻った。
(クレアのことをお願いしますね。あの娘のことを倖せにして上げて下さい。貴方ならばそれが出来ます)
(……勝手だな、さっきから)
こちらの質問には答えず、言いたいことを一方的に言っている。勝手な女だった。
女性は片目をつむって、悪戯っぽく微笑んだ。
(そうですよ、知らなかったんですか? 神様って言うのはいつも身勝手なものですよ)
(何!?)
(さあ、お戻りなさい。貴方の愛しき人が帰りを待っていますよ)
今なんと言った!
そう問い返そうとしたセイジの体が光に包まれた。あたりの暗闇が一瞬にしてまばゆいばかりの光に変わった。
同時に自分が落ちていった。急速なスピードで光の海の中を落ちていく。
(クレアちゃんとお倖せにねー)
ひらひらと手を振る女性の姿を見ながら、セイジは光の中に飲み込まれていった。
セイジは再び目を開いた。
見えたのは赤い天井、それとかすかな日の光。
赤い天井? 俺はまだ変な世界にいるのか?
セイジは顔を左右に向けた。置いてある調度品や壁などどこか見覚えのある部屋だった。そして自分はベッドに寝ていた事に気が付いた。最初に見えたのは赤い天井ではなく、赤い布地の天蓋だった。
セイジは身を起こそうとして、ふと体に重みを感じた。体の上に何か乗っかっている。視線を下に向けると、毛布の中から金色の髪と細い手が覗いていた。
「……クレア」
セイジは手を伸ばし、クレアの頭を撫でた。さらさらの髪に手を差し込み、頬を軽く撫でる。
う……うん、とクレアが声を上げ、頭を上げた。目が半分以上閉じたまま、半寝ぼけの眼差しでセイジを見ていた。
その目が一瞬で大きく開かれた。
「セイジ様!!」クレアは叫ぶと、セイジの方に擦り寄ってきた。そして細い手でセイジの顔を挟んで、自分の顔を近づけた。
「大丈夫ですか!? お体は……なにか……どこか異常とか、おかしい所はありませんか?」
「い、いや、特には……だいじょうぶ……」
言いながらセイジは目をそらした。
別に異常があるのを隠したわけではない。あまりにもクレアの顔が近くにあり、気恥ずかしくなったのだ。
「本当に……本当に大丈夫ですか?」
「ああ……大丈夫だ。クレア」
セイジはクレアの頭に手をやって、自分の胸元に抱き寄せた。もっとも顔は背けたままだ。
「良かった……良かった……」
クレアは呟きながら涙を流していた。ぽたりぽたりと胸元に涙が零れ、伝っていく。
本気でセイジを心配し、想ってくれているのが解る。だが、今のセイジにはそれよりも気になることがあった。
何となく悪い気はしたが、セイジは聞いてみることにした。
「ところでクレア、聞きたいことがあるのだが」
「はい……なんでしょうか?」
クレアが涙に濡れた顔を上げた。
「あのさ……なんで俺は裸なんだ?」
そう、セイジは一糸まとわぬ素っ裸だった。下着すら履いていない。
そしてもう一つ気になる点……いや、最大に気になる点があった。
妙に下半身がすっきりしているのだ。まるで一戦終わった後のような感覚だ。
「あ……あの……その……ええとですね」
クレアは顔を真っ赤にして俯いた。言葉を濁し、セイジの胸に「の」の字を書く。
……俺、まさか寝ている間にクレアを襲った?
セイジの頬を冷たい汗が伝った。クレアを抱いている手が震えてくる。
クレアは修道衣ではなく、タオルローブを纏っていた。それは簡単に脱がせられるデザインの衣服だ。また下着は身につけていないように見受けられた。セイジは無意識のうちに襲いかかり、脱がしてしまったのではないか、と考えたのだ。
「その……話せば長くなるのですが……」
クレアは真っ赤な顔のまま、ぽつりぽつりと話し始めた。
黒鎧……カツタダとの死闘の後、セイジはその場に倒れてしまった。
クレアは慌ててセイジに駆け寄り、体を揺さぶって呼びかけたが、セイジは全く反応しない。
左足の傷口が再び大きく開き、血が溢れていた。残っていた魔力で回復魔法をかけ血は止まった。が、やはりセイジはぴくりとも動かなかった。
クレアの声を聞き、レナードとギル、それに数名の兵士が戻ってきた。レナードはセイジの脇に跪き、手首を握ったり、胸に手を当てた。
「レナード様! セイジ様が……セイジ様が倒れて、反応がないんです!」
「……心臓も、脈も問題ありません。怪我もそれほど深いわけでないですので、大丈夫かとは思いますが」
泣きながら訴えるクレアをなだめながら、レナードは呟くように言った。
「レナード、セイジ殿とクレア様を連れてセラヴィまで戻ってくれ。ここはもう大丈夫だ」
ギルはそう言って後ろを見た。レナードも振り向き、頷く。
既に勝敗は決している。ガガンボはただ逃げ惑うばかりで攻撃の気配は無い。あとはただの残党狩りだった。残っている兵士達だけで十分だ。
「……そうですね、解りました。戻りましょう、クレア様」
「はい!」
レナードはセイジを背負い、クレアと数名の兵士を連れ戻ることにした。途中で捨てていた馬車に乗り直し、拠点ホテルセラヴィまで戻ってきた。
「クレア!」
ホテルに入るなり、ロビーにクレアを呼ぶ声が響いた。
セリアだった。侍女の制止も振り切り、クレア達の方に駆け寄る。
「お母様! セイジ様が……セイジ様が……」
クレアの目に再び涙が浮かび上がった。母に生きて再会出来た感動と、セイジの安否を想い涙が溢れる。
セリアはレナードの背中でぐったりとして動かないセイジを見て、目を見開き、息を飲んだ。
「セイジさん……そんな……貴方まで……」
セリアがへなへなと膝を折って崩れた。クレアが慌てて駆け寄る。
「お母様違います、セイジ様はまだ生きています。でも、目を覚まさないのです! 私はもう魔力を使い切ってしまいました。お母様、どうかセイジ様を救って下さい」
「生きている……セイジさんは無事なのですね」
「はい! お母様、どうかセイジ様を……」
「解りました」セリアはすっくと立ち上がった。色を失っていた目に力が戻る。「レナードさん、すぐにセイジさんを私の部屋に運んで下さい!」
「え?」
「早く! 急いで下さい! 時は一刻を争います!!」
「は、はは!!」
レナードは慌てて頭を下げると、慌てて走り出した。
「それでセイジ様をお母様の部屋に運び込んで治療したんです」
「成程……ここは猊下の部屋だったんだな」
セイジは首を回し、辺りを見回した。部屋の作りは自分達の部屋とよく似ているが、大きさは2倍以上違った。セイジが寝ているベッドの大きさも2倍くらいは違い、また豪華な天蓋が施されている。
しかし……ずいぶんと大騒ぎになっていたようだな。
セイジは後頭部を掻いた。ただ疲れ果ててぶっ倒れただけであり、そのままほっておいてくれても良かったくらいだ。
出血も派手に見えるだけで生死に関わるほどではない。それはレナードも解っていた事だろう。奴が思わぬ事態に困惑していく様が目に浮かんだ。
「……で、何で俺は素っ裸で寝てるんだ?」
ここが猊下の部屋であると言う事は解ったが、まだ肝心なことが解っていない。
クレアは顔を赤らめながら話を続けた。
「セイジ様の足の怪我は深く、治療の際に衣服を一部傷口に巻き込んでしまったんです。すぐに切除するため、衣服を脱がしました。その際に他の部分に怪我がないかどうか確認するために全部衣服を取ったんです。
それで……治療が終わったんですけど、セイジ様は目を覚まさなかったんですね。もう命に別状はない、と解ったんですが、私は心配で……そうしたらお母様が『セイジさんが目を覚まさないのは愛の力が足りないからだ』と」
「はい?」いきなり話が激しく横転して転がっていった。クレアは続ける。
「エミリーナには……その男女の営みを通じまして、相手に生命力を送り込む方法と言いましょうか……そういったものがありまして」
「ああ……まあ、聞いた事がある」
そういうものがあることは知っていた。別にエミリーナにかかわらず、そういったものは武術や経典の中に形を変え、数多く残されている。
実際に効果があるかどうかは定かではない。そういった行為を正当化するために作られたものとも言われている。
「で、それをクレアはしたのか?」
肝心なことを聞くと、クレアは燃えさかるほど顔を真っ赤にして俯いた。
「いえ……セイジ様の命に別状はない事も解りましたし、それに……やっぱり初めてはセイジ様に優しくして頂きたいなーと……」
話ながらクレアの声はドンドン小さくなっていき、最後はほとんど独り言のようになっていた。
「じゃあ、何もしなかったのか?」
「……その、昨夜セイジ様の体をお拭きしていたのですが、その時……あの、一部が大変お……お元気になっておりましたので、簡易版の方を……施そうと思いまして」
「簡易版?」
「あの……その……あの部分を、その口とかでですね……」
「ああ……」頷いて、クレアの頭をポンと叩いた。
聞いていたセイジの顔も赤くなっていた。耳まで熱くなっているのが解る。
セイジは窓に顔を向けながらクレアの頭を撫でた。恥ずかしくてまともに顔が見られなかった。
「まあ……すまん、いろいろ心配かけた。丸一日目を醒まさなくて、クレアも心配だったろう」
「ち、違います、セイジ様!」クレアが俯かせていた顔を勢いよく上げた。
「違う? 何が?」
「1日じゃありません! もうあれから丸々3日以上経っています」
「へ?」セイジは間の抜けた声を出して、クレアを見た後、窓に顔を向けた。まばゆいばかりの光が流れ込んでいる。どう見ても朝の光だった。
セイジは腹に手を当てた。猛烈に腹が減っていた。喉の渇きがそれほどではなかったので一日位寝ていたのだろうと思ったが、腹の減り具合から確かに3日以上経っているらしい。
後で解ることだが、喉がそれほど渇いていないのはクレアが水を飲ませていたからだった。セイジが溺れないよう、コップ一杯の水を1時間以上かけてゆっくりと口に染みこませるように飲ませていた。
「そうか……ほんといろいろ迷惑かけたな、クレア」
「そんな迷惑だなんて……私はセイジ様さえ無事であれば他に何も……」
クレアはセイジの首に手を回した。そのまま頬をすり寄せ甘えかかる。
と、急にクレアが顔を上げた。
「そうだ、セイジ様、約束を……」
「約束?」
「約束したじゃないですか、帰ってきたらキスをいっぱいしてくれるって」
「は? 俺そんなこと……」
と言いながら、セイジの頭に出撃直前の風景が浮かび上がった。
クレアの求めに応じて、キスをした後だ。クレアはお気に召さなかったらしく、唇を尖らせていた。
……帰ってきたら、やり直して下さいね。もっといっぱい、飽きるほどしてもらいますから。
……わかった、わかった、帰ってきたらいくらでもしてやる。
……ほんとですか? セイジ様、約束ですよ。
ああ、確かにそんな事言っていたな、とセイジは思いだした。
もっともセイジから約束したことでは無く、クレアが一方的に押しつけた約束の様な気がしたが。
そんなことを考えてる内にクレアが顔を近づけてきた。セイジの首に回っていた手が上がり、両頬にあてられた。
「ちょ、クレア」
「セイジ様はクレアとキスするの、お嫌ですか?」
「そ、そんなことはない……」
セイジの言葉の途中で、クレアが飛び込んできた。そのまま唇を重ねてきた。
それは情熱的なキスだった。ただ唇を重ね合わせるだけではない、クレアの舌はセイジの唇を割って入りこみ、舌を捉えそのまま絡まりあう。
普段の静かなクレアからは想像も付かない、身も心も熱くとろける程の激しく、熱いキスだった。
しばらくして、クレアが唇を離した。苦しかったのか、大きく深呼吸している。
「息するの忘れてました。鼻で呼吸すれば良かったんでしょうけど、それどころじゃなかったです」
「ああ……そうかい」
セイジは頭を枕に戻し、天井を仰ぎ見る。
ドキドキ、と心臓が激しく鼓動していた。年甲斐もなく、キス程度で弾けんばかりに心臓が、頭がはしゃぎ回っている。
「えへへ……セイジ様」
クレアが甘えかかるように覆い被さってきた。そのまま再びキスしようと顔を近づける。
「お、おい、クレア、まだするのか?」
「飽きるまでします、っていいました。私はまだまだ全然ちっとも満足していません」
にこにこと満面の笑みを浮かべ、クレアが近づいてきた。
また、二人の唇が重なり合おうとした、その時だった。
「クレアちゃん、セイジさん目を覚ました?」
ノックもなしに扉が全開に開けられ、セリアが現れた。クレアの動きが止まり、セイジと共に扉の方に顔が向けられる。
「「「あ……」」」と3人の声が重なった。
「そんな……初めから上に乗るなんて……クレアちゃん、恐ろしい娘……」
セリアが斜めに崩れ落ちた。その動作はいかにも大げさで、顔は笑っていた。
「お、お母様!!」
「あ、ごめんなさい、お邪魔しちゃったわね。退散するから続けて続けて」
セリアは「ごゆっくりー」と言いながら扉を閉めた。
何とも言えない空気が二人の間を流れた。やがて二人の顔が戻る。だが、先程までのとろけた空気は吹っ飛んでいた。熱い空気は冷や水をぶっかけられたようにどこぞへと霧散し、二人はなんとも微妙な顔で見つめ合っていた。
なんか言わなくては……セイジはそう思ったが、なんと言って良いか解らない。
「ええと……クレア……」とりあえず呼びかけた。必死に次の言葉を考える。
グゥゥゥーーー、と大きく腹が鳴いた。静かになった部屋に響き渡る音に、やがて見合っていた二人がクスリと笑った。
ナイス腹、とセイジは心の中で親指を立てた。
「……まずはご飯にしましょう」
「ああ、頼む」
クレアが体を起こし、脇にあった修道衣に手を伸ばした。着替えようとしているクレアを何となく目で追っていた。
「あの……恥ずかしいから反対を向いていて下さい」
視線に気が付いたのか、クレアが背を向けたまま、顔だけセイジの方に向け、呟いた。
正直今更感たっぷりだが、セイジは弾かれたように顔を背けた。
「す、すまん。俺の服はあるか?」セイジは誤魔化す様に言った。
「あ、そちらの椅子の上に」
セイジのすぐ目の前の椅子に新しい下着と、いつもの服が置かれていた。
何となくシーツを腰に巻き付け、服を取ろうと手を伸ばした。その手がぴたりと止まる。
……この絵は?
目線にあった一枚の絵に気が付いた。それは椅子に座って微笑んでいるクレアの絵だった。
しかし、すぐに違うと解った。クレアそっくりであるが、この絵に描かれている女性はクレアではない。
身長が違った。座っているため解りづらいが、クレアよりも遙かに高い。顔のタッチも少女ではなく丸みを帯びた3、40才くらいの女性だった。年齢からすればセリアに近い。が、セリアとはまたどこか違う。
そして、先程夢で会った女性にそっくりであった。
「お待たせしま……した?」
着替え終わり、振り向いたクレアが不思議そうな声を上げた。セイジが着替えることもなく、その場に呆然と立っていたからだ。
「どうかされましたか? 下着、合いませんでしたか?」
「クレア……この絵に書かれているのは……姉さんか誰かか?」
「え? ……あ、い、いえ、それはエミリーナ様です」
「エミリーナ?」セイジは絵に視線を戻した。
「エミリーナ教の開祖であらせられます。数千年前、魔王が人間を支配していた頃、人間を司る神の御一人であったエミリーナ様は、地上の状況を大変憂慮なされていました。しかし、神々は人間世界の不介入を決めており、一切の手を出さなかったそうです。
ある日、エミリーナ様は神の座を捨てられました。人間として下野なされ、人々を導いたそうです。その後、一人の男性と結ばれ10人の子をお産みになりました。その10人の子は勇者となり、魔王を討ち滅ぼしたそうです。
その後、子の一人がエミリーナ教を立ち上げ、エミリーナ様は初代法皇になられました。20年間、法皇として人々を導いた後、再び神となって天界に還られたそうです」
それはこの世界に生きる者ならば、一度は聞いた事のある御伽噺である。セイジも子供の頃聞いた覚えのある話であった。
「クレアに似ているな」
「そ、そうですね……よく言われます。身長は全然違いますが、顔はそっくりだと」
セイジはため息を大きくついて、がりがりと頭を掻いた。
「ずいぶんと身勝手で気分屋な神だったな」
「え……何がですか?」
「……なんでもないよ」
セイジは下着を身につけながら、クレアに微笑みかけた。
次回更新予定がまたまた不明です(泣)
うまく行けば5月1日(金)に更新出来るかと……




