第6話:ファン感謝イベントと新たな壁
佐藤ハルトは、アパートの部屋でノートパソコンを前に興奮していた。StreamStarの「ライバーバトルロイヤル」で、KAIのチームに惜しくも敗れたものの2位という結果は、ハルトの人生を大きく変えた。登録者数は620人に急増し、Xでは「#ハルトストーム」がトレンド入り。ネットの一部では「史上最低ライバーが熱い!」と話題になり、かつての「最低」なレッテルが、応援を呼ぶ武器に変わりつつあった。
だが、ハルトの心にはまだKAIの言葉が刺さっていた。
「雑魚にしては頑張ったな」
KAIの1万人の登録者と比べれば、ハルトの620人はまだ微々たるもの。次の目標「登録者1000人」をノートに書きながら、彼は決意を新たにした。
「視聴者と一緒なら、絶対KAIを越えられる!」
前回の配信で決めた「ファン感謝イベント」が、今日のメイン企画だ。
タイトルは「史上最低ライバーのファン感謝祭!視聴者と一緒にハルトをパワーアップ!」
企画は三部構成
①視聴者からの「ハルトにやってほしいこと」をリアルタイムで実行する「リクエストチャレンジ」
②視聴者と一緒に「バトルクロニクル」で協力プレイを楽しむ「ファン共闘バトル」
③ハルトが視聴者に感謝を伝える「手作りプレゼント抽選会」
サムネイルは、ミナミの助けで作った「ハルトが視聴者にハートを贈る」イラスト
拙いが、温かみのあるデザインだ。
夜8時、配信開始。ハルトはミナミに選んでもらった白シャツと、初めて自分で買ったキャップをかぶり、カメラに向かって叫んだ。
ハルト「よお、みんな!史上最低ライバーの佐藤ハルトだ!バトルロイヤル、2位だったぜ!みんなの応援、マジでありがとう!今日はファン感謝祭!俺をパワーアップする企画、めっちゃ楽しみにしててくれ!」
視聴者数は開始5分で200人。
コメント欄は「ハルト、2位おめ!」「感謝祭、楽しみ!」「ハルトストームまた見たい!」と早くも熱狂。ハルトは笑顔でリクエストチャレンジを始めた。
ハルト「まず、みんなに『ハルト、こうしてほしい!』ってリクエストもらうぜ!なんでもやるから、コメントで教えて!」
コメントが殺到。「歌ってみたやって!」「早口言葉で滑舌練習!」「ハルトの部屋、もっと見せて!」
ハルトは「歌!?マジか、音痴なのに!w」と笑いつつ、視聴者のリクエストでアニメ主題歌を歌う。
案の定、音程は外れまくりだが、「ハルトの音痴、クセになるw」「ガチで史上最低w」とコメント欄は大盛り上がり。ハルトは照れながらも「次、早口言葉行くぞ!『隣の客はよく柿く客だ』…うわ、噛んだ!w」と挑戦し、視聴者数を230人に押し上げた。
次はファン共闘バトル。ハルトは「バトルクロニクル」の協力モードを起動し、視聴者の中からランダムで3人を招待。コメント欄の指示でチームを動かす。「ハルト、右に避けろ!」「回復使え!」「ハルトストーム、ぶっ放せ!」
ハルトは視聴者プレイヤーと連携し、ボスを撃破。
コメントは「ハルト、チームワーク最高!」「視聴者と一緒、強すぎ!w」と盛り上がり、視聴者数は280人に。
最後のプレゼント抽選会では、ハルトが100円ショップで買ったキーホルダーに手書きの「ありがとう」メッセージを添えた「ハルト特製グッズ」を用意。視聴者3人に抽選でプレゼントした。「こんなダサいグッズでも何故か欲しすぎるw」「ハルトの感謝、泣ける!」とコメント欄が温かい雰囲気に包まれる。配信終了時、視聴者数は最大300人、登録者は850人に達した。
配信後、ハルトは興奮冷めやらぬままミナミにLINE
ハルト「ミナミ!ファン感謝祭、めっちゃ盛り上がった!登録者850人!1000人、ほんと見えてきた!」
ミナミの返信は即座。
ハルト「やば!ハルト、めっちゃバズってるじゃん!Xで『ハルトの感謝祭』トレンド入ってるよ!でもさ、KAIがなんか動いてるっぽい。新しい配信企画やるって」
ハルトはXをチェック。
KAIが「@HaltStreamの感謝祭?ダサすぎw 俺の新企画『KAIフェス』で本物のエンタメ見せるぜ」とポスト
KAIの「KAIフェス」は、大手スポンサー付きの豪華配信イベントで、ゲストライバーや限定グッズが話題に。ハルトの小さな感謝祭とは規模が違いすぎる。コメント欄には「KAIフェス、絶対見る!」「ハルト、頑張ったけどKAIには勝てねえ」とKAI優勢の声。
ハルトは悔しさを噛み締めた。
ハルト「KAI…また俺をバカにしてる…」
だが、視聴者からのXリプライ「ハルトの感謝祭、めっちゃ心あった!」「KAIよりハルトの方が応援したくなる!」に救われた。
ハルトはノートに書いた。
「KAIフェスを超える。視聴者と一緒に」
翌日、コンビニのバイト中、ユナが店に現れた。
ユナ「ハルト、感謝祭見たよ。視聴者との絆、すごいね。KAIフェスに対抗するには、もっと規模を大きくしないと」
ハルト「規模って…俺、スポンサーとかないし、金もないよ…」
ハルトは肩を落とした。
ユナは眼鏡を直し、クールに言った。
ユナ「金じゃなく、アイデアと熱量で勝負しなよ。例えば、視聴者全員で作る企画。あなたの強みは、視聴者との近さでしょ」
ハルトは目を輝かせた。
ハルト「それ、いいな!視聴者みんなでKAIフェスに対抗する配信!…でも、どんな企画がいいかな?」
そこへ、バイト仲間のタクが現れた。バトルロイヤルで一緒だった初心者ライバーだ。
タク「ハルト、俺も手伝うよ!視聴者参加型のゲーム大会とかどう?俺の50人の視聴者も呼ぶぜ!」
ハルトは笑顔で頷いた。
ハルト「タク、最高!ユナ、タク、ミナミ、視聴者…みんなでKAIに勝つぜ!」
その夜、ハルトは新たな配信を始めた。
タイトルは「KAIフェスに対抗!史上最低ライバーの視聴者総力戦!」
企画は、視聴者全員が参加可能な「バトルクロニクル」トーナメントだ。ハルト、ユナ、タク、リョウがリーダーとなり、視聴者をチームに分けて戦う。優勝チームには、ハルト手作りの「最強ファン認定トロフィー」をプレゼント。サムネイルは、視聴者からのイラスト投稿を使った「ハルトと視聴者がKAIを囲む」デザイン。
配信開始。視聴者数は350人に急増。
コメントは「ハルト、KAIに勝て!」「視聴者チーム、強いぞ!」「トロフィー欲しい!」
ユナが戦略を解説し、タクが初心者視聴者をフォロー。
ハルトは「みんな、俺のダメさパワーでKAIをぶっ倒すぞ!」と煽り、トーナメントを進行。
視聴者チームの熱戦が続き、コメント欄は「ハルトのチーム、熱い!」「KAIフェスより楽しい!」と大盛り上がり。配信終了時、視聴者数は400人、登録者は950人に。
配信後、ハルトはノートに新たな目標を書き加えた。
「KAIフェスを越える。登録者1000人達成」。KAIの豪華イベントに対抗する小さな配信だが、視聴者の熱量は本物だった。ユナからのメッセージが届く。「ハルト、視聴者の力、すごいよ。KAIフェス、負けそうで焦ってるみたい」
ハルトは笑い、ミナミにLINE
「ミナミ、KAIが焦ってるって!次、絶対1000人いくぜ!」
ミナミの返信は「ハルト、めっちゃカッコいいよ!次はKAIフェス当日に対抗配信だ!」
史上最低ライバーの戦いは、視聴者と仲間と共に、新たな壁に挑もうとしていた。
登場人物紹介
佐藤ハルト(主人公)
20歳、大学中退のフリーター。StreamStarで「史上最低ライバー」として知られるが、そのダメさが逆に視聴者を引きつける。登録者数は950人(第6話時点)で、バトルロイヤル2位やファン感謝祭の成功で急成長中。
ゲームは下手、トークは噛みがちだが、視聴者との絆と純粋な情熱でKAIに挑む。ミナミの応援とユナの戦略に支えられ、登録者1000人を目指す。ダサい部屋と服を少し改善し、「ハルトストーム」を武器に世界一のライバーへ突き進む!
ミナミ
19歳、女子大生でハルトのコンビニバイト仲間。
金髪とピアスがトレードマークの明るい性格で、ハルトの最大の応援団。配信企画のアイデアや見た目改善のアドバイスでハルトを支える。「ダメさをネタにしろ!」と発想のきっかけを与え、いつも前向きな言葉で励ます。KAIフェスに対抗するハルトの挑戦にも熱く関わり、視聴者との絆を信じる。ハルトの成長を誰より喜ぶ、物語のムードメーカー。
KAI
25歳、StreamStarの人気ライバーで登録者1万人。スタイリッシュなトークと「バトルクロニクル」の最速クリアで有名。ハルトを「雑魚」と挑発する自信家だが、バトルロイヤルでのハルトの善戦に焦りを見せる。豪華な「KAIフェス」を企画し、ハルトに対抗意識を燃やす。秘密兵器の高速コンボ技で圧倒的な実力を持つが、焦るとミスが増える弱点も。ハルトの成長を認めつつ、ライバルとして立ちはだかる。
ユナ
17歳、女子高生で登録者3000人のライバー。クールな眼鏡っ子で、攻略動画の的確さが人気。バトルロイヤルでハルトのチームメイトとなり、KAIの弱点を分析する戦略家。ハルトの「ダメなりに頑張る」姿勢を気に入り、協力的ながら辛口なアドバイスで支える。視聴者との絆をハルトの強みと認め、KAIフェスに対抗する企画にも助言。冷静沈着だが、仲間意識が芽生えつつある。
タク
18歳、初心者ライバーで登録者50人。ハルトのバトルロイヤルチームメイトで、コンビニのバイト仲間でもある。明るく気さくな性格で、視聴者との距離が近い。ゲームスキルは平凡だが、初心者視聴者をフォローする優しさを持つ。ハルトのファン感謝祭やトーナメント企画に積極的に参加し、50人の視聴者を巻き込んで盛り上げる。ハルトを「兄貴」と慕い、KAIに挑む姿勢を応援。
リョウ
20歳、無名だがゲーム上手なライバーで登録者200人。バトルロイヤルでハルトのチームメイト。無口でミステリアスだが、ゲーム内での的確な動きでチームを支えた。ハルトの熱量や視聴者との絆に影響され、徐々に心を開きつつある。ファン感謝祭には参加せずも、トーナメント企画に興味を示す。KAIフェスへの対抗戦で再びハルトと組む可能性も。