異世界転移のスキルガチャで納得いくまでリセマラしたら、神様にキレられた件
異世界転移のスキルガチャで納得いくまでリセマラしたら、神様にキレられた件
気がつくと、俺は真っ白な空間にいた。
「えっと...ここは?」
周りを見回すが、何もない。
ただ永遠に白い空間が広がっているだけだ。
「あら、目が覚めたのね」
可愛らしい声が響いた。
振り返ると、そこには美しい女性が立っていた。
長い銀髪、透き通るような白い肌。
見た目は若い女性に見えるが、どこか大人びていて神々しい雰囲気を感じる。
「私は転生神ミラ。あなたを異世界に転生させる役目を持っているの」
「転生...?」
俺は自分の記憶を辿った。
天宮ハル、22歳。
ソシャゲ廃人で、リセマラに人生を捧げてきた男。
そういえば、スマホゲームをやりながら道を歩いていたら、トラックに轢かれたような...
「そう、あなたは交通事故で亡くなったの」
ミラが優しく微笑む。
「でも、特別に異世界に転生させてあげるわ」
「マジで!?」
俺は興奮した。
異世界転生とか、ゲームや小説でよく見るやつじゃないか。
「それで、転生時に1回だけスキルガチャができるの」
ミラが手を振ると、目の前に光り輝くガチャマシンが現れた。
「このガチャを回して、あなたのスキルを決めるわ」
「スキルガチャか...!」
俺の目が輝いた。
ガチャと聞いて黙っていられない。
これまでいろいろなゲームに何百万も課金してきた俺だ。
「それじゃあ、回してみて」
ミラに促されて、俺はガチャのレバーを引いた。
キラキラと光が輝き、カプセルが出てくる。
「おめでとう!あなたのスキルは『料理Lv2』よ」
「...は?」
料理?
戦闘スキルじゃないのか?
「ちょっと待って。これ、やり直せない?」
「えっ?」
ミラが困惑した表情をする。
「やり直すって...転生は一度きりよ?」
「いや、ガチャだよガチャ。リセマラさせてくれ」
「リセマラ?」
「リセットマラソンの略。気に入ったのが出るまで、何度も最初からやり直すんだよ」
俺は真剣な顔で説明した。
「でも...そんなこと...」
「頼む!俺、これまでリセマラに人生かけてきたんだ。ここで妥協なんかしたくない」
ミラが迷っている。
俺は更に食い下がった。
「お願いします!一生のお願い!」
「わ、分かったわ...それじゃあ、特別に一度だけ...」
「やった!」
こうして、俺の異世界でのリセマラが始まった。
---
「それじゃあ、もう一度」
ミラが手を振ると、ガチャマシンがリセットされた。
俺は再びレバーを引く。
「『掃除Lv3』...」
「却下」
「えっ、もう?」
「当たり前だろ。戦闘スキルじゃないと意味ない」
「そ、そうなのね...それじゃあもう一度」
3回目。
「『釣りLv1』...」
「却下」
4回目。
「『園芸Lv2』...」
「却下」
5回目。
「『剣術Lv1』...お、これは?」
「いや、Lv1じゃ弱い。せめてLv3以上じゃないと」
「そ、そんな...」
ミラの表情が少し曇ってきた。
6回目、7回目、8回目...
「『弓術Lv2』...却下」
「『魔法Lv1』...却下」
「『体術Lv2』...却下」
10回目。
「ね、ねえ...そろそろ決めてくれない?」
ミラの声に少し焦りが混じっている。
「ダメだ。まだ納得いかない」
「でも、もう10回も...」
「俺、前のゲームで500回リセマラしたことあるから」
「500回!?」
ミラが驚愕する。
「ああ。だから100回くらいは余裕だ」
「100回って...」
こうして、リセマラは続いた。
20回目...『料理Lv3』...却下。
30回目...『鍛冶Lv2』...却下。
40回目...『魔法Lv2』...却下。
50回目...『剣術Lv3』...「おっ」
「これで決めてくれる?」
「いや、まだ上があるかもしれない」
「そんな...」
ミラの笑顔が完全に消えていた。
60回目...70回目...80回目...
「ねえ、もういい加減にしてくれない?」
ミラの声が低くなってきた。
可愛い顔が少し怖い。
「もうちょっとだけ」
「もうちょっとってもう何回目よ!」
90回目...
「『体術Lv4』...うーん、悪くないけど」
「もういいでしょ!?」
ミラが声を荒げた。
100回目...
「『剣術Lv5』...おお、これは良い」
「それで決めて!お願い!」
ミラが懇願してくる。
「でも、まだレアスキルがあるかもだし...」
「いい加減にしろおおおお!!」
可愛い女神様が、ついにブチギレた。
白い空間が揺れる。
ミラの周りから光が溢れ出す。
「あなたね!こんなに転生でリセマラする人、初めてよ!」
「いや、でも...」
「もう我慢の限界!」
ミラが手を振り上げる。
その瞬間、ガチャマシンが激しく光り始めた。
「えっ、何これ」
「知らない!あなたがしつこいから、システムがバグったのよ!」
ガチャマシンから眩い光が溢れ出す。
そして、ゴォォォンという音と共に、巨大なカプセルが飛び出してきた。
「これは...」
ミラも驚いている。
カプセルが開くと、中から虹色に輝くカードが現れた。
「『時空魔法Lv10』...」
ミラが呆然とつぶやく。
「な、なんで…レジェンドスキルじゃない...」
「レジェンドスキル?」
「最高レアリティのスキルよ。通常のガチャじゃ絶対に出ない...」
俺は興奮した。
やった!リセマラ大成功だ!
「でも、どうして...」
「100回以上リセマラしたから、隠し要素が発動したんじゃないか?」
「そんな設定、私は知らないわよ...」
ミラが頭を抱える。
「まあいいや。これで決めるよ」
「...本当に?」
「ああ。さすがにこれ以上は望まない」
ミラが深く溜息をついた。
「やっと終わった...」
「ありがとう、ミラ。おかげで最高のスキルが手に入った」
「もう二度と会いたくないわ...、もう早いとこ異世界に転送しちゃうわね」
「おう」
「あと、特別にボーナスをあげる」
「ボーナス?」
「あなたの執念、認めてあげるわ」
ミラが指を鳴らすと、俺の体が光に包まれた。
「『魔力量+1000』と『身体能力+100』をプレゼント」
「マジで!?」
「その代わり、もう二度とここでリセマラなんてしないでよね」
「約束する」
俺は笑顔で答えた。
「それじゃあ、異世界で頑張って」
ミラが手を振る。その笑顔は、最初に会った時のように優しかった。
「ありがとう、ミラ。また会おうぜ」
「...そうね。元気でね」
光が俺を包み込む。
意識が遠のいていく。
こうして、俺の異世界生活が始まった。
目を開けると、そこは森の中だった。
「お、マジで異世界か」
周りを見回すと、見たこともない植物や、空には2つの月が浮かんでいる。
「よし、早速スキルを試してみよう」
俺は手を前に突き出した。
「時空魔法!」
瞬間、周りの時間が止まった。
鳥が空中で静止し、風も止まる。
「すげえ...」
俺が動くと、時間が再び動き出す。
「時間を止められるのか。これはチート級だな」
他にも色々試してみた。
時間を遅くしたり、速めたり。
空間を歪めて瞬間移動したり。
物体を絞って時間停止させたり。
「これ、完全に最強スキルじゃん」
リセマラ頑張って良かった。
その時、森の奥から悲鳴が聞こえた。
「助けて!」
女性の声だ。
俺は声のする方向へ走った。
森の開けた場所に出ると、そこには大きな狼のような魔物が、一人の少女を襲っていた。
少女は長い金髪のエルフで、剣を構えているが、魔物の攻撃に押されている。
「くそっ、このままじゃ...」
「待った!」
俺が叫ぶと、魔物がこちらを向いた。
「時空魔法・時間停止」
魔物が動きを止める。
俺はその隙に少女の元へ駆け寄った。
「大丈夫か?」
「え、あ、はい...」
少女が驚いている。
そりゃそうだ、突然魔物が止まったんだから。
「ちょっと下がってて」
俺は魔物に向き直る。
「時空魔法・空間切断」
手を振ると、空間が歪んで魔物を両断した。
魔物は悲鳴を上げて消滅する。
「す、すごい...」
少女が呆然としている。
「怪我は?」
「だ、大丈夫です...ありがとうございました」
少女が頭を下げる。
「フィアと言います。エルフの剣士です」
「俺は天宮ハル。今日この世界に来たばかりだ」
「今日?」
フィアが驚く。
「ええ。異世界から転生してきたんだ」
「転生者...なんですね」
「そうだ。で、この辺に街とかある?」
「はい、近くにアルテア王国の首都があります」
「良ければ案内してもらえるか?」
「もちろんです。命の恩人ですから」
こうして、俺はフィアに案内されて街へ向かった。
---
アルテア王国の首都は、想像以上に大きな街だった。
石造りの建物が並び、人々が行き交っている。
人間だけでなく、エルフや獣人、ドワーフなど、様々な種族がいる。
「すごいな」
「ハルさんの世界とは違いますか?」
「ああ。俺の世界には魔法とか、こういう種族とかいなかったから」
「そうなんですね」
フィアが微笑む。
その笑顔が可愛くて、俺は少しドキッとした。
「それで、これからどうするんですか?」
「とりあえず、冒険者として登録しようかと思ってる」
「冒険者ですか。それなら、冒険者ギルドに行きましょう」
フィアが案内してくれた冒険者ギルドは、酒場のような雰囲気だった。
受付には、獣人の少女がいた。
ぴょこぴょこ動く猫耳と尻尾が可愛い。
「いらっしゃいませ。冒険者登録ですか?」
「ああ」
「それでは、こちらの用紙に記入してください」
受付嬢が書類を渡してくれる。
名前や年齢、スキルなどを記入する欄がある。
スキルの欄に『時空魔法Lv10』と書くと、受付嬢が目を丸くした。
「じ、時空魔法...しかもレベル10!?」
「そうだけど、何か問題ある?」
「い、いえ...ただ、時空魔法は伝説級の魔法なので...」
周りの冒険者たちもざわめいている。
「本当に使えるんですか?」
「ああ、試してみる?」
俺が手を挙げると、受付嬢の周りの時間が止まった。
「...!」
受付嬢が驚愕している。
他の冒険者たちも騒然としている。
「信じてもらえたかな?」
「は、はい...それでは、特別にSランク冒険者として登録させていただきます」
「Sランク?」
「最高ランクです。普通は最下級のFランクから始めるんですが...あなたの実力なら」
「分かった。ありがとう」
こうして、俺は異世界で冒険者として登録された。
ギルドを出ると、フィアが嬉しそうに言った。
「すごいです、ハルさん。いきなりSランクなんて」
「まあ、運が良かっただけだよ」
「そんなことないです。あの魔法、本当にすごかったから」
その時、後ろから声がした。
「あの、少しよろしいですか?」
振り返ると、そこには黒髪の美しい女性が立っていた。
魔導師の服を着ている。
「私はアリシア。宮廷魔導師をしています」
「宮廷魔導師?」
「はい。王国に仕える魔法使いです」
アリシアが真剣な顔で続ける。
「実は、王国に危機が迫っているんです」
「危機?」
「魔王軍が侵攻してきています。このままでは王国が...」
「それで、俺に手伝ってほしいってこと?」
「はい。先ほどギルドで貴方の話を聞かせてもらっていました。
あなたほどの実力者なら、きっと...」
俺は少し考えた。
せっかく異世界に来たんだ。
冒険しないと意味がない。
「分かった。手伝うよ」
「本当ですか!?」
アリシアが目を輝かせる。
「ありがとうございます。早速、王城へ案内します」
こうして、俺は転生初日から、いきなり魔王軍との戦いに巻き込まれることになった。
でも、不思議と不安はなかった。
最強スキルがあるんだ。負けるわけがない。
王城は街の中心にそびえ立つ、荘厳な建物だった。
「こちらです」
アリシアに案内されて、謁見の間に通された。
玉座には、威厳のある中年の男性が座っている。王様だろう。
「陛下、先ほどお話しした冒険者ハルを連れてまいりました」
「うむ」
王が俺を見つめる。
「そなたが、時空魔法を使えるという者か」
「はい」
「頼もしい。実は、魔王軍が今日にも王都に攻めてくるという情報が入った」
「今日?」
「ああ。我が軍も迎撃の準備をしているが...正直、勝算は低い」
王の表情が曇る。
「そこでそなたの力を借りたい。報酬は十分に用意する」
「分かりました。やりましょう」
俺が答えると、王が安堵の表情を見せた。
「ありがとう。それでは、すぐに城壁へ向かってくれ」
城壁に向かうと、すでに兵士たちが配置されていた。
そして遠くに、黒い軍勢が見えた。
魔王軍だ。
「すごい数...」
フィアが呟く。
彼女も戦闘に参加すると言って、ついてきてくれた。
「私も手伝います」
アリシアも隣に立つ。
「ありがとう、二人とも」
その時、魔王軍が動き始めた。
地響きと共に、巨大な魔物たちが突進してくる。
「来るぞ!」
兵士たちが弓を構える。
でも、俺はもっと効率的な方法を知っていた。
「時空魔法・時間減速」
俺が手を前に突き出すと、魔王軍の動きが急激に遅くなった。
「な、何だ!?」
兵士たちが驚く。
「今のうちに攻撃しろ!」
俺の指示で、兵士たちが矢を放つ。
遅くなった魔物たちは、簡単に矢を受けて倒れていく。
「すごい...」
「時空魔法って、こんなことができるのか...」
兵士たちが感嘆の声を上げる。
でも、魔王軍の数は多い。
次々と魔物が押し寄せてくる。
「アリシア、フィア、頼む」
「はい!」
「任せて!」
アリシアが魔法で魔物を攻撃し、フィアが剣で切り伏せる。
俺は時空魔法で敵の動きを遅くしたり、空間を歪めて攻撃を防いだり。
三人の連携は完璧だった。
「やった!敵が退いていく!」
兵士たちが歓声を上げる。
魔王軍は、予想以上の抵抗に遭って、撤退を始めた。
「勝った...」
フィアが安堵の表情を見せる。
「ハルさんのおかげです」
「いや、二人も頑張ってくれたからだ」
アリシアも微笑む。
「あなた、本当に強いのね」
その夜、王城で祝宴が開かれた。
「ハル殿、本当にありがとう」
王が俺に杯を差し出す。
「これからも、この国を守ってほしい」
「はい、もちろんです」
祝宴の後、俺は城の庭園を歩いていた。
「ハルさん」
振り返ると、フィアが立っていた。
美しいドレスを着ている。
月明かりに照らされて、とても綺麗だ。
「今日は本当にありがとうございました」
「お礼を言うのは俺の方だ。一緒に戦ってくれて」
「ハルさんが良ければ…これからも一緒に冒険してもいいですか?」
フィアが恥ずかしそうに聞いてくる。
「もちろん」
俺が答えると、フィアが嬉しそうに微笑んだ。
「あら、二人きり?」
アリシアが現れた。
「私も仲間に入れてもらえる?」
「アリシアも?」
「ええ。あなたと一緒なら、色々な冒険ができそうだから」
「歓迎するよ」
こうして、俺は異世界で仲間を得た。
リセマラで手に入れた最強スキルと、信頼できる仲間たち。
これから、どんな冒険が待っているんだろう。
考えただけでワクワクしてくる。
「それじゃあ、明日から本格的に冒険を始めるか」
「はい!」
「楽しみね」
二人が笑顔で答える。
俺の異世界生活は、まだ始まったばかりだった。
でも、これからもっと面白いことが起こる予感がする。
リセマラに100回以上かけた甲斐があったってものだ。
ありがとう、ミラ。
そして、これからもよろしく、フィア、アリシア。
夜空に浮かぶ二つの月を見上げながら、俺は心の中でそう呟いた。
―完―