第23.5話:ミルク日誌 学園生活記録Vo.2
《ミルク日誌|学園生活記録 Vol.2|4/3|天気:晴れ》
学園に戻った。
疲れた。
全身が鉛みたいに重い。
でも、日誌だけは書いておく。
こういう時ほど、記録しないと、あとで「あれは夢だったのかな」とか思いそうだから。
まずは橙馬が朝からうるさくて、新聞もうるさくて。
でもその新聞のおかげでロイさんたちに出会えたわけだから、結果オーライ。
休日に牧場跡地を見に行ったら、ハクゲツ食べて、そのまま戦闘になって、解体作業して、気づいたら朝だった。
人生で一番、濃密な24時間だったと思う。
良いこともあった。悪いこともあった。
でも、何より——牧場が手に入った。
ただしくは古びた牧場跡地だけど。
でも牧場跡地ってことは、一から自分が好きなように復興させることができるんだ。
僕と牛さん好みの楽園にするのが今から楽しみ。
ほんと、これだけは夢じゃない。
ポケットの中の権利書が、その証拠だ。
英雄たちとも、少し話をした。
魔導体質か……。
正直、嫌な話だったけど、逃げてばかりもいられないし。
まずは心配のタネを潰すために、念話石で通話した。
父さんは弱ってはいるけど、危篤ってわけではないから一安心した。
でも、やっぱり心配だ。
お母さんの声が明るかった。
不自然なほどに明るかった。
とりあえず、チーズケーキもかっ喰らってやったし、今日はもう寝る。
来週から——検査地獄が待ってるらしい。
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《ミルク日誌ログ》
■成果(酪農)
- 牧場跡地を無借金で入手。
ロイさんとエレナさんのおかげ。
- ブラックウッド牧場でバイト開始。
牛の世話ができる。最高。
- 牧場を持つための足場が、ようやく現実になった。
権利書がある。夢じゃない。
■学園(環境)
- 今日は学園に戻っただけ。
- 来週から、闇属性の検査が本格化するらしい。
面倒くさい。だるい。
■人(関係)
- ロイ・ブラックウッド
牧場跡地の持ち主。元軍人らしい。狩るのが趣味。
クロスボウの腕前がヤバい。頼れる。怖い。
過去に子供を失っている。
僕を気にかけてくれている。本当にいい人。好き。
- エレナ
ロイさんの奥さん。優しい。
チーズとパンをくれた。
計算スピードえぐい。
白い錠剤みたいなのを飲んでるっぽい。薬かな。持病……なのかな。
元気でいてほしい。
ロイさんに負けじと、本当にいい人。好き。夫婦ともども好き。
- 橙馬
新聞の契約っていうテイで、早朝に家を訪ねてきたバカ。
田舎者の身を案じて、気遣ってること、ばれてるからな。
実はいいヤツ。認めるのはなんか癪だけど。
……ありがとう。本人の前ではなかなか言えそうにないからここで言っておく。
■魔導体質
- 《還元消化》が本格起動。
ハクゲツの蹄煮込みを食べた直後に気絶。
経験を“摂取して消化する”タイプらしい。
- 父さんの封印が弱まっている可能性あり。
実家に念話石で通話したところ、危篤ではないとのこと。
少し安心。でも、油断はできない。
■獲得特性(摂取済み)
- 振動感知
足裏で振動を拾うと、見えないはずの相手の位置や形が“立体”で分かる。
便利だけど、複雑。
この能力がある上で、ハクゲツの蹄がぷるぷるなら、あいつらは気配を消すことに長けているのかもしれない。
■魔法ログ(使用/発現)
- 生粋魔法:調理——《乾燥焼成》
木片→炭素包丁
泥→陶器の盾
肉→ジャーキー化
- 生粋魔法:調理——《解体》
視界モノクロ化+赤い切断線。
急所・関節が抜ける。
- 生粋魔法:調理——《熟成軟化》
地面を泥化して罠化。
着地クッション化にも使えた。
- 生粋魔法:調理——《油引き》
陶壁に油膜を張り、突進エネルギーを“滑り”に変換。
ジャンプ台化に成功。
- 生粋魔法:調理——《食糧保存》
ジャーキーを小瓶に圧縮・瓶詰め。
サイズと腐敗速度が元の百分の一になる(食糧限定)。
- 《英傑貸出》
ガンテツの力を約20分酷使。
解体速度と精度が跳ねた。
やっぱり英雄はすごい。
■累積:役に立った魔法や能力
- 《乾燥焼成》
加工/即席道具/保存食に使える。
ただし派手。煙と匂いが出やすい。
- 《解体》
赤ラインで“刃の通る道”が見える。
暗所だと不利になりそう。
- 《熟成軟化》
地形操作向き。
泥罠・衝撃吸収に便利。
連打は燃費が怖い。
- 《油引き》
摩擦制御で力勝負を回避できる。
地形とセット運用が強い。
- 《食糧保存》
食糧限定だけど、管理・携帯性能が神。
- (特性)振動感知
暗所や背後に刺さる。
地面の振動が前提。
- (特殊)英傑貸出
一時ブーストとして非常に強い。
ただし時間制限あり。酷使のツケもある。
■異常(兆候)
- オーガに怒られた。
ムカついた。うるさい。
- 自分の中の何かが、少しずつ動き始めている感覚がある。
やめてほしい。
■食材・発見
- ロイさんから空椒を譲ってもらった。
竜脊帝国産の希少スパイス。
ホールタイプと粉末タイプの両方がある。
舌に残るピリリとした痺れと、香りが最高。
- 竜息茸の存在を知った。
ロイさん曰く、裏山に生えているらしい。
高級食材だけど、危険すぎる。
近づかない。約束した。
そもそも、今のところわざわざ行く理由もない。
■料理・摂取
- エレナさん特製:月冠鹿の蹄煮込みを食べた。
琥珀色に透き通ったスープ。
プルプルに煮込まれた蹄。
骨からほろりと外れそうな肉塊。
表面には燻製脂の黄金膜と、黒いスパイス粒——空椒。
味の印象:
濃厚な脂とコラーゲンが舌の上で爆発した。
燻製の香ばしさが鼻に抜け、直後に空椒の刺激がピリリと走る。
それが呼び水になって、旨味がダム決壊みたいに喉奥へ流れ込んだ。
とろける食感+暴力的な多幸感。
味は本当に最高だった。
ほんと味は。
もう一回食べたい。
味から逆算すれば……レシピはなんとなく分かる。
機会があれば作ってみたい。
- 月冠鹿のジャーキーを作成・試食。
《乾燥焼成》と《食糧保存》で作成。
仕上がりはだいぶ硬め。歯が欠けないように注意。
でも、そんなのが気にならないぐらい、ふやかして噛めば噛むほど旨味がにじみ出る。
携帯食としてマジで優秀。
- 使用調味料メモ
月冠鹿1頭分のジャーキー作成時、
ロイさんからもらった粉末タイプの空椒を5グラム使用。
5×7頭ぶんで、現在までに合計35グラム使用済み。
■食効果・副作用
- 月冠鹿のジャーキーは、食べると頭が冴える。
- 集中力が上がる。
- 振動感知の感覚もくっきりする感じがある。
- 数時間後、軽い倦怠感あり。
副作用かもしれない。
ちょっと疲れるぐらいだから、今のところ致命的ではない。
ただし、食べ過ぎには注意したほうがよさそう。
- しばらくは“新規食材の摂取”に注意する。
《還元消化》の反応がまだ読めない。
■在庫(食)
- 調理済み(携帯)
- 月冠鹿のジャーキー:小瓶多数
部位ラベルあり(『肩肉』『腿肉』『内臓(可食)』『脂身』など)
- 総量:圧縮後の保存量で約70キロ
- 目安:1頭あたり約10キロ分のジャーキーが取れる見込み
- ロイさんへ譲渡:小瓶1本(約1キロ分)
- 今すぐ食べる分:少量(その場で齧った分)
- 素材/調味料
- 空椒:ホールタイプ(ロイさんから譲渡)
入手量:約50グラム
残量:約50グラム
- 空椒:粉末タイプ(ロイさんから譲渡)
入手量:約50グラム
使用量:合計35グラム
残量:15グラム
- 粗塩:使用済み
残量:約2キロ
- 注意
- ジャーキーは覚醒寄りの効果あり。
食べ過ぎると倦怠感が来るため注意。
■資金
- 前回:40,224ソル
- 現状:40,124ソル(−100ソル)
- 月冠鹿の素材(角、魔煌玉、皮)はロイさんが換金。
借金と相殺され、牧場は無借金になった。
- バイト代は月18銀貨(1,800ソル)。
牧場の整備費用に充てる予定。
■次の一手(ToDo)
- 牧場の整備計画を立てる。
- バイトで酪農技術を学ぶ。
- チーズの試作を始める。
- 裏山には近づかない。約束した。
- 父さんのこと……どうすればいいんだろう。




