十六話
雄が帰って来たのは、日付が替わった1時だった。
雄が言って通りに鍵が掛かっていた。
ホッと一息つくと、鍵を開け、静かにドアを開ける。
すると、1つだけ光があった。そこはリビングだった。
中に入ると、ソファーで身体を丸めて寝ている由梨の姿があった。
起こしちゃいけない気もするが、こんな所で寝て、風邪引いてしまうんではないかと思い、雄は由梨の背中と脚の裏に腕を通し、お姫様抱っこをして、寝室に寝かせる。
少し由梨が目を覚ましたが、「おかえり…」そう笑顔で言って、すぐ目が閉じられた…。
微笑みをもらした由梨に雄も微笑み、由梨の髪を撫でると、ネコのように気持ち良さそうに寝ている姿がなんだか可愛くて仕方なかった。
雄は由梨の隣で横になると、静かに目を閉じた…。
朝になり、雄は由梨よりも早く目覚めた。
雄の隣にはまだ寝ている由梨…。由梨を起こさないようにベットから出ると仕事の時間までまだある。
いつもは朝ごはんは由梨が作るが、今日は雄が作る。
由梨に内緒だけど、由梨が朝ごはんを作っているのを密かに見ていた雄だった。
味噌汁、スクランブルエッグ、ご飯、ウィンナーが出来皿に盛り付けると、食卓に並べ寝ている由梨の方に向かう雄。
寝室のドアを開けるとまだ由梨は寝ていた。
「由梨。起きろ…」
由梨の身体を揺らして起こす。
「ん…雄…?」
薄く目を開けると雄が私の顔を覗き込む光景が写る。
身体を起こす由梨に雄は身体を支えてあげる。その些細な優しさに胸がときめく由梨。
「朝ご飯出来たから早く来いよ…」
そう言うと雄は部屋を出る。
私は、雄の後を追うように部屋を出ると、リビングには雄が作った、朝ご飯が用意がされてあり、由梨は驚いている。
驚いている由梨に雄は頭をかき照れている。
初めての事で、私はびっくりしてる。
「雄が作ったの!」
「いつも由梨が作ってくれてるから、たまには俺が作りたいと、思ってて…」
「…ありがとう」
そして、私は雄の作った朝ご飯を食べたのだった。
ちょっと焦げてる所もあるけど、雄が初めて料理を作ってる姿が目に浮かんで、嬉しくなる。
私の為に作ってくれてありがとう…。