十四話
「それでね、由梨ちゃんたらね…」
母が私の子どもの頃話をしてるのに私は上の空。
雄は私達の子どもはほしくない。
そうお母さん達の前で言った。
その言葉は本当か嘘なのか…分からない。
「大丈夫か?」
「えっ!」
「さっきから静かにしてるから…疲れたか?」
雄が私を心配してる…。
なんか言葉掛けないと…。でもなんて答えるべき?
思ってると
「ごめん…。なんか疲れたみたいだから、連れていく…」
そう言って私を部屋に連れていく…。
部屋に入ると雄は私の手を引きベットに座らせ雄も私の隣に腰を下ろす。
「雄?私、疲れてないよ」
「知ってる…」
「じゃなんで?」
私の問に雄は…
「俺の言葉が引っ掛かっているんだろう?」
「……」
雄…分かってたんだ…。
「雄はなんでも分かちゃうんだね…」
「あんた…誤解してる…あんたとの子どもがほしくないって言ったのは…まだ二人の時間が欲しいんだ…まだあんたの事好きになったばかりだし…」
」
私と同じ思いだったんだ…私と同じで良かった…。
「私もまだ雄との時間を大切にしたい…」
二人はどちらともなく近くになり、口付けをする。2回目のキス…。
でも2回目のキスは長くって…甘い…。
長いキスの後は抱きしめてくれる。
私達はお母さんのノックが聞こえるまで抱きしめあった…。
部屋に出るとお母さんが申し訳そうな顔をして立ってる。
「由梨ちゃんごめんね…疲れてるのに、私たら…」
「ううん。疲れてないの、ただ考え事してて…でも大丈夫だから」
「本当?それならいいんだけど…なにかあったら言ってよ?」
「うん!」
お母さん。ありがとう…。
「じゃ私達はこの辺で帰ります…雄、由梨さんを幸せにね」
「母さん…」
「雄。しっかり由梨さんを守るんだぞ…」
「父さん…」
こうして、私達の家族は帰っていって…
家には二人きりになる。
「今、コーヒー淹れるね」
「あぁ…」
二人の間で緊張が流れる…。
多分、お互いが好きと分かってから、二人の時間がそんなに経ってないからだろうか…。
緊張してしまう。
今まで通りにしたいと思うけどなかなか出来ない…。
「はい。」
「ありがとう…」
また二人の間で沈黙が続く…
なにか話さなくちゃ…。
「「あのさ・ね」」
二人の声が重なる…。
「雄から言って?」
「いや…あんたから言って…」
「ううん。雄から言って…」
「いいよ、あんたが言ったら言うから…。」
「「………」」
プッ…
お互いが何度も譲り合って…それが可笑しくて…二人で笑いあった…。
「じゃ私から言うね」
「あぁ…」
雄はずっと私の事を「あんた」しか言わない。まあその時はまだお互いが好きではなかったから、名前を呼んでもらえなかった…けど、今はお互いが好きだと分かったから…
「雄。私を「あんた」じゃなく、「由梨」って呼んで下さい…」
「………」
なにも言わない雄…まだダメなんだと思ってると…。
「……ゆ、由梨…」
「!/////」
照れながら私の名前を言ってくれる雄…
初めて私の名前を呼んでくれて嬉しくて…雄に抱きついてしまう。
「お、おい」
「ありがとう…私の名前…呼んでくれて…」
泣いてる私を知っているのか、私の背中を赤ちゃんをあやすようにポンポンしてくれる。
私達はいつまでも抱き締めあっていて…やがで私達は身体を離しお互いの目が合うと
「由梨」
雄は私の名前を呼んでくれる。
嬉しくて…私も雄の名前を呼んだ。
お互いを確かめ合うように何度も名前を呼んだ。
そして私達は…ひとつに心が繋がった…