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異世界育ちの侯爵令嬢と呪いをかけられた完璧王子  作者: 冬野月子
第3章

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08

「聞きました? ユーリア・コイヴィスト様のこと」

「呪いのペンダントでしょう? 恐ろしいわ」

 品評会から十日も経たない内に、噂は学園にも広まっていた。


「リリヤ様に嫉妬して強大な魔力を手に入れようとしたとか」

「王太子殿下はかなりお怒りだそうですわ」

「でもリリヤ様は杖も使わず呪いを退けたのでしょう?」

「流石ですわ!」

「白い光に包まれたリリヤ様はとても美しかったと、その場に居合わせた叔父が言っておりましたわ」


「また評判が上がったわね」

 笑みを浮かべながらアマンダが言った。

「……あまり嬉しくないわ」

 はあ、とリリヤはため息をついた。


「あらどうして?」

「変に敬われるし、弟には怒られるし……」

「マティアス様が怒るの? どうして?」

「私が殿下と色々な所に出かけて疲れて帰ってくるから、無理するなって」

 品評会の日も、精霊の石に沢山魔力を注いだせいで家に着いた時にはかなり顔色が悪かったらしい。

 更にユーリアによる呪い騒動が知られてしまったせいで家族、特にマティアスに無理をするなと怒られたのだ。


「ふふ、姉思いですのね」

 楽しそうにアマンダは笑った。

「素敵なご家族ですわ」

「それは、そうなんだけど。心配されすぎても……」

「仕方ありませんわ。リリヤはずっと呪いで別の場所にいたのだから。また呪いをかけられたら大変ですもの」

「うん……」

 呪いの力によってユーリアがリリヤを攻撃しようとしたと言った時の、母親の顔を思い出してリリヤは小さく頷いた。


「それで、どうやって呪いの力を手に入れたか分かりましたの?」

 アマンダは声をひそめた。

「まだ……。放課後殿下と会う予定だから聞けるといいけど」

 早く精霊を酷い目に遭わせた犯人を知りたい。

 そう思いながらリリヤは答えた。


  *****


「ユーリア・コイヴィスト嬢への聴取は終わりました」

 そう言ってヘンリクはため息をついた。

「最初は暴言も多く大変でしたが、キースキネン侯爵家の例を挙げて公爵家廃爵の可能性を示したら観念しましたよ」

「暴言?」

「リリヤ嬢には聞かせられないような事です」


「つまり私への悪口を言っていたと……」

「以前夜会で侮辱されたことがよほど腹に据えかねていたようです」

「侮辱って……そもそも向こうから言ってきたことで」


「自分中心にしか考えられない者もいるということだ」

 ラウリが口を開いた。

「貴族は変にプライドが高い者も多いからな」

「そうなんですね」


「コイヴィスト公爵家はかつての王弟から始まり、王女の降嫁もあった家柄。そのため、自身が王国一の魔力持ちとなれば、魔力を失った殿下を差し置いて王位継承権を得られると考えたようです」

「……それは……凄い考えですね」

 ヘンリクの説明にリリヤは引いてしまった。


 魔力至上主義の者がいるとは聞いたことがある。

 ユーリアもその一人で、魔力を手に入れるためにペンダントを手にしてしまったのだろう。

 だからといって、王位が欲しいとまで思っていたとは。


「……あのペンダントの入手先は分かったんですか?」

「それはまだだ」

 ラウリが答えた。

「ユーリア・コイヴィストは、夜会で知り合った男から手に入れたと言っている」

「夜会で?」

「あちこちで君への不満を漏らしていたようだ。それである時男がいい宝石があると話しかけてきたと」

「……胡散臭そうですね」


「いいカモだったのだろう。かなりの高額で買ったようだ。今はその夜会の参加者を調査中だ」

 そう言って、ラウリは息を吐いた。

「それから、ルスコ教授たちの調査によるとやはり精霊の石には呪いがかけられていた」

「……そうですか」

「石から精霊の魔力を奪い人間の力にする。おそらくあのまま魔力を吸われ続けていたら石は消滅していただろう」


「酷い……」

 リリヤは手を握りしめた。

 石が消滅するということは、精霊が死ぬということだ。

(そんなの……許せない)


「君のおかげで石は守られた」

 ラウリは固く握られたリリヤの拳にそっと手を重ねた。

「あの石は王宮で保管することになった。どれだけ時間がかかるかは分からないが、精霊が目覚めるまで守るから大丈夫だ」

「……はい」

 リリヤは小さく頷いた。


「――ユーリア様はどうなるのでしょう」

「本人はあれが呪いにかかったものだとは知らなかったと言っているが、君を害する意思があったのも事実だ。石を渡した者やペンダントを作った者が見つかるまでは拘束することになる」

「その後は……」

「公爵領で幽閉するか修道院へ入れるか。どのみち君が顔を合わせることはない」


「そうなんですか……」

 幽閉にしろ修道院にしろ、二度と外に出られないということだ。

 本人は呪いのことを知らなかったのならもう少し罰を減らしてもいいとは思うが、王位継承権を手に入れたいという野望を抱いている時点でアウトなのだろう。


(私がいなければあそこまで……いや、違うか)

 ユーリアのあの気性では、例えリリヤがこの世界に戻ってこなかったとしても同じような問題を起こしただろう。


「早く、犯人や目的が分かるといいです」

「時間はかかるかもしれないが、必ず解決する。だから心配しなくとも良い」

 ラウリは重ねていたリリヤの手を包み込むように握りしめた。

「……はい」

 頷いたリリヤの頭にラウリはそっとキスを落とした。

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