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「ハズレ精霊の飼い主」と馬鹿にされた整備士の娘ですが、機体の悲鳴が聞こえるので、貴族の皆様より上手く操れますよ?  作者: 秋澄しえる


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第40話「霧中」

「あ、そうだ。これを残りの敵のとこにぶん投げちゃう?お持ち帰りください!って」


 私が言うと、セラフィが大喜びした。


「わはははは!面白い!やれやれ!」


「うん」


 私は足元のパンターブリッツの片足を持ち上げた。


 ヴェリアルの力を使って、勢いつけて投げる。


 重い機体が宙を飛び、遠くで何かに当たった。


 鈍い音が響く。


「重ー!やっぱりシヴァルリィって重いんだねぇ」


「ほれ!次々ぶん投げろ!」


 セラフィの笑顔がすごい。


 楽しそう。


 私は次の機体を持ち上げた。


 投げる。


 また遠くで音がする。


 次。


 また次。


 五騎まで投げたところで、エミリアが追い付いてきた。


「エミリア!ちょうどいいとこに!そこのブリッツをあっちにぶん投げてー!」


「これを!?どういうこと!?」


 エミリアが困惑している。


「いいからいいから」


「…わかった」


 エミリアが機体を持ち上げる。


 私たちは同時に投げた。


 私のはそこそこの距離。


 でも、エミリアのは…。


 遠心力をつけて、高く投げ上げた。


 まるで投石器みたいに。


「あれに人が乗ってたかな?」


「…わからん」


 セラフィも少し心配そう。


 一際大きな音が鳴り響いた。


 地面が揺れた気がする。


 モニターを見ると、残りの赤い光点がガルドラム方面へゆっくり消えていく。


 投げてあげたパンターブリッツを回収しながらなのかな。


 来た時よりもかなり遅い。あ、ミディの回収もしてるかも。


「引きあげてった?」


「たぶんそう」


 私たちは、モニターから光点が完全に消えるまで見ていた。



 霧が晴れ始めた。


 プルルが霧を解除したんだ。


 周囲の景色が徐々に見えるようになる。


 湿地帯の端。


 泥と水と巨木の根が入り組んだ場所。


 そして、地面には、私たちが行動不能にしたパンターブリッツが四機、倒れていた。


 残りは持っていったんだろうなぁ。


「…やっちゃったね」


「やっちゃったのう」


 セラフィが満足そうに頷く。


 私は少し複雑な気持ちだった。


 敵を倒したのは良い。


 でも、人を殺さなくて済んだのは、もっと良かった。


「小娘、良い戦いじゃったぞ」


「そう?」


「ああ。おぬしは優しすぎるが、それがおぬしの強さじゃ」


 セラフィが珍しく褒めてくれた。


 嬉しい。


「ありがと、セラフィ」


「フン、調子に乗るでないわ」


 セラフィが照れたように顔をそむける。


 可愛い。


 エミリアのヴェリアルが、私の横に並んだ。


「リーシャ、お疲れ様」


「エミリアもね。助かったよ」


「プルルが頑張ってくれたからね」


(えへへー)


 プルルが嬉しそうに揺れる。


「これからどうしよ?」


 エミリアが尋ねる。


「スタルマーに行かないとね。ルシア先輩たちも心配だし」


「そうだね」


 私たちは、ヴェリアルを動かし始めた。


 エキュイエを回収して、スタルマーへ。


 その時だった。


 私の耳が、遠くから近づいてくる音を捉えた。


「…誰か来る」


「敵か?」


「わかんない。でも、複数」


 私たちは警戒態勢を取った。


 薄くなった霧の向こうから、機体が現れる。


 数機の青いヴェリアル。


 近衛騎士団だ。


『そこの二機、所属を名乗れ』


 外部スピーカーが声を拾った。


 低く、威圧感のある声。


 でも、どこか聞き覚えがある。


「あ、えっと、王立精霊騎士学院の、リーシャ・ヴァレンティアです!隣はエミリア・ノーヴェです!」


 私が慌てて答える。


 沈黙。


 短い沈黙。


『そういうことか。あの時、剣を四本使ってたお嬢ちゃんだな』


「え?」


 その声に、記憶が蘇る。


 王都での模擬戦。


 私の四本の剣を全て弾き飛ばした、圧倒的な強さ。


 近衛騎士団長、ジェラール・バグラム。


「ジェラール団長!」


『そうだ。なぜここにいる?』


「スタルマーに向かう途中で、敵を発見したので対処しました!」


 また沈黙。


 長い沈黙。


『…で、あの倒れてるブリッツは、お前たちがやったのか?』


「はい!」


『四騎も?』


「いえ、七騎までは数えました。三騎は敵が回収していったようです。当初は、全部で十八騎いました」


『…はぁ』


 ため息が聞こえた。


 呆れてるのかな。


『まぁ、いい。結果的に、大事に至らずに済んだ。感謝しとく』


 声のトーンが、少しだけ和らいだ。


『スタルマーまで案内してやる。ついてこい』


「はい!…あ!エキュイエをあっちに置いてきたので回収しに行ってもいいですか?」


『…わかった。案内しろ。…アルトリーベの通信可能コードも送る。同調しておけ』


 ジェラール団長たちは、私たちについてきた。



 エキュイエに乗り込み、スタルマーに向けて出発すると、周囲には近衛騎士団の青いヴェリアルが、護衛のようについてきた。


 なにやら重要人物にでもなった気分。


「ちょっとこれ気分いいね!」


「だよね!ひかえおろう!みたいな感じ!」


 スタルマーまであと少し!ルシア先輩、マルセル先輩、クラウディウス。


 みんな元気かな。


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