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第60話 抱擁

 やられたな……。


 ホローは眉をしかめ、下唇をかみしめていた。


 黒鎧の体から黒いオーラが溢れているのがはっきりと見て取れた。それだけではない、持っている大剣からもオーラを感じる。

 それは魔導のオーラだった。


 ホローの放った魔法、太陽烈火(ソーラーフレア)は確かに黒鎧に命中した。黒鎧が立っていた場所は爆発でえぐれ、側にいたガガンボは全て跡形もなく消し飛んでいた。両側にあった建物も爆発で半壊している。

 にもかかわらず、目の前の黒鎧にダメージは見られない。魔法の直撃を受けながらそのまま突進し、ゼオ達50人の兵士をたった二振りで葬り去った。


 バルが言っていたのはこのことだったか。


 先程の会合の時、バル司祭から魔法抵抗の高いミノタウロスの話を聞いていた。何かの装置が仕掛けられていた形跡があったが、詳細は不明とのことだった。

 目の前の黒鎧はそれを有しているのだろう。魔導抵抗の高い素材というのは存在するが、太陽烈火を完全に防ぐ物など存在しない。

 鎧から発せられている黒いオーラ……おそらくあれが魔法を完全に防いでいる。黒鎧は無傷だったが、他には普通にダメージが通っている事から見ても間違いないだろう。


 そして持っている大剣も魔導の力を兼ね備えた物と見て間違いなかった。

 どんな剛剣だろうが鎧をそう簡単に真っ二つにはできない。叩き斬られた死体の鎧は溶け、切断面は焼け焦げている。剣で切ったのではなく、炎で焼き切ったというのが正しいのだろう。


 今更解っても全ては遅い。ゼオを失った今、決着はついてしまった。



 兵達は次々逃げ出していた。それを止めようとする者、パニックになり悲鳴を上げ続ける者、腰を抜かしてへたり込む者等、現場は大混乱となっていた。


 ゼオは自らも前に出る指揮官だった。後方の安全なところで兵達に指示を出すのを良しとせず、現場に出て兵達を鼓舞し、その場にあった的確な判断をする。

 指揮官が自分達の目に見える位置で戦っているため、兵達の士気も高く、かつ効率的に戦える。


 今回はそれが完全に裏目に出た。目の前に現れた黒鎧の気迫に兵達が飲み込まれたのを見て、自ら前に出て鼓舞しようとした。だが、逆に黒鎧に突撃した50名と共に斬られてしまった。

 兵達は眼前で、カリスマであるゼオの死を見せつけられることになってしまった。さらに恐怖でグランドナイツであるロベルトが逃げ出し、部隊は完全に制御不能に陥っていた。


 ホローはちらりと後ろを見た。が、何も言わずに視線を黒鎧に戻した。


 ゼオならば一喝して部隊を納められるだろう。が、ホローにはそれが出来ない。

 ホローはグランドナイツでありながら、指揮官ではなくあくまで一兵士だった。人を褒めることをけっしてせず、基本叱ったり小言を言うことしかしない。飴と鞭を使いこなし兵達の心を掴むゼオとは正反対の男である。

 自分が叫んだところで何も効果は無い。それが解っているからホローは黒鎧に向かって一歩踏み出した。


「ホ、ホロ-様……」


 隣にいたもう一人のグランドナイツ、ギルが蚊の鳴く様な声で呟いた。


「ギル、勝負は決した。ここはワシに任せ、兵を連れ一度退け」


「わ、私が退くわけには参りません。自分も戦います。伝令ならば兵に……」


「その震えて止まらない足でか?」


 ホローの言葉にギルは「うう……」と呻いた。

 ギルの足はガクガクと震えていた。声も震え、歯がカチカチと鳴っている。


「はっきり言ってやろう、邪魔だ。相手に飲み込まれ、震えが止まらない状況でどう戦うつもりだ?」


「し、しかし……」


「ゼオを失った時点でワシらの負けだ。今残っている兵達も浮き足だって使い物にならん。むざむざ死人を増やす必要は無い」


 まだ兵の半分近くは残っていた。もっともホローの言う通り、ほとんどの兵士はただ逃げなかっただけで、使い物にはならない状態だった。


「猊下の元に行き、脱出されるようお伝えしてくれ。……ああ、あと傭兵達にもこのことを伝えてくれ」


「ロウガ殿に……ですか?」


「いや、あの刀遣いの男……セイジとか言ったな、あの男だ。あの黒鎧を斬れるとしたらあの男しかいないだろう」


「……彼……ですか」


「そうだ、奴が間違いなくこちら側で最強の男だ。ワシもゼオもお前達も、もしかしたら栄光の十人(グローリエス)でも及ばないかもしれんぞ」


 ホローは笑った。


 ギルは微妙な表情で頷きもせずホローを見ていた。だが、心の中では頷いていた。

 法皇室で受けた凄絶な気合い、黒鎧の放つ殺気に勝るとも劣らない程の鋭い殺気だった。

 自分では到底黒鎧には勝てない。だが、あの男ならば……。


「さあギル、兵達を連れ下がれ! 猊下にお伝えしろ!」


「…………解りました。申し訳ありません」


「謝る必要など無い。己が成すべき使命を果たせ! それがエミリーナの兵としての仕事だ」


 ギルが「全員、退けぇ!」と声を張り上げた。



 兵達が退く音を背後で聞きながら、ホローは剣を抜くと、黒鎧……カツタダに向かって歩み寄った。

 カツタダは大剣を地に置き、自らが斬り殺した死体の真ん中で悠然とたっていた。その顔は面頬(めんぽお)に覆われており、目しか覗けていない。その目はどこか力なくホローのことを見つめていた。


 ホローが振り向くと、エミリーナの兵20人ほどがいた。ギルの退却命令に従わず、この場に残った兵士だ。全員完全に目が据わり、一切の震えもない。死を覚悟し、残った兵だった。

 ホローは特に何も言わず、前に向き直った。ゼオならば「去れ」と言うのだろうが、ホローにその気は無い。自分と同じ様に死の覚悟を決めた兵だ、好きにさせることにした。


 二人の距離が10mほどに縮まった時、カツタダが面頬に手を当て、外した。髭で覆われた肉厚の顔が表れた。


「お主は逃げぬのか」


 髭で覆われた口が動いた。

 ホローは答えなかった。剣を構えたままカツタダを見据えている。


「無駄死にすることも無かろうに」


「無駄ではない」


 ホローが口を開いた。


「我らエミリーナの……グランドナイツの意地、その身に刻んでやろう」


「面白い……見せてもらおうか」


 カツタダはにやりと口を歪ませ、大剣を担ぎ上げた。






「もうすぐ夜が明けますね」


「ああ……」


 クレアの言葉にセイジは顔を横に向けた。その視線の先には何もなく、黒い鉄壁が存在するだけだった。

 時刻は午前4時を過ぎていた。日の出の正確な時間は知らないが、あと少しすれば明るくなるだろう。


 セイジとクレアはゼオ達の応援に駆けつけるため、馬車に乗り東門へと向かっていた。

 馬車も西門に向かう際にリムとクレアを乗せた特殊装甲馬車だ。2人乗りのため車内はかなり狭く、光源のランタンが天井につるされている以外に何もない中で、セイジとクレアは向かい合わせで膝をつき合わせ座っていた。

 セイジは歩いて向かうつもりだったが、レナードに


「隊長はいざというときのために体力を温存しておいてください」


 と言われ、クレアと共に馬車に押し込められた。


 体力云々よりも魔力を考えての事だった。こちらで攻撃魔法が使えるのはセイジただ一人だ。クレアの浄化魔法は生物であるガガンボには何の効果も無い。加えてクレアの歩くスピードが遅いと言うこともある。

 渋々ながらレナードに従い、セイジはクレアと共に馬車に乗ったのだった。



 決着はついたはずだ……。


 目の前の鉄壁を見ながら、セイジは自分に問いかけた。


 東門、西門を挟撃し、脱出口を失った住民を盾にする。そしてこちらが兵力を分散せざるを得ない状況にし、殲滅する。確証はないが、それが敵の目的のはずだ。

 西門部隊を殲滅されたことによって敵の目論見は崩れた。住民の脱出も終了し、残るは東門にいるガガンボのみ。


 1000体のガガンボは驚異だが、ゼオ達がそう易々と後れをとるとは思えない。西門に向かわせた兵からも応援は必要ないと聞いていた。

 昨日のようにミノタウロスが襲ってくることもなさそうだった。ミノタウロスは極度の鳥目であり、夜間は活動できない、とレナードが言っていたからだ。

 心配はいらないはず……思いながらも心には靄がかかって、一向に晴れる気配は無い。


 それはいやな予感。戦いに生きてきたセイジが感じ取っている危険信号だ。


 数時間前、敵の襲撃直前に感じた嫌な予感はいまだ消えず、心にべったりとへばりついていた。しかもそれは弱まることなく、強いアラートを心の中で発している。


 戦いはまだ終わっていない。いや、これからが本番だ。

 そうセイジの本能が警告しているような気がした。


 外れてくれればいいと思う。だが、こういった警報は大なり小なり大概当たる。それがあったからこそセイジは未だに生きているともいえる。一流の剣士はそう言った本能のセンサーを兼ね備えているものだ。


「……ジ様、セイジ様?」


 クレアの呼び声で、セイジははっと我に返った。

 顔を戻すと、クレアがすぐ目の前にいた。心配そうな面持ちでセイジを見上げていた。


「あ、ああ……すまない、クレア。どうした? 何か用か?」


「いえ……そういうわけではありませんが……やはりお疲れですか?」


「まあ、正直疲れてはいる。だが、あとちょっとだ。そのくらいは持つ」


「大丈夫ですか? その、回復魔法(ヒール)をかけましょうか?」


「大丈夫だ。肉体的な疲労じゃない」


 セイジはクレアに笑いかけた。


 先程休憩したおかげで肉体的な疲労はそれほどではない。問題は精神的疲労の方だった。

 数え切れない程のスケルトンと黒装束を斬り(たお)し、風車六芒陣を突破し、敵の大将と思われるジュウメイ、コタローと死闘を演じた。


 死合いというのは精神の削り合いだ。集中力を失ったモノから次々と脱落していく。様々な死闘を経たセイジの精神は芯から疲れ切っていた。今地面で眠れと言われても問題なく眠れるほどだ。

 精神的な疲労というのはすぐには回復しない。眠ったり、楽しいことをしたりして緊張をほぐすことによって回復する。食事をして少し休んだくらいでは気休め程度しか回復しない。

 加えて今もセイジは緊張状態を解いてはいない。いつ何時敵の襲撃があってもいいように気を張っている。張り詰めた緊張の糸はほつれ、今にも切れそうだった。もっとも切れた時は倒れる時となる。


 クレアの目は不安で潤み、揺らめいていた。


「……その、私に何か出来ませんか?」やがてクレアが呟く様に言った。


「ん?」


「今の私で、セイジ様のお役に立てることはございませんか?」


「……………………」


 セイジは目の前のクレアをじっと見つめた。そして、視線を少し横に向け、また戻した。


「……それじゃ、ちょっとお願いしようかな」


「はい!」クレアの顔が笑顔ではじけた。「それで私は何をすれば良いですか?」


「もうちょっとこっちに来てくれるか」


「え? は、はい」


 少し戸惑った声を上げながら、クレアは一歩進んだ。既にセイジのすぐ側にいたので、そのくらいしか進めなかった。


「え?」


 次の瞬間、クレアは驚きの声を上げた。

 セイジは腰を浮かせ少し前に出ると、両手を広げ、クレアを抱き寄せた。その胸元に顔を埋め、目をつむっていた。


 クレアはきょとんとした表情でセイジを見下ろしていた。が、やがてその顔に優しい笑みが浮かんだ。胸元にあるセイジの頭を両手でそっと、まるで壊れ物を扱うように優しく抱きしめ、髪を撫で始めた。

 二人の間に言葉はない。いや必要なかった。一言も喋ることなく、二人はただただ抱き合っていた。




 セイジはクレアの胸元に顔をうずめ、心を休めていた。

 30間近の男が、一回りも年下の娘に甘えかかっていた。外から見えない密室状態だったからこそ甘えることが出来た。


 ぴんぴんに張り詰めていた緊張の糸が緩んでいくのを感じる。今このまま眠ることが出来たなら、どれほど(しあわ)せだろう。

 クレアの手が頭を優しく撫でていた。手の感触を感じながら、甘いにおいを吸い込む。押しつけた胸元から心臓の鼓動が聞こえた。

 抱きついた時に跳ね上がった鼓動は、今はすっかりと戻っていた。定期的に刻まれている鼓動すら優しい音に聞こえた。


 守る……なんとしても。


 心地よい心臓の鼓動を聞きながら、クレアの背に回した手に少しだけ力を込めた。


 セイジにとって、これは初めての戦いだった。


 何度も戦いに身を投じてきた。だが、それになんの目的はなかった。

 ただ言われたから、巻き込まれたから、仕事だから戦ってきたにすぎない。

 金の為に戦ってきたわけでもない。それほど浪費する方ではなく、余らせたあげくに家を買う始末だった。

 言ってみれば今までただ何となく戦って生きてきた……それがセイジの人生だった。


 今日は違った。自分以外のために命を賭して戦っている。


 それは金のためではない。

 共に戦う仲間のためでもない。

 メルドム3万の命の為でもない。


 クレアとセリア、これから先に家族となるであろう二人のためにセイジは戦っていた。


 守るためなら、全てを斬ろう。立ちふさがる者は全て排除してみせる。


 セイジはつむっていた目を開いた。

 そこには甘えかかっていた男の目はなかった。鋭く、力を持った冷徹な目があった。



 永遠に続くかの様な抱擁は唐突に終わりを迎えた。

 ゆっくりと進んでいた馬車がスピードを弱め、ついには止まってしまったからだ。


「何かあったのでしょうか?」


 クレアは首を左右に振りながら、不思議そうな顔をしていた。

 窓がないため今どこにいるのかは解らないが、まだ到着には早すぎる。

 セイジはクレアの胸元から体を起こした。クレアは残念そうな顔をしたが、素直にセイジの顔を離した。


「ちょっと様子を見てくる。クレアは待っていてくれ」


「解りました」


 クレアが頷いたのを見て、セイジは扉を開けた。




 レナードはゆっくりと馬車を走らせていた。

 馬車の周りを兵達が囲んで歩いている。先の戦いの生き残りの内まだ戦える者と、西門側の生き残りで戦える者、計100名近くが隊を組んで歩いている。


 レナードは兵達に合わせ、ゆっくりと馬車を歩ませていた。本当はすぐにでも駆けつけたいところだが、レナードとセイジだけたどり着いても意味は無い。

 それに大半が先ほども戦っていた兵達だ。少し休養をとったとはいえ、疲労は残っているはず。走らせてたどり着いた頃には使い物にならないでは困る。

 焦る気持ちを懸命に抑え、レナードは馬車を進めていた。


 すると前方の兵士が前を指さし、何か話しているのが見えた。


「どうかしたのですか?」


 馬を止め、レナードが馬車上から問いかけた。


「前の方から何か声が聞こえる。で、なにかこっちに向かってきている」


 一人の兵士が答えた。40過ぎのメルドムの警備兵で、人一倍夜目が利くので前に出ていた。

 レナードは目をこらしてみたが、闇の向こうには何も見えず、音も聞こえない。


「何かいるのですか? 私には見えないのですが」


「ああ、まだ遠い。だが、もうしばらくしたら皆にも見える」


 男はそう言い、前に向き直った。

 レナードは馬を止め待機した。それを見て全員が歩みを止めた。

 今まで緩慢だった空気が緊張でさっと引き締まっていく。私語がなくなり、目つきがどんどんと鋭くなっていく。


「人だ! なんか叫んでるぞ!」


 先ほどの男が叫んだ。

 その頃になるとレナードにもぼんやりと見えてきた。形ははっきりとは解らないが、何かが声を上げながらこっちに向かってきている。


「全員、戦闘態勢をとれ!」


 反射的にレナードは叫んだ。兵達が一斉に剣を抜き、構える。

 敵かの判断はつかないが、もしそうだったときの事を考え、先手をとった。


「敵か?」セイジがいつの間にか隣に来て、レナードを見上げていた。


「……不明です。ですが何か来ます」レナードはちらりとセイジを見て答えた。


 セイジは兵達をかき分け前に出て、前方の闇をじっと見つめた。

 月光の光に照らされ、何かがわずかに輝いている。それは鎧のように見えた。


「……あれは……兵士か?」


「そうだな、エミリーナの兵士っぽい格好をして、なんか叫んでいる」


 答えたのは先ほどの男だった。セイジもその男と同じくらいに夜目は利いた。

 やがてはっきりと声が聞こえた。だが、喋っているのではなかった。

 悲鳴だ。訳のわからない言葉を発しながら無数の兵士達が走っている。


「な、なんだ?」


 さすがのセイジもあっけにとられた。前方から目を血走らせた兵達が、悲鳴を上げながら走ってきていた。

 兵達はセイジ達をよけ、そのまま走り去っていく。


「……なんだありゃ?」


 セイジは呆然とした表情のまま後ろに振り返った。今もなお、叫びながら兵達は走っている。


「……あれってまさか東門から逃げてきたって事じゃ」


 誰かがつぶやいた言葉に、一気に場がざわついた。


「ま、まさか東門は突破されたのか?」


「だが、救援要請は来ていない。戦況が不利だったとは思えない」


「そうだ、ゼオ様が負けるはずなど……」


 兵達が銘々に喋り始める。


「おい、またきたぞ」


 男が叫んだ。前からさっきと似た兵士達が走ってくる。

 セイジは一歩前に出ると、先頭を走っていた男の手をつかんだ。いきなり止められ、男はその場にひっくり返る。


「うわっわっわ!! 離せ! 離せー!!」


 男は完全にパニックになっていた。叫びながら立ち上がり逃げようとするが、セイジが手を握っているため進めず、またひっくり返った。


「落ち着け、どうした、東門に何が起こった?」


「うううわっわわあああ……」


 セイジが聞くが、男は赤子のように嫌々と首を振り、縮こまって震え始めた。

 やがて呟いた男の言葉に、その場に居た者達は凍り付いた。


「ゼ、ゼオ様がやられた。化け物にき、斬り殺された」


 ひゅ、とレナードが息を飲む音が聞こえた。セイジもまた、目を見開いていた。

 驚きでセイジの手が緩んだ。男はセイジの手から逃げ出すと、這いつくばって立ち上がり、再び悲鳴を上げて逃げ出した。

 だが、それを追う者はいなかった。全員が驚きで固まり、思考が停止していた。


 やられたのか? 東門が? 何だ!? 何が起こった!?


 衝撃で固まっているセイジ達の脇を、兵士達が悲鳴を上げ、通り過ぎていった。

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