ウンチのウン子
これは、便所でお弁当を食っていたときの話だ。
別に、一人が好きなだけで、いじめられてたとかじゃないけど。ここなら誰とも目をあわさずに済むから。
三階の男子トイレには滅多に人が来ないし、心地よい。まして大便器のある個室、もっと言うと二つある個室の奥の方が僕のお気に入りで、狭くて、暗くて、それは僕だけの絶対安全地帯だった。
僕はよくここで静かな昼休みを過ごしていた。けど、その日は静かじゃなかった。
突如として僕は、耐えがたい腹痛に教われた。そういえばココのトイレは使ったことなかったな、とか思いながら、ベルトをはずして、ズボンを下ろし、便座に腰かける。
それはすごい快便だった。さっきまでのキリキリとした痛みはどこかに飛んでいった。
このウンコは大物だ、と確信した僕は、股の隙間からそれをチラリと覗き込んだ。目があったのはそのときだった。そのウンコには顔があった。それを顔だと認識し終えると、それはゆっくりと口を開いた。
「僕を殺すのは、君なんだね。」
そのときの感情を表す言葉を、僕は知らない。驚きでも恐怖でもあったし、嬉しさと興奮があった。
「君は誰?」
「さぁね、僕はウンコだと思う。まぁ、知らんけど。」
そう返されたとき、僕の中の「人間」の定義が曖昧だったことに気付いた。
「殺すってったって、殺しようがないよ。」
「流せば死ぬよ。」
「いや、どういう仕組み?」
「知らない、ただ、君が今僕を流せば僕は死ぬ。それはなぜか知ってる。」
「殺していいの?」
「僕が生きてる理由が無いからかな、君と違って生に対する執着が無いんだ。」
「僕も生きてる理由がないけど、死ぬのは怖いよ。」
「それは君に生きるべき理由があるからだよ。今はそれに気付けていないだけで。さぁ、僕を殺してよ。ウンコを流すだけだよ。いつもやってるでしょ。」
「君は死にたいの?」
「べつに死にたい訳じゃないけど、死ぬしかもう残ってないからね。」
彼の目には光も闇もなかった。
「僕の友達になってよ。僕友達いないんだ。」
気付いたら、僕はそう口にだしていた。彼は驚いていた。僕は続けた。
「僕は君を殺さない。」
「そっか。」
とだけ彼は答えた。
「じゃあ、また明日。」
僕はトイレを後にした。
どうやら隣の人は出ていったらしい。まったく。僕のお弁当タイムを騒がしくしやがって。ていうか、トイレで誰かと電話でもしてたのかよ、気持ち悪い口調で一人でブツブツ言いやがって。
もう昼休みが終わりそうだったので、僕はトイレを後にした。そのとき、例の個室の大便器の中のウンチが流されていないことに気付いた。
「まじかよ、アイツ流してないじゃん」
親切な僕はそれを流してやった。
この作品を読んでくれた方、本当にありがとうございます。
小説を書いたのはこれが初めてなので、読みにくかったりする箇所もあったかもしれませんごめんなさい。
あわよくば小説の執筆を趣味にしたいなー(だってカッコいいじゃん??)とか思ってるので、これからも投稿するかもしれません。そんなときは、ぜひまた手に取ってくれると嬉しいです。




