二話
私の隣の住人。酒井 明美 (さかい あけみ)。
私達の事は知っていて、温かく見守ってくれてる人。
最初に話した時も頑張ってみればと言ってくれた。
その言葉がなかったら、今まで頑張ってこれなかった。
日常の事とか明美に打ち明けると気持ちが楽になる。だから、つい明美の家に行っちゃうんだよね…
「何もないけど、座ってて、紅茶でいい?」
「ありがとう」
明美はキッチンに紅茶を作りに行った。
明美の淹れる紅茶は美味しい。
楽しくなって会話が弾むと紅茶を何杯もおかわりしてしまう。
癖になりそう。
「はい、紅茶」
「ありがとう…うん…美味しい…」
一口飲むと口の中全体に広がる。
「やっぱり明美の淹れる紅茶は美味しい」
「そんな事言っても何もでないわよ」
「別にそんな意味で言ったんじゃないわよ」
「あら、そう?そう言ってるように聞こえるよ」
「もう…」
そんな会話をして笑う私達。
そして、二杯目には、あの話になった。
「で、今日はどうしたの?って聞いてもあの話よね」
「うん…実は…」
私は明美にあの話を話した。
面倒くさいから返事をしない。
夫婦だからって言っていい事と悪い事だってあるから…と線を引かれた事。
「そっか…でもそう言われたからってもう話さないなんてダメよ、夫婦は言葉が無くなった時点で終わりなの」
紅茶を一口飲む明美の一言が胸に突き刺さる。
「話がないという事は相手に興味ないって事なんだからね…って、それは言い過ぎかもしれないけど、覚えといてね?」
「うん…ちょっと怖いけど…」
「まあ、ともかく、最初は相手に好かれる事が大事よ」
「うん!」
そんな会話をして、私は家に戻った…
「だだいま…ん?」
玄関を開けると誰か来ている声が聞こえる。
女の声じゃない男性の声。
会社の人かな?仕事の話かな?でも楽しそう…
雄の声がしない。
そっ~と覗くとやっぱり誰か来てる…
出ていったほうがいいかな?
ダメよ!楽しい会話を邪魔しちゃだめ!
でも雄の妻として挨拶しなくちゃ!
「あの…」
その時、私の姿に気付いた雄が私を睨みつける。
それは私に出てくるなと言うかのように。
そう思った私は出ていこうとしたら
「あれ?奥さん?」
「あはは…こんにちはー♪」
気付かれた私は笑顔で挨拶をしたけど、雄は無表情のままだった…
私を妻として相手に知られたくなかったのかな?
雄の相応しくなりたい…
「あの、奥さんは専業主婦なんですよね?」
「はい…」
「じゃやっぱり料理とか得意なんですか?」
「人並みに…」
私が来てから、さっきから質問ばっかりさせられていた。
雄を見てもムッスとした表情で缶ビールを飲んでいた。
何か話そうよ…私が居なかった時は話してたんでしょう?
私を空気だと思っていいのに…
いっそのこと部屋に行こうかな?
そしたら気楽に話せるでしょう?
「あの、私ちょっと具合が悪いので、部屋に戻ります…」
「大丈夫ですか?」
「はい、ちょっと休めば治りますから…じゃ…」
「………」
部屋に戻る間に雄の視線が気になったけど、目を合わせることなく部屋に入った。
雄はなんて思ったんだろう?
大丈夫かな?とか後で見に行こうかな?
なんて思って…ないよね…
そう思っているうちに少し泣いた…