十話
「俺は捨てたりなんかしない…一緒にいると決めたんだ…」
雄がそう言ってくれた事が胸を熱くさせた。
雄からそんな言葉が出るなんて…知らなかった。
私と一緒に居てくれるなんて嬉しすぎてニヤけてくる。
「ちっ…」
男は舌打ちをするとどっかに消えて行った。
また二人になり、なんかぎこちない…。
私がまだニヤけていると雄が振り向く。
「…今のは…あの…」
オロオロしている雄。
「嬉しいよ…あの台詞」
私が微笑むと雄はびっくりした顔をして俯く。
そしてスタスタと行ってしまった。私は雄の後を追って戻った。
「あっ…」
中に入るとカップル達が身体を密着させてダンスをしていた。
楽しくダンスをしている皆を見て私もしてみたくなったけれど、経験がない私。
雄と踊りたいなぁ…なんて思っていると…
「なに、あんた踊りたいの?」
そう雄に囁かれて…
「うん…」と言ってしまった。
「…仕方ない…俺が相手してやるよ…」
「えっ!雄ダンス出来るの?」
「高校時代、少し踊ってたから…」
「そうなんだ!初めて知った」
「だって初めて話すし…」
そうだよね…でも私が聞かなかったら雄の高校時代の事聞けなかったし、雄も昔の事話してくれた。
すると雄は顔を赤くしながら手を差し出してきて…
「なに…踊らないの?」
「……うん……踊る…」
雄が照れるから私も照れてしまう。
雄の手を取ると、雄は私の手を引き歩き出す。
雄は私の腰に自分の右手を置き、左手で私の右手を掴む…。
私の左手をどこに置くか迷っていると、雄は私の耳元で…
「左手は首の後ろに置けばいいから…」
「……うん…」
私は左手を首の後ろに置くと雄と更に身体が密着する。
雄はドキドキしていないんだろうか…。
私はドキドキしてる…。
ドキドキしながらダンスを踊ったから、ドキドキし過ぎて後半、覚えていない…。
でも楽しかった事だけは覚えてる
曲が終ると密着していた身体が離れた。
「あ、ありがとう…」
素直にお礼を言うと照れたように…
「…あぁ…」言った。
そして楽しかったパーティーも終わり、部屋に戻る…。
雄はちょっと煙草を吸いに外に行った。
私は一人で戻る事にする。
もう少し一緒に居たいと行ったけど、冷えるからダメと言われた。
雄の優しさに甘える事にした。
すぐ戻るとは言って居たけど、一時間近く帰ってこない…。
待っているよりも探したほうがいいと判断した私は、もう一度外に行った。
フロントやパーティー会場、喫煙所…探したけどいない…。
「どこに行ったんだろう…」
全然見つからなくて携帯に電話をしようと携帯をだそうとすると…。
「…あっ…」
私は雄が煙草を吸いながら空を見上げるいた姿が目に入る…。
それは素敵で何故か愛しく思えて雄の近くに寄ると雄が私に気付き振り向く。
振り向いた雄は私に向かって微笑んだ気がした…。
心がトキメク…。
雄が初めて微笑みかけてくれる。
隣に立ち雄と同じ夜空を見上げる。
たくさんの星がキラキラ光っていた…。
雄と見た夜空を私は忘れない…。
「…戻る…」
雄はそう言うと来た道を歩いていく。私も雄の背中を見ながら歩いた…。
雄は私の歩幅でゆっくりと歩いてくれた。
やっぱり雄は優しい…。
自分の事よりも相手の事を想い合っている。
雄と結婚してよかったと心からそう思う。
部屋に着き雄がドアを開けようとした時だった。
「あれ?雄?」
一人の女性が雄のほうを見て微笑む。
誰だろうと見ていると、彼女と目が合い彼女は納得したように頷く。
雄はというと彼女を見て小さく呟く…。
「……亜美…」
あみ…もしかして…前の彼女…?
雄の事呼び捨てにしてたし…雄だって…
「雄?こちらは…?」
聞くのが恐いけど、聞かなくちゃいけない…雄の事もっと知りたいから…
雄は意を決したように話してくれた…。
前の彼女だということ…
やっぱりそうだよね、雄にだって好きな人と付き合ったりしてるもん…。
雄はまだ私の事………
「もしかして…彼女さん?」
「いや…彼女じゃない…俺たち結婚したんだ…」
「そうなんだ…」
彼女は少し不満な顔をしたのが分かった…。
彼女はまだ雄の事を……好きなんだ…。
そう分かった瞬間…私はとっさに雄の服を掴んだ。
雄が彼女に取られてしまうんじゃないかと…そう思ったから…。
「素敵な奥さんね」
「いえそんな…」
「……」
「もう雄なにか言いなよ、もしかして照れてる♪」
雄の袖を掴んで顔を覗かせる…
ダメ…そんな事したら雄が亜美さんの事好きになちゃう…。
私の心に嫉妬心が芽生えてくる。
「そうだ!今から飲みに行きません?」
「…悪い…今日は…」
「良いですよ。私も亜美さんと飲みたいと思っていたんです」
「おい」
雄が止めようとしてくれていたみたいだけど、私の嫉妬心が収まらなくなっていた。
結局私たちはbarで飲むことに…
「ここのbarよく行くんです♪」
barに着くと亜美さんは嬉しそうに話す。
そして雄の腕を掴んで入っていく…
雄は私の…と言うように…。
なんで…雄は私と結婚したのに…。
亜美さんに連れられてカウンターの席に雄を挟むような形で座り飲むことに。
まだ雄の腕を掴んだままで、雄も嫌がる素振りもない…。
やっぱり昔の彼女だから、馴れているのかな…
でもやっぱり私…嫌だ…雄が誰かと触れているなんて…見たくない…
私は雄の腕じゃなく服の袖を掴んだ。
雄は気付くと雄は私の手を取る。
「!!」
雄と手を繋ぐ事なんてないないから顔が赤い。
雄も赤いように見えた…。
手を繋ぐ事に慣れてないからドキドキする。
私は雄の手をしっかり掴まった。