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異世界育ちの侯爵令嬢と呪いをかけられた完璧王子  作者: 冬野月子
第3章

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04

「リリヤ様、アマンダ様」

 朝、教室でリリヤがアマンダと談笑していると、二人のクラスメイトがやってきた。


「あの、お願いがあるのですが……」

「お願い?」

「感謝祭に大聖堂で開かれるバザーの品物を、お二人にも出していただきたくて……」


「感謝祭?」

 リリヤは首を傾げた。

「冬の始まりに、一年の恵みへの感謝と無事に冬を越せるよう願いを込めるお祭りですの」

 アマンダが説明した。

「貴族平民問わず参加しますわ。リリヤがいらした所ではありませんでしたの?」


「あ……ええと。収穫をお祝いするお祭りならあったけど」

「そのお祭りに、貴族は教会に寄付金を渡したり、バザーの品物を提供しますのよ」


「私たち、刺繍したリボンやハンカチなどを使っているのですが全然足らなくて……」

「是非お二人にもご協力いただけないかと」

「売るものを手作りするのですか?」

 クラスメイトにリリヤは尋ねた。

 そのような労働は、貴族はしないものと聞かされていたのに。


「これも信仰の一つです」

 クラスメイトは答えた。

「自らの手で作る事は、神への奉仕に繋がるんです」

「バザーの品物は、大聖堂へ集まった人々がお土産として買います」

「貴族の文化が感じられて、でも高くないものを提供するというので人気なんです」

「なるほど……」


 刺繍は、貴族女性のたしなみだと聞いてリリヤも母親から教わっている。

 こちらの世界ではカラフルな糸は高価で、刺繍というのは平民には手が届かないものだと。


「小物は人気があるので沢山用意しないとならなくて。皆様に協力をお願いしているので是非お二人も」

「……でも、私、あまり上手くなくて……」

「簡単なものでも大丈夫です」

「うーん……」

 夏休みや休日も忙しくて、刺繍はまだあまりやったことがない。

 簡単でいいと言われても、他の人たちとの差は明らかでバザーとはいえ売り物にするのは恥ずかしい。


(刺繍糸だったら……あ、そうだ)

「糸を使った、他のものでもいいですか?」

「他のもの?」

「はい。試しに作って持ってきます」

 リリヤはそう答えた。


「ありがとうございます!」

「よろしくお願いいたします!」

 笑顔でクラスメイトたちは去っていった。



「何か思い付きましたの?」

 アマンダはリリヤを見た。

「うん。刺繍用の糸を編んで紐にしようかと思って」

「紐?」

「腕や髪に巻いてアクセサリーにするの」

 施設で、一時期刺繍糸で作るミサンガがブームになっていた。

 近所の人が使わなくなったからと大量の刺繍糸をくれたのだ。

 リリヤも色々と作ったし、まだ作り方も覚えているはずだ。


「面白そうですわね。そういえば父が言っていましたわ、リリヤの提案で新しい魔術が生まれそうだとか」

「新しい? ……ああ」

 音を石に録音することだろうか。


「ええと、たまたま思いついて言ったことを、魔術師の方々が工夫してくれたの。だから提案とまでは」

「でもきっかけはリリヤだったのでしょう。色々な所でリリヤは注目を集めていると聞きましたわ」

 アマンダは声をひそめた。

「ですからさっきのバザーの話、気をつけてくださいませ」


「え?」

「あの二人の家は教会派ですわ」

 リリヤに顔を近づけながらアマンダは言った。

「最近教会がリリヤに接触しようとしているから気をつけた方が良いと父に言われましたの」

「教会が……」

「心当たりはありますの?」


「あ……ええと、この間洗礼式に行ったけど……」

 アマンダがどこまで知っているのか分からないので、リリヤはそれだけを答えた。

「洗礼式? 大聖堂で?」

「はい、大司祭様がやってくれて……」


「まあ。大司祭様自ら?」

 アマンダは目を見開いた。

「王族以外の洗礼式を大司祭様が行うなんて、聞いたことがありませんわ」

「そうなの?」

「王太子殿下の婚約者候補だからかしら。でも正式に決まってはいないし……」

 考えながら呟いて、アマンダはリリヤを見た。


「ともかく、さっきの二人の目的はリリヤと教会を繋ごうとするものですわ。気をつけて」

「え、でも皆んなに頼んでるって……」

「建前ですわ。現に私には頼んでいなかったでしょう」

「そ……うだった?」

 リリヤはさっきの会話を思い出そうとした。

 言われてみれば、二人はリリヤばかり見ていた気がする。


「まあ、バザーへの品物を作るのは良いことですし、感謝祭も賑やかで楽しいですわ」

 険しかった顔を緩めてアマンダは言った。


「アマンダは行ったことがあるの?」

「ええ、兄に連れて行ってもらいましたの」

「お兄さんに? 仲がいいんだね」

「ふふ、兄は色々な場所に連れて行ってくれますの」

 アマンダは微笑んだ。

「今年はリリヤと一緒に行ってみたいけれど……きっと王太子殿下が許しませんわね」

「そう?」

 リリヤは首をひねったが、確かに心配性なラウリは許さなさそうだ。


「……じゃあ、別の所にお出かけしようよ。おすすめの所はある?」

「そうですわね……美味しいケーキを出すお店がありますの」


「ケーキ! 行きたい!」

「ふふ、必ず行きましょうね」

 目を輝かせたリリヤに、アマンダは満面の笑みで答えた。

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